高速で飛ばしても実はあまり意味がない

600kmの距離を移動する際、平均時速120kmで走れば所要時間5時間、平均時速100kmで走れば所要時間6時間。1時間というと大きな差のように見えるが、実際には日本の車、特に乗用車では1日に600km走る車はさほどいなくて、移動距離300kmなら所要時間の差は30分。走行距離が長ければ長いほど速度を上げることによる時間短縮効果を見込めることから、例えば長距離を走る車の多い東北道は流れが速い。

しかし、制限速度遵守で走行車線を走り続ける場合には周りの車が勝手に追い越してくれるので追い越しに気を使う必要がなく、当然のことながらオービスやパトカーに目を光らせる必要もないので、疲れ方が全然違う。走行速度が上がればロードノイズや風切り音も大きくなるので、さらに疲れ方が違ってくる。そうなると休憩の間隔も長くなるし、燃費が良くなる分給油による時間のロスも減少する。300km移動する程度なら、実質的な所要時間の差は誤差のレベルでしかない。

最高速度が高くても速度ムラが大きければ平均時速はさほど高くならないので、所要時間への寄与もない。時速120kmと時速100kmとを行ったり来たりしていれば平均時速110km未満。時速100kmで走る場合と比べて、300km移動する際の所要時間の差は15分にも満たない。一定速度を保って走行する方が時間短縮に寄与するし、運転も楽。当然のことながら燃費も良い。それに高速道路では一定速度一定車間距離で走るのが最も安全である。人力で一定速度を保つのにはプロドライバー並の技術が必要だが、初期費用をケチらずにクルーズコントロールをつければ素人でも一定速度を保って走ることができる。クルーズコントロールはサグ渋滞防止に絶大な効果を発揮するので、極論すれば高速道路を走行する車にはクルーズコントロールを義務付けてもよいくらいである。

この手の定量効果は道路の制限速度が高くなればなるほど顕著で、高速道路の最高速度が120km/hまで引き上げられ、120km/hを維持して運転することができれば、もはや140km/hで走る意味はなくなるので、わざわざ速度違反する動機が無くなる。「高速道路の最高速度が引き上げられれば速度違反車の走行速度がさらに上がる」というのはろくに高速で運転したことのない素人の戯言に過ぎない。

実際に高速道路を走ると、制限速度まで出ていない車が大半である。新東名の120km/h区間でも体感8割くらいの車は100km/hくらいしか出していない。静岡県内の新東名や岩手県内や東京近郊の東北道の最高速度を120km/hに引き上げた際も、警察の統計では実勢速度はほとんど上がっていないという結果だった。

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