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③ 京都の名水で淹れるコーヒー

飲物のなかでも、酒造りと良質な水とは縁が深い。古くから続く酒蔵は、良質な地下水のある場所に立地していることが少なくない。東西と北を山に囲まれた京都は水どころでもある。南に位置する伏見区には多くの酒蔵がある。

 一升の酒に、八升の水がいるといわれる酒づくり。中でも良質の豊富な水に恵まれることが、酒造地の条件といえます。
 伏見は、かつて“伏水”とも書かれていたほどに、質の高い伏流水が豊富な地。桃山丘陵をくぐった清冽な水が、水脈となって地下に深く息づき、山麓近くで湧き水となってあらわれます。日本を代表する酒どころとなったのも、この天然の良水に恵まれていたことが大きな要因です。

伏見の水|伏見の酒について|伏見酒造組合 (fushimi.or.jp)

京都の中心に位置する京都御所も、よい地下水に恵まれている。京の三名水のうち、梨木神社「染井の水」と京都御苑「縣井」は京都御所内にある。「染井の水」は現在でも水質が維持されていて、飲み水、お茶、珈琲、炊飯や料理などのために汲みにくる愛好者も少なくない。平安時代から宮中で飲用されてきた由緒があり、甘くまろやかな味は茶の湯の水としても適しているといわれている。

2022年8月には、「染井の水」から自家焙煎のスペシャルティーコーヒーを淹れるお店、「Coffee Base NASHINOKI」が梨木神社境内にオープンした。

梨木神社境内に湧く染井の水は、京都三名水で地元の方や、祇園などの料理店の方が汲みに来られるほど地元で愛されていますが、現存する唯一の三名水のひとつ。

ドリンクに使用する水や氷はすべて名水。プレオープン中に人気だったのが名水を使用した水出しコーヒー。まろやかな味わいで好評を得る。

Coffee Base NASHINOKIが8月27日、現存する唯一の京都三名水を守るべく、御所東 梨木神社境... (kanondo.coffee)

京都への観光では「抹茶」と「和菓子」を楽しみにする方が少なくないが、地元では喫茶店というか珈琲店が生活に根差している。伝統を大切にしつつも、モダンに海外の文化を取り入れてきた京都ならではであろう。

コミュニティライターのShozo Fujiiさんは、JapanTravelのイノダコーヒについてのコラムで、次のように書いている。

 京都市内には数百ともいわれる井戸がある。それぞれの井戸で水の味が違うという。それは地下何十メートルの深さにわたって重なるさまざまな岩石や粘土の地層の種類が場所ごとに異なるためだ。
 砂利層、粘土層、石灰層、火山岩層、堆積岩層。それらの層はあるところでは薄いパイ生地のように、あるところでは分厚く折り重なる。そこへ雨水が染みこんでゆく。
 裏千家家元では敷地に掘られた三十もの井戸ですべて水の味が異なるという。迎える客人によってその井戸水を使い分けるというのである。
 こういう茶の文化が育まれた土地柄だからこそ、イノダコーヒに代表されるコーヒー文化が生まれたのだろう。

京都「イノダコーヒ」 - 京都 - Japan Travel

水と珈琲のマリアージュ。どちらか片方が主役ということではなく、お互いに引き立てあって、私たちに静かな時間を提供している。


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