しななみ海道からフェリーで安芸灘とびしま海道へ

尾道から今治までのしまなみ海道は有名で自転車で旅する人もよく見かける。すぐ近くには安芸灘とびしま海道というのもあり、こちらは呉市の仁方から下蒲刈島、上蒲刈島、豊島、大崎下島を経て岡村島まで橋で繋がっている。仁方と下蒲刈島との間の安芸灘大橋のみ有料で普通車730円。ETCは使えないので、回数券を持っていなければ現金払いである。

岡村島のすぐ先は大三島だが、あいにく岡村島と大三島の間には橋がかかっていない。その代わり岡村島と大三島とを結ぶ大三島ブルーラインのフェリーがあるので、船のスケジュールと合えば大三島から岡村島まで渡ることができる。そうすると、尾道から呉まで円弧状の島伝いに移動することができる。

大三島と岡村島は愛媛県今治市なので今治からフェリーと旅客船が出ている。大三島にはしまなみ海道経由で行けるが、大三島の西側へはしまなみ海道経由だと遠回りだし高速代が高いので、今でも船の便がある。フェリーは大三島ブルーラインのみしまという船で、朝今治を出て大三島経由で大崎上島の木江港や岡村島の岡村港との間を行ったり来たりしている。大崎上島は広島県なのにどうして今治の船が大崎上島まで足を伸ばすのかよくわからないが、大崎上島から竹原までは山陽商船のフェリー、安芸津までは安芸津フェリーがあるので、今治から大崎上島経由で竹原に渡ることもできる。

広島空港から大三島の端の宗方港まで車で1時間半。宗方港から岡村島の岡村港までのフェリーは1日5便。朝に2便と午後から夕方にかけて3便である。このフェリーのスケジュールが制約になるので、乗るフェリーの便を決めてそれに合わせて出発すればよい。フェリーで渡ってしまえばその先は時間を気にする必要がない。広島空港を12時半に出発すると宗方港発14時35分のフェリーに乗ることができ、岡村港到着は14時58分。冬でも日が暮れる前に呉に着くことができる。

宗方港のターミナルはこじんまりとしている。中に券売機と待合室とトイレがあるだけで、売店すらない。車両航走の場合、券売機で車両の長さに応じた切符を購入する。短距離路線なので車検証をいちいちチェックしたりしない。車で乗り込んで乗船時に甲板員に切符を渡したらおしまいである。

宗方港に接岸するフェリーは前向きに接岸する。岡村港にも前向きに接岸するので、宗方港から岡村港まで車を乗せる際には、船の手前で一旦車の向きを変えてバックしながら船に乗ることになる。海の穏やかな瀬戸内海のフェリーなので接岸中でも特にロープで船体を固定せず、車が出入りしている間も潮流で船が少し動く。5分くらいで車の積み下ろしをそそくさと行ってすぐに出港する。いかにも瀬戸内海の生活路線である。今治から大三島までの車よりも大三島から岡村島までの車の方が圧倒的に多かった。

宗方港を出た船は少しバックしたらすぐに左に向きを変えて大下島や小大下島の北側を通り、小大下島と岡村島との間の狭い海峡を通って岡村港に入る。しかし地図上では異なるルートが記載されているので、もしかしたら潮流に応じて柔軟にルートを変えているのかもしれない。瀬戸内海は海が穏やかであっても潮流が複雑なのでよそ者にはどうなっているのかさっぱりわからない。みしまの航海速力は11ノットしかないが、船体が小さく狭い海峡を通るので、体感速度は速く感じられる。宗方港と岡村港との間は8kmで23分。3階の客室に上がって潮風に当たりながら一息ついているうちに着いてしまう。

車で移動する途中にフェリーを挟むと、フェリーに乗っている間は車を運転しなくてよいので休憩できるし、外の空気を吸ってリフレッシュできる。瀬戸内海のフェリーは距離が短く車両航送であっても運賃が安いので、気軽に利用できる。

岡村港に着いたらあとは安芸灘とびしま海道を走る。カーナビ任せにすると最短経路を案内されるが、時間に余裕があれば敢えて遠回りしてみるのも面白いかもしれない。大崎下島の御手洗港には古い町並みがあるが、最短経路で移動すると御手洗港を通らない。御手洗港に立ち寄るくらいならさほど遠回りにならない。

安芸灘とびしま海道はしまなみ海道と異なり高速道路ではないし、島の道路も特別に整備されているわけではないので、狭い道が多くて時間がかかるが、より島を身近に感じられる。安芸灘大橋を渡ったらあとは呉まで国道185号を走る。

呉から広島までは高速道路で移動できるが、時間に余裕があればさらに江田島まで足を伸ばすこともできる。江田島を経由すると尾道から広島まで島伝いの旅を満喫できる。音戸大橋で音戸の瀬戸を渡って倉橋島に入り、さらに早瀬大橋で早瀬瀬戸を渡れば江田島である。江田島の一番北の切串港から広島の宇品港までは上村汽船のフェリーが40分間隔で出ているので船のスケジュールを気にせずに気軽に移動できる。このフェリーも待合室の券売機で切符を買って乗船時に甲板員に切符を渡すだけで乗れるので、気軽に乗れる。


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