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ストーリーテリングのリーダーシップ:ステファン・デニング著

オリジナルは、THE SECRET LANGUAGE OF LEADERSHIP: How Leaders Inspire Action Through Narrative, by Stephen Denning, 2017、です。白桃書房発行の邦訳を読みました。

組織や社会を変革していくリーダーは、どのように関係者(フォロワー)にコミュニケーションして未来を創りだしていくべきか、について元世界銀行理事が書いた指南書です。

「ストーリーテリング・・・」という邦題にひかれて読みましたが、「ストーリーとは何か(どのようにストーリーを書くか)」というよりも、「なぜストーリーが重要か」「聞き手の創造性・自発性を引き出すことの重要性」について啓発されました。

本書は、人々の自発性を触発して、これまでとは違った行動をとるべきだと考えるようになってもらい、持続する情熱を自ら生み出すリーダーになってもらうには何が必要か、を示したものである。

「ストーリーテリングのリーダーシップ」ステファン・デニング著 p23

「ストーリーとは何か」については、末尾の付2のテンプレートで、次のように簡単に書かれています。

本書では、<ナラティブ>と<ストーリー>は、ほぼ同義語として用い、ある出来事と出来事の関係を因果論的に説明するものと捉えている。

「ストーリーテリングのリーダーシップ」ステファン・デニング著 p387

単に事実を並べた情報ではなく、そのつながり、因果関係を伝えていくことがストーリーの特徴です。

一連の出来事が因果的につながり結末に至るというストーリーの中心的な性格

「ストーリーテリングのリーダーシップ」ステファン・デニング著 p311

著者が示すストーリーの重要性は、それが人間の思考や意思決定の根幹であること。そして「ものの見方」を伝える効果的な方法であること。

人間は、ストーリーにおいて考え、ストーリーにおいて夢を見るものだからだ。希望や恐れはストーリーの中にあり、人間のイマジネーションはストーリーからなる。人間はストーリーによって計画を立て、ストーリーによってうわさを話し、愛し、そして憎むものである。… 人間の意思決定は、ナラティブに依存している。

「ストーリーテリングのリーダーシップ」ステファン・デニング著 p96

「ものの見方」を伝達する最良の方法が物語なのである。… 聞き手は異世界に旅をし、様々な人物と出会い、様々な感情を経験したことで変化したのである。… ストーリーに引き込まれると、聞き手は実際の世界で活きているのと同じような感覚を経験する。ストーリーの中の人物たちにも特別の思い入れを持ち、深い感情を抱くようになる。

「ストーリーテリングのリーダーシップ」ステファン・デニング著 p196

読んでとても学びになったことは、ストーリーをつくり伝えるにあたっては、なによりも読者、聞き手を中心に考えて、準備しなければならない、という基本です。これはアマゾン社の「Working Backwards」(具体的なお客様とその課題を起点として企画する)という考え方、プロセスと同じだと感じました。

重要なことは、聞き手が今を生きているストーリーを理解することである。… 聞き手のストーリーを理解できていないならば、人々と共鳴する新しいメッセージをつくることは難しい。

「ストーリーテリングのリーダーシップ」ステファン・デニング著 p93

そして、リーダーがストーリーを通じてコミュニケーションを行う目的は聞き手の自発的な行動なので、ストーリーそのものの完全性よりも、聞き手が自らの物語として考えられる余白が重要だと説いています。たしかに、自分自身の読書や映画鑑賞の楽しみにも、そのストーリーの世界というよりも、自分自身の世界のなかで想いをめぐらせることがあります。

聖書の語り手は、聞き手にストーリーの世界に移動したかのように感じさせる努力をしていない。聖書の目的は、聞き手が、現在、直面している類似の事態について、自分なりの新たなストーリーを心の中に呼び起こすことにある。

「ストーリーテリングのリーダーシップ」ステファン・デニング著 p200

聞き手は、心の一部では話し手のストーリーを聞いているが、同時に他の部分では新しいストーリーを想像している。そこで聞き手はストーリーの主人公になり、彼らが想像したストーリーは彼ら自身が新しく創出したものとなる。

「ストーリーテリングのリーダーシップ」ステファン・デニング著 p300

ストーリーライティング、ストーリーテリングの HOW TO 本ではありませんが、なぜどのような意識をもってビジネス分野でのストーリーに取り組むことが大切なのか、学びになりました。

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