失くした体の感想(ネタバレあり)
出町座で鑑賞。
前情報なしで観たけど、切断された手首の目線で広がる世界がとても幻想的で引き込まれる。
手首の動き方の「そう歩くんだ、、、」というキモ可愛い感じに何とも味わいがある。
鳩の首を絞めて殺す所とか何気にバイオレンスでかなりホラー映画っぽい。というか死霊のはらわた2の主人公の手が攻撃してくる感じに近い。
本体である主人公の方のキャラクターも独特で不穏で何考えているかあんまり分からなかった。というかはっきり気持ち悪い奴だなぁ、、、という印象が最期まで変わらなかった。
家族を亡くした喪失感は伝わってはくるんだけど、そういう事を含めて考えたとして他者との交流の仕方が気持ち悪い。
おそらく俺の人生こんなはずじゃなかったという事なんだろうけど、その時その時を必死に頑張ろうともしてない人を応援する気になれない。
頑張っても上手くいかないというより頑張ろうとしてないんだから何も上手くいくはずがない。
ピザ屋のバイトの失態も正直「お前以外の誰も悪くない」という気持ちしか湧かなかったし、心が通った(と本人は勝手に思っている)ヒロインを補足しアプローチしていく様子も何度も言うが本当に気持ち悪い。
ここでの女性との接し方が知らないからだとは思うけど、喋りだすと急にそんなチャラい態度になっていくのとかたまらないものがある。
それとルームメイトの男に関係にしても、彼の方も主人公の事をあんまり好きじゃないんだろうけど、それ以上に主人公が彼の事を軽蔑している感じがビンビン伝わってきて気分が悪い、お世話をしてくれる木材加工の仕事に対しても動機が不純なのが全くブレない。そりゃヒロインも切れるよ。
ただそんなクズ主人公に対して作り手が全く甘やかさないのが面白いと思う。観てるこちらが「こいつ、気持ち悪いな」と思ってみていると相応に主人公の周りの登場人物が彼を突き放し距離を取っていく。
主人公が手首を切断してしまうきっかけも、気持ち悪いストーキング行為をヒロインが軽蔑する→やけ酒→二日酔いで機械を動かして手首切断、という「あれ?自業自得では?」という結果。
僕は全く彼に対して同情出来なくてラストまで観ても「こいつ被害者面してるけどクズだな」という気持ちは変わらなかった。
そんな彼だからこそ、全く共感されないし何のためにやるのか分からないけど自分だけが納得する為だけに廃ビルから飛ぶシーンは不思議な爽快感がある。
映画を観てるこちらでさえよく分からないけどこういう人がいましたよ、みたいな距離感で映画が終わっていき、どう思うかはこちらに委ねている気がして作り手の目線の誠実さを感じた。
「気持ち悪い、気持ち悪い」というのは僕の意見だし彼に共感している人もいるんじゃないかと思う。
そして彼を最終的に見守る手首君は彼の痛みを知っていて決して見放さない。
僕は「この世界の片隅に」のラストで失くした手がすずさんの頭をそっと撫でるシーンとかにも近い気がした。
個人的には最近観たアニメ作品が過剰に感動的で湿っぽいと感じるものが多かったので、ここまで主人公を突き放して描かれる作品は新鮮だった。
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