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浅田家!の感想(ネタバレあり)

イオンシネマ京都桂川で鑑賞。
最近この映画館ばかりなのは「コロナは怖いので人が多い所は行きたくないけど映画は観たい」という悪あがきとして、なんとなく京都市内の映画館を避けてしまっているから(京都市内の映画館のコロナ対策が心配な訳ではなく、京都市外に住んでいるのでそこに行くまでの人混みが心配という意味です)。

しかしイオンのミニオンのクレカ作ったらいつでも1000円で観れるし、6回観たらタダだし、時々ワンデーフリーパスとか狂った安さのキャンペーンとかあるし、下手するとミニシアターの会員料金とかよりお得で映画を観れるのでめちゃくちゃありがたい。
最近はイオンエンターテイメント配給のラインナップもとんがってて面白いし、マジでイオンシネマだけで映画ライフが全然完結してしまうな、、、。

中野量太監督作品は今作が初めて。
「湯を沸かすほどの熱い愛」の時に激烈に賛否を巻き起こしていたけどタイミングが合わず観れなかった。

写真家映画として素晴らしい

今回の題材の「浅田家」の写真集の存在は、木村伊兵衛賞を取った時に知って「面白い事を考える写真家さんがいるんだなぁ」とは思っていたけど、映画になると聞いた時は「あれを?」とかなり懐疑的になっていたし、僕も写真が好きで写真の専門学校に通った後、少しカメラマンアシスタントの仕事をしたりしていたので、写真家を扱った作品を観ると記号的なカメラマン描写が嫌で結構身構えてしまうのだけど、写真家を描いた作品の中でも今作はとても素晴らしいと思った。

「家族」の話が「家族写真」がある意味や撮影する意義と最初から最後まで繋がっていて、「写真家」の話である事から全くブレない。
途中でただのファミリー映画になっていったら嫌だなと思っていたので、そこにとても好感を持った。

前半の家族写真で作品を作り上げ木村伊兵衛賞を取るまでの流れもコミカルで良かったのだけど、後半から他の家族の為に写真を撮る事も生きがいにしていくシーンから彼の私小説的な作品が外の世界へと大きく広がっていく感じがしてとても清々しい。

その後震災という悲劇の後、カメラを撮る事が出来なくなって埋もれた家族写真の洗浄作業をしながら写真を撮る事の意義と向き合っていく過程も良かった。
間に入る被災地の悲劇を悲劇的に撮影しているカメラマンのシーン、あれもあれで被災地の今を伝える意味はある写真だとは思うけど、主人公のこれまでの活動を知っているからこそ対比として「写真を撮る事が出来ない」事を示す良いシーン。

実際の浅田さんは被災地でほとんど撮影することが出来なかったらしいけど、この映画は彼が帰郷し自分の父との関係と重ねる事で震災を前に自分の出来る事に折り合いをつけていく展開、賛否が分かれそうな気もするけど僕はかなり好き。

カメラで撮る行為を「窓」か「鏡」なのかという考え方があるのだけど、撮影者の存在が被写体に影響を及ぼすと思うし、どういう狙いで撮るかという事も含め撮影者の好きなものなどを映し出してしまうと思うので僕は撮影者の「鏡」という考え方の方が好きで、この映画ではそのフレームの中にいなくても撮影者の存在が映り込んでいる「鏡」としての写真撮影をする行為の素晴らしさを最大の山場として持ってきている所にめちゃくちゃ感動してしまった。

父親がいなくなった少女の家族写真が撮影者である父の記録になっているというのが、「自分が撮影した写真の中に自分が確かにいたんだ」と映画の物語的な感動以上に、自分がこれまで写真を撮ってきた行為を肯定されたみたいな気持ちになって専門学校時代の事とかを思い出していつも以上に私的な感動の仕方をしてしまった、、、。


浅田家の写真の再現度の高さ

浅田家の写真集は何度も観た事があったので、単純に二宮君はじめ豪華俳優陣でめちゃくちゃ細かく再現している様子に笑ってしまう。
パンフが1100円で高いなぁと思ってたけど開いたら凄く良い印刷で写真集みたいになっているのがとても好き。
この写真を撮るのに使われていたカメラが「ペンタックス67II」という普通の一眼レフを更に一回り大きくした中判フィルムカメラなのだけど僕もあれで卒業制作作品を撮っていたので普通より大きいシャッター音を押す高揚感を思い出してまた撮りに行きたい気持ちになった。

役者陣の好演

浅田政志さん役に二宮君を持ってくると聞いた時は大丈夫かよ!と思っていたけど飄々と人を巻き込んでいく雰囲気が写真家としてとても説得力があってバッチリハマっていた。
あと涙を流すシーンが結構あるのだけど、どれも感動を押し付けてくるような感じじゃなくて凄く上品で良かった。

それと個人的には後半から出てくる被災地の役者さんのチョイスがいちいち良い。
なんでか分からないけど凄い親切な渡辺真起子とか、北村有起哉の不器用な雰囲気とか、あまり情報が無くても魅せられてしまう。
最近は癖が強めな役が多かった菅田将暉の普通に人の良さそうな若者役も逆に新鮮で素晴らしい。

気になった所

ただ写真家になる!という事が「写真集を出して売れる様になる」という事とイコールなのはモヤモヤした。
僕は趣味だろうがお金にならなかろうが、好きなモノを撮って作品として完成させた時点で写真家だと思うし、商業カメラマン的なモノを指しているなら依頼があってお金を貰って撮影する事が1番大事な気がするので、何故写真集が売れる事にこだわっているのかよく分からなかった。
木村伊兵衛賞取れるほどじゃないと写真家名乗れないってどんだけ狭き門なんだ、、、。

おそらくお話的な分かりやすい目標として設定しているんだろうけど、もうちょっと描き方無かったのかなぁとは思った。

という感じで思う所もある作品だけど、写真がある意味を改めて考える機会が出来たし、二宮君演じる政志を通して専門学校時代に自分が写真と向き合った時間が間違ってなかったと肯定してもらった様で僕個人としてはとっても大事な作品になってしまった。

コロナ落ち着いたら外に写真撮りに行きたい気持ちになった。

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