見出し画像

長い、長い、休日 第7話

【カネチカの話1】

 俺がとっておきのプレゼントをひっさげて、タナカの家に着くと、そこには先行していたキャプテンと先輩と………タナカ?のようなものがいて、そいつがあろうことか先輩に牙を向けているのが見えた。

 考えるより先に、俺の体が反応し、あっという間にタナカもどきは吹き飛んだ。
 俺は先輩に飛びつき、怪我がないか確かめる。
「お。おい。カネチカくん?!」
「あー良かった。怪我してないですね。って、なんですか、あれ」
 ピクリとも動かないタナカもどきを指さすと、ため息をついて先輩が答えた。
「俺が知りたい。タナカさん………なんであんな」
 キャプテンが優雅な微笑みを浮かべた。
「アレが寄生種よ。最近他の星でも出没してるの。地球にもいたとはね」
「寄生種って地球には生存できないはずだろ」
 先輩がため息交じりに呟く。確かにそう聞いていたけど、新種か何かかな?
「見てのとおりよ、めけめけ王子くん。例の船に潜り込んでいたらしいわ。で、地球に降りて原生生物(ヒト)に寄生したみたい」
「こいつがそうなら、他にもいるのか?」
「さあね。それを調べるのはめけめけ王子くんに任せるわ」
「は?俺は今こんなだぞ、無理だ」
「無理も何も我々は忙しいの。S級隊員ならお茶の子さいさいよ」
「あのな!」
 先輩とキャプテンが揉めているが、どうも、先ほどの変な奴はタナカに寄生した寄生種らしい。寄生種の話は聞いていたが、地球でも出現するなんてなかなかたくましい。
 もしかしたら、タナカが見た女の人というのは同じ寄生種なのかも。

 ふと、静かになったところを見ると二人の話は終わったようだ。俺はちゃんと空気を読むので、いまのうちに素敵なプレゼントを先輩に渡そう。
「先輩、これ受け取ってください」
 簡単な包装しか出来ず心苦しかったが、とっておきのものなので喜んでくれるはずだ。先輩は不思議そうにソレを受け取ると、包みを綺麗に開けて(先輩の几帳面なところだ)中身を取り出した。
「———眼鏡?」
「先輩、ガワにひっぱられて視力下がってたんでしょ?コレは先輩の視力を補正するだけでなく様々なバフ効果があるチートものです」
 いくら先輩がS級隊員で、馴染めば原生生物(ヒト)の装備調整が出来ると言ってもやはり限度がある。そんな先輩のために俺の力の粋を集結させたとっておきの道具がこの眼鏡だ。
「あ、ありがとうカネチカくん」
「先輩はこのピアスを作ってくれたし、日頃のお礼もかねてですよ」
「そう。…って、これすごいな。力が湧いてくるぞ」
 先輩の喜ぶ姿を見て俺はとても満足した。以前、先輩は俺が気に入った「じょもにゃん」を模したピアスを作ってくれたのだ。ソレを今でも愛用している。

「ではまかせたわ、めけめけ王子くん」
 そう言ってキャプラテンは船に戻ってしまった。どうやら先輩に新たな任務が下ったようだ。
「お仕事できましたね」
「はあ…なんてこった。仕方ない」
 ボヤキながら動かなくなったタナカの元へ行くと、雑に一蹴りした。
「ぐあ!」
 タナカは混乱したような表情で起き上がる。
「僕は………一体…」
「もうそういうのいいから、教えてくれない?他に仲間はいるのかな?」
「え?仲間?何の話ですか?」
 先輩は、タナカをじっと見てまた蹴ろうとしたので、俺は止めた。
「多分、彼は襲った記憶がないんですよ」
「都合の良い記憶喪失だな」

 先輩は悪態をついてしばし思案すると、何か思いついたのか非常に悪い笑顔を浮かべた。
「カネチカくん。こいつは特に保護対象でも何でもないんだよね?」
「あ、はい。遭難者じゃないですし、原生生物(ヒト)に寄生してるだけです」
「で、放っておくとこちらにも被害が及ぶ危険なものだと」
「いや、かもしれない、ですけど」
 俺は訂正したが、先輩はふむふむと頷き
「危険な芽は摘まないと………ね」
 と、完璧悪役な台詞をはいた。

 そのあとタナカは、俺が目にしたくない様々なことを先輩にされていた。なので、俺はそれらを視界から除外し、隊の仲間とチャットをして過ごすことにした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?