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スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホームの感想(ネタバレあり)


注意:いきなりめちゃくちゃ決定的にネタバレしておりますので、これから観る予定の方はご注意下さい。















2022年劇場鑑賞一本目。
お正月休みの間にサム・ライミ版、マーク・ウェブ版、そしてジョン・ワッツ版のスパイダーマン、計7作品を鑑賞してから挑んできた。

予告の時点でマルチバース設定で、世界観の違うはずのスパイダーマンシリーズの敵キャラがアッセンブルしていたので、当然旧スパイダーマンも出てくるんじゃないかと希望は持ってたけど、いざ揃うとめちゃくちゃ感動してしまった。
そしてそれぞれが孤独に闘う事を讃えあい救いになっていく様なラストはそりゃ泣いちゃう。

1人のヒーローへの目覚め

前作「ファー・フロム・ホーム」のラストに関して感想に「身元がバレて心配ではあるんだけど、他のスパイダーマンシリーズと違ってMCUは守ってくれる大人が沢山いるので、そこまで深刻な事にならない気もする」って書いたけど、今回はそこから1人の大人として、ヒーローとしての責任に目覚める話だった。

今回は色んなユニバースのキャラが入り乱れ、サプライズゲストも多いしそういうファンサービスの連続に目が行きがちだけど、シビルウォーで初登場した時に言った「自分が何か出来るのに、何もしなくて悪い事が起こったら自分のせいだと思う」とその時点では彼自身ぼんやりしてた心情がついに「大いなる力には大いなる責任が伴なう」というお馴染みのスパイダーマンのアイデンティティへと形作られていく。

決して本人のせいじゃないけど、親しい人との楽しい人生を取り戻す為にドクターストレンジの力で現実を歪ませてしまう事を発端に大惨事へと繋がってしまう。

「出来る事をする」と「それに対する責任」に常に問われる様な展開が続き、特にこれまでのスパイダーマンシリーズの敵達を倒すのではなく「救う」という高難度のミッションに挑戦するも、メイおばさんが殺され、打ちのめされるシーンはこれまでのMCUスパイダーマンを追いかけてきた身としては観ていて本当に辛い。

このシリーズではこれまであえて避けてきた「大いなる力には大いなる責任が伴う」という台詞がメイおばさんの遺言になっているのが、遂にここから1人のヒーローとして、スパイダーマンとしての運命が動き出したみたいでとても重い。

スパイダーマン集結

でも、その言葉の重みを誰よりも知っているこれまでのスパイダーマン達と心が一つになり、背中を押してくれる展開が切なくもとても熱くて、大切な人を亡くしてからじゃないとその言葉の重さを理解できない彼らの呪われた運命と、でもスパイダーマンにしか分からない痛みをそれぞれが共有出来た小さな救いみたいな部分にめちゃくちゃ泣いた。
そこで元祖スパイディであるトビー・マグワイアが「おばさんの死は無駄じゃない」という言葉、これまでのシリーズを知っているからこその説得力と重みが凄かった。

別のユニバースの自分によって救い合う話はすでにMCUドラマシリーズ「ロキ」でもやっていたけど、今作はこれまでのスパイダーマン映画史としての重みも乗ってくるので全く感動の質が違う感じ。

メイおばさんが亡くなってしてしまうのは鬼展開だけど、敵すら救おうとしたその優しさこそがメイ叔母さんから彼が受け継いだものでもあるので、その生き方を、他のスパイダーマンも我が事として手助けして彼ら自身にとっても救いになっていくのが厳しいけど、とても優しい。

サム・ライミ版のトビー・マグワイア

今シリーズを観返すと他の2人のスパイダーマンに比べボンヤリしている印象なのだけど、今回登場した時にそのボンヤリ感のままでそこに佇んているのに思わず泣いてしまった。彼が彼のまま年を重ねてそこにいる感じ。

サムライミ版三作ではオズボーン家との確執に悩まされ続けてきた訳だけど、グリーンゴブリンの解毒剤作りの時に「ずっと考えてきた」と話していたのが重い。父オズボーンが死ななければ親友であるハリーと闘う事もなかったし、仕方なかったけど死なせてしまった事にずっと後悔があったんだろうなぁ、、、。
だから最後のトム・ホランドがグリーンゴブリンを思わず殺そうとした時にグライダーを止める所はそりゃ泣いてしまう。ここでのトム・ホランドの目に「駄目だ」と訴える様な表情が本当に名演だった。

アメイジングスパイダーマンシリーズのアンドリュー・ガーフィールド

公開当時はサム・ライミ版の印象が記憶に新しかったし俳優を変えただけであんまり斬新さが少ないかなぁ、と感じていたのだけど、今サム・ライミ版と続けて観直すと全然違ってどっちもいい!というかどちらかというと、マーク・ウェブ監督の繊細な人情味演出の数々に涙腺を刺激されまくって今観ると個人的にはサム・ライミ版より心に刺さるシーンが多かった。
一作目の街の人がクレーンでスパイダーマンを助けるシーンや、二作目のラストの子供とのやりとりなどめちゃくちゃ泣いた。
スパイディと助けられるNYの街の人達との関係性の描き方はやっぱりマーク・ウェブだからこその繊細なドラマ演出が効いていた。

今作での見せ場は何と言ってもかつて救えなかったグウェンと重なる様に落ちていくMJを救うシーン。グウェンを救えなかった事が心の穴になっていてトビー・マグワイアに比べると、今も辛そう。それだけにMJを抱きかかえた時に見せる泣きそうな顔を観ると胸が締め付けられる。
でも今回の他のスパイダーマンとの共闘で自分は孤独じゃない事を知れて、彼にとっても救いになっていく様子がとても感動した。
というかマルチバース設定のある今なら自然流れでアメイジングスパイダーマンの続編作れるんじゃないのか、、、観たい。

トム・ホランド

そんなレジェンド2人に挟まれてもしっかり存在感が曇らず最後まで主人公として演じきったトム・ホランドの圧倒的な愛嬌もやっぱり素晴らしかった。
しかしシビルウォーから数えると6作に出演しているスパイダーマンは彼だけだし、MCUとの契約も終わり今回で見事に完結を迎えられたのは本当に良かった。今後の展開はどうなるか分からないけどひとまずお疲れ様でした、と言ってあげたい。

MCU的な流れでいうと今回の前半メンター的なポジションになるドクターストレンジとの関係も観ていて楽しかった。
中盤考え方の違いからの対決も凄く良い、ストレンジの領域展開に幾何学の法則に気がついて反撃して勝利するのは彼らしくて勝敗のロジックとしても素晴らしかった。

ドクターストレンジ

ピーターの為に何かしてあげたいのに躊躇ない感じでキャラクター的にちょっと驚いたのだけど、トニー・スタークを犠牲にした事を彼なりに思い悩んでたっぽいし、その弟子であるピーターに出来るだけの事をしてあげるのは関係性としてそこまで無理を感じなかった。それ故にこういう形でピーターとの関係を断つ事になるのは辛そう。

今回の魔法の失敗に関してピーターが途中で邪魔したからとは言ってたけど、「ロキ」によって神聖時間軸がなくなってしまった事も関係してそうな気がするけど、どうなんだろうか。

マルチバース設定がいよいよ今作から本格的に動き出した印象だけど、タイトルからも分かる通り次の「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス」でマルチバース祭りが最大の盛り上がりを見せそうだしとても楽しみ。
ただドラマ作品も含めて予習作品が多そうだし、いよいよMCUを追いかけるのが大変になってきた、、、

歴代ヴィラン大集合

前作復習しといたおかげでヴィランチームのメンバーそれぞれへと思い入れて観る事が出来た。

最初に登場するドクターオクトパスからしてスパイダーマン2そのままの雰囲気で、でもアームを使ったアクションシーンのスピード感とかCGは今の映画のクオリティなので観比べると面白い。

彼ととトビー・マグワイアの最後のやりとりとか凄い感動してしまった。
初めて会った時の奥さんを交えた食事シーンをなぞる様な会話になってるのが粋だし、ファン的にはこれだけの歳月がかかってやっと彼らの人間らしい会話を観れて胸がいっぱいになる。ドクターオクトパスの「元気か?ピーター」とそれに答える嬉しそうなトビー・マグワイアの表情に涙。

それと何といってもウィレム・デフォーが素晴らしかった。
スパイダーマンという存在を露悪的に揺るがしてくる、ダークナイトにおけるジョーカーの様な存在。最初のスパイダーマン一作目のヴィランである彼がそういう役割になるのが味わい深い。
目の演技だけでオズボーンなのか、グリーンゴブリンになっているのかが分かるのとか本当凄い。
今の技術なら特殊メイクでちょっと若返らせてるらしけど、ウィレム・デフォーという役者の生の凄みを堪能させる為に顔アップのシーンが多くて映画館の大画面で観れるなら1900円は安い。ラストでグリーンゴブリンじゃなくなり自分がやった事に向き合う弱弱しい表情が切ない。
あとドーナツ隠すシーン可愛い、あんなのよく思いつくな。

アメスパからはジェイミー・フォックス演じるエレクトロ。
MCU世界では最強のエネルギー源のアークリアクターを手に入れてほぼ無双状態。これも同じくだけどヴィランから正気に戻った後の会話でアメイジングスパイダーマンの時の最初に登場した雰囲気に戻るのがやっぱ切ない。元々はスパイダーマンに憧れてるだけのオタクみたいな人で、やっと向き合って話が出来ているのがこちらもしんみりと感動する。

トム・ハーディのヴェノムのサプライズ登場も何気に上手い。あれのおかげでMCUにもヴェノムを悪役として出せる可能性がありそう。

ジョン・ワッツ監督

まあしかしこんだけ色んな要素をぶち込んでちゃんと交通整理してまとめ上げたジョン・ワッツの手腕は本当に凄い。サム・ライミ版やマーク・ウェブ版のそれぞれの年代のファンの答えないといけないし、「エンドゲーム」並にプレッシャーもあっただろうに、、、

それでいて初監督作品の「クラウン」から通じる話が通じない怖い大人と向き合う事で成長する青春テイストみたいな部分は作家性と共通している感じでやっぱりジョン・ワッツ印もついているのが凄い。

あと吹き替え版が凄く良かった。元々スパイダーマンはテレビでサム・ライミ版を何回も観た世代なので、その時と同じキャストで揃えてくれてるのに感謝。


それからMCU的には「ホークアイ」に出たキングピンに続き、ネトフリ版ドラマシリーズからデアデビルも今回初登場でいよいよディフェンダーズの合流も見えてきたし、ますます楽しみ。それだけにSONYとの業務提携が終わりスパイダーマンが今後出てこなくなるかもしれないのは悲しいな、、、。

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