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ドクタースリープの感想(ネタバレあり)

TOHOシネマズ二条で鑑賞。久しぶり。
TOHOシネマで売られている匂いがキツいポップコーンシリーズが苦手なのだけど、今売り出し中のかっぱえびせん味がレイトの為か売り切れていてスクリーン内が無臭で安心した。

「シャイニング」は、キューブリックの映画を観たけど原作は未読。
キューブリック版は映画を沢山観始めたばかりの時期だったので、面白いし怖かったけど正直ポカンとする所が多かった。
でもその直後に色んな人の解説を読んだりして腑に落ちた部分が多くて、「映画ってこんなに調べると面白いものが観えてくるんだなぁ」と意識的に調べたり考える事の重要さを教えてくれた作品の一つだったりして、僕にとって大事な映画だったりする。

そんなシャイニングの約40年ぶりの続編という事で結構身構えていたのだけど、キューブリック映画とは全然違う魅力の素晴らしい作品になっていたと思う。

まず超能力バトル映画として本当に面白かった。
超強力な才能を持った娘とかつてとんでもない修羅場を潜ったおじさんチームVS 超能力ヴァンパイア軍団の構図が、もはや少年漫画的に興奮する。
政府や警察などが全く絡んでこないのもシンプルで好み。

あとはグラッと静かに傾くカメラワーク、それぞれの頭の中の絵面としての美しさ、ドラッグ的なフラッシュバック映像など、こちらの視覚を刺激する演出で最初から最後まで飽きさせない。全てのカットがカッコいい。

それだけでも素晴らしいのだけど、「化け物には化け物ぶつけんだよ!」という燃える展開としてラストにあのホテルに舞台が移っていくのが最高。
キューブリック版が好きな長年のファンに対しても抜かりのない作り。

40年後のダニー。こないだ観たターミネーターニューフェイトで2以降のサラ・コナーの人生が個人的にあんまりに可哀想過ぎて好きじゃないのだけど、今作はシャイニング後のダニーの人生として、かなり説得力があった。
「確かにあんな体験したらまともな人生を歩めないよな」という部分と、それでも母親と2人幸せに暮らしていた時期もあるし、新しい街に来て親切にしてくれるビリーさんと仲良くなれる物腰の柔らかさがあったり、ちゃんと生身の人間として生きてきた感じがする。

それまで色んな事から逃げるだけの人生だった彼が少女との交流を通して文字通り「輝き」を取り戻していく様子が丁寧でなんでもないシーンなのに結構泣きそうになった。

場面がホテルに移り、あのバーカウンターでの父親との対峙シーンも素晴らしかった。
シャイニングファンへの目配せという高揚感もあるのだけど、ダニーが父親と完全な決別する所で泣いた。
それまで示されていた彼のアルコール依存症の誘惑が父親との同化に繋がっていて、ここで完全に「僕はあなたの様にならない」と父親離れになっているのに感動した。

それとずっと逃げてきた男が、1人の少女の為に立ち上がるというお話がそもそも西部劇的で燃える。

演じるユアン・マクレガーはお馴染みの頼りなさもあるんだけど、トレインスポッティング的な荒んだ雰囲気と、超能力に関してのオビワン的な師としての貫禄もあって彼の俳優人生集大成的な役だった気がする。
特に超能力設定がそもそも「フォース」っぽいし、ラストも霊としてウロウロしてるのであんまり死んだ感じがしないのとか、めちゃくちゃオビワンっぽい。

魔女ヴァンパイアのローズ。
最初は余裕綽々だったのに、中盤からの「この小娘がァーッ!!」的な取り乱し具合がジョジョのラスボスみたいで笑った。
沢山の手に掴まれて殺される所とか勝手に4部のラストっぽいと思ってしまった。

しかしレベッカ・ファーガソンが美しい。サバサバした雰囲気であんまり色っぽさが前面に出ない魔女像があんまり見た事なくて新鮮だった。

彼女が率いるヴァンパイア軍団をあくまで悪役として必要以上に掘り下げないのが良かった。
マジでやってる事が極悪だし、普通にスカッと死んでくれて気持ちいいバランス。

あと彼らの残忍性を示す為にルームなどでお馴染みのジェイコブ・トレンブレイ君が結構重要な役で出ていた。
直接的なグロ描写なしでローズ達がいかに恐ろしい連中なのか彼の悲鳴と表情だけで伝わってくる、さすが天才子役。
しかし売れっこ俳優なんだから、もうちょっと仕事選んでもいいと思うぞ、ジェイコブくん。

ある意味ダニーとW主演といってもいいアブラちゃん。

ダニーからすると、かつての自分の様に色んなものから狙われる運命にある彼女が心配でしょうがない様子なのだけど、当の本人は子供時代のダニーと違ってかなり好戦的。
そんな2人が行動を共にする事でお互いに成長していく様子が見ていて楽しい。

演じたカイリー・カランさんも初めて見たけど、ヒロインとしての陽性の華と、大人を振り回す様なふてぶてしさを併せ持っていて、とても好ましく好演していた。

ドクタースリープもスティーブン・キングの原作がしっかりあるのだけど(未読ですみません、、、)キング自体は映画版シャイニングを否定派なのは有名な話だし、その状況で原作と続編映画としての期待の両方に答えられているというのはかなり凄い事だと思う。

マイク・フラナガン監督、「オキュラス/怨霊鏡」がめちゃくちゃ面白かったのでそれなりに期待はしてたけど、ドクタースリープがここまで面白くなるとは予想外の喜び。
今後も期待の重要監督の1人になった。

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