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あなたにとって、対話とは? ─ オンライン対話会で得た気づき

デンマークの人生の学校『フォルケホイスコーレ』で得た気づきや学びをまとめる試みとして、「フォルケレポート」をまとめています。第一弾は「対話」をテーマに3本の記事を書きました。

01:対話は「生きた学び」になる。フォルケホイスコーレの学習理論
02:討論と何が違う? フォルケ流・対話のマインドセット
03:自然と対話が生まれる、フォルケホイスコーレの場のデザイン

4月末、これらの記事をもとに「オンライン対話会」なるものを開催。当日は対話をテーマに活動されている方やデンマークにゆかりがある方、フォルケホイスコーレをはじめとするオルタナティブ教育に興味がある方など11名にお集まりいただき、対話を通して「対話」について考えていきました。

自分以外の誰かとの交流を通じて、自分の思想や思考を育むこと

以前のnoteでは、私なりの対話の定義をこのように記していました。しかし、この定義はあくまで私ひとりの体験から導き出したもの。他のひとの「対話」の定義を聞いてみたい! と思い、今回の対話会を開催するに至りました。

参加者それぞれが体験し、導き出した「対話」の意味や可能性をここにまとめていきたいと思います。

対話を通して自分を知り、自分を超える

あなたにとって、「対話」とは ?

参加いただいたみなさんに問いかけたところ、このようなことばたちが出てきました。

・他人を知ることで自分を知る
・自分がもつバイアス、考え方を突きつけられる
・自分を見つめ直す
・役割や立場を超えて、自分を生きるために立ち返る
・独学や自問自答でたどり着かなかった場所にいく
・一人でいけないところにたどり着く方法

それぞれニュアンスが異なるのでひと言でまとめるのは難しいのですが、上4つは「自分を知る」下2つは「自分を超える」とも言い換えられるかもしれません。

自分が普段から考えていることは、自分のなかで当たり前になり、あらためて意識する機会はなかなかないものです。他者に問いかけられたり、当たり前とは違う考え方を知ることではじめて、自分らしさを認識できるのかもしれません。

と同時に、自分ひとりでは見逃してしまう物事の側面、新しい考え方に出会うこともできる。これもまた対話の楽しみだと思います。

共感は欲しいけど、共通解はいらない

もう一つ、対話について何人か重なりがあった意見は「共感はいる、でも共通解はいらない」というものでした。対話では相手の話に耳を傾け、共感する姿勢は求められますが、その結果お互いに合意できなくてもいいのです。

その反対、「共感はないが、解答のあるコミュニケーション」としては、「一方的なアドバイス」が挙げられました。アドバイスでは相手からもらった解答(のようなもの)を採用することが前提にあります。

対話では、最終的な結論は自分で決めます。結果は自分で引き受けるという責任と自由があるのです。

広げる会話、深める対話

対話について話すうちに、ひとつの問いが生まれました。それは「会話と対話は何が違うのだろうか?」というものです。

会話と対話と何が違うのかなぁ? はじめは会話で始まって、だんだん内容が深まって対話に移っていくのかも。

会話と対話の違いは「深さ」なのではないかという意見が多くでました。話の矢印があっちこっちに向かいながら、話の範囲を広げていくのが会話。一方で、ひとつのトピックを深めていくのが対話というイメージです。

また、会話からはじまり、対話に移行していくという考え方はなるほどと思いました。深さのある対話にいきなり飛び込もうとすると、恐怖心が出てきてしまったり、経験値から温度差が生まれてしまうリスクがあります。

よくイベントの冒頭で軽い会話「チェック・イン」が設けられているのは、深層の話題に入っていくための準備体操の役割を果たす狙いがあるのでしょう。

最初は何気ない会話から入っていき、気がついたら対話していた! という状態がちょうどいいのかもしれません。

女子会や井戸端会議は、対話になる?

印象に残っているのは、「日常生活において、対話に近いものはなんだろう?」と考えた一幕です。同じグループで対話した方が、こんな問いかけをしてくれました。

正直なところ、私は日常的に対話する機会はなくて。普段の生活で対話にもっとも近いものは何だろう? と考えたときに、女子会や井戸端会議が浮かんだんだよね。 

普段の生活のなかでいきなり「対話しよう!」ということは滅多にありません。それに比べて、女子会や井戸端会議はよくみる光景です。仲のいい友人たちと集まり、それぞれの関心ごとや悩みを共有するこのような場は、「共感はするけど答えは求めない」という意味で対話的なのかもしれません。

でも、みんなの話を聞いてたら、対話と女子会(もしくは井戸端会議)はちょっと違うのかもしれないと思って。女子会は似たような背景を持つ人たちで集まるから、トピックはお互いの興味範囲にとどまってしまうし、「傾聴」の意識はそこまで強くないと思うんだよね。

たしかに女子会や井戸端会議がそのまま対話と訳せるかと言われると、違うかもしれません。でも逆にいえば、普段話さないトピックをたててみる、一人ひとりの声に耳を傾けるなどのひと手間があれば対話は成立するとも言えます。対話には馴染みがないと思っている人も、実は日常的に「対話みたいなこと」をしているのかもしれません。

オンラインは対話しやすい?

最後に話したテーマは、「オンライン時代の対話」です。対面で話す機会が減り、Zoomなどを使ってオンライン上で話す機会が増えた今、オンラインの対話はこれまでの対話とどう変わるのでしょうか? 参加いただいたみなさんからは、ポジティブな意見が多く集まりました。

オンライン対話のポジティブな側面
・初対面でもフラットに話せる
・テーマが分断することなく共通のテーマをじっくり話せる
・より相手との丁寧なコミュニケーションを意識するようになった
・物理的距離を超えて、話せるようになった

私たちが対面で得意としていた「空気を読む」行為は、オンラインで通用しません。空気を読まなくていい(読めない)ので、対面に比べてオンラインではよりフラットに話しやすくなる傾向も。対話ではフラットな関係性を築くことが重要なので、ともするとオンラインのほうが対話できる環境が整えやすい可能性もあります。

また、オンラインでは2人以上が同時に話すとノイズが入ってしまうため、常に話し手はひとりになり、傾聴しやすいと言えます。オンラインの制約が、むしろ対話しやすい空気感をつくっているのかもしれません。

オンライン対話のネガティブな側面
・気が散りやすい
・内向的な人には不利かも?

一方で、オンラインにおける対話で気にかけなければいけないのは、集中力と参加者への配慮です。パソコンやスマホを使って話しているとチャットの通知がきて気が取られることもあるし、目が疲れて集中力が切れてしまうこともあります。また、内向的なタイプの人はみずから話すことに抵抗があるかもしれません。オンラインの対話では、ゆるいファシリテーターが介入していくことも必要になってくるでしょう。

ただ、全体としては「オンラインでできることが想像以上にあった」と考える人が多かった印象です。私自身も、オンライン・オフラインの両軸で対話の場づくりを探索していきたいという気持ちが強くなりました。

ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!


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