2-12

「何食べようか」

「オムライスっ」

「また?」

「うん、いつ食べても美味しいものは美味しいでしょう?」

「まあね。てか、今何時? みんな食べたのかな」

「もう8時です。ベムとジェクスニヒョンは食べたって言ってましたよ」

 リビングには、ソファで一緒に映画を見ているジェボミヒョンとヨンジェヒョンがいた。

 内心、どきりとしてしまう。

「ジェボマー、ご飯食べたー?」

「ああ、適当に済ませたよ、てかふたり起きてたんだ。寝てんのかと思ってた」

「いや、寝ちゃって今生還。んじゃ俺らだけか、食べてないの」

「えっ、マクヒョン俺にも聞いてよっ」

 ヨンジェヒョンが笑いながら言う。

「ジェボミが食べたならヨンジェも食べたでしょ」

「え? なにそのひとまとめ、いや、食べたけど」

「な、んじゃ行こーユギョマ」

「あ、はい」

 促されるまま、玄関で靴を履いて、ドアを出る。

 僕はその間、なにも口を挟めなかった。

「あー、お腹すいたなー、一分一秒、空いてくる、あー」

 さっきまで部屋の隅でうずくまっていた人だとは思えない。

 ヒョンたちの手前、演技してたわけでもなくって、本当にふたりのことを受け入れたらしい。

 マクヒョン。

 僕、やっぱめっちゃくちゃ好きだ。

 いつも、僕の想像や心配事なんて、ヒョイっと軽く超えて来る。

 

 エントランスを出て、外に出ると、風がビュウっと吹き付ける。
「さむっ!」
「あ、なんで僕らアウター着てこなかったんだろ」
 マクヒョンも僕も、部屋で着てたパーカーだけだ。
「ご飯のことしか考えてなかった」
そう言ってけらけら笑うヒョン。
 食堂はほんの1ブロック先だけど、マジで寒い。
「ユギョミ~寒い、」
 冗談ぽくかわい子ぶって、ヒョンが僕にくっついてくる。いや、マジで可愛いから。
マクヒョンはパーカーのフードをパッとかぶる。
「ユギョマ」
ヒョンが指で僕を招く。不思議に思って少しだけ背を屈める。
すると、ヒョンが僕のパーカーのフードを頭にかぶせてくれた。僕をじっと見つめたまま、フードの重みで目に被さった前髪を、指でそっと分けてくれる。
ヒョンにとってはなにげない事だけど。ドキドキして胸がいっぱいになる。
「これでよし、ユギョミ風邪ひかないで」
ヒョンはにっこり笑う。
キュン、っていうのは、マジでこういう瞬間のことだ。心臓がぎゅって掴まれたように縮んだ。
 僕はヒョンの体に腕を回して、腕ごとぎゅっと抱き寄せる。
「ヒョンも風邪ひかないで。さ、急いで行きましょっ」
「うんっ」
 僕、体の大きさと体温の高さでは、マクヒョンに勝てるんだよ。
 そんなの自慢になるかわかんないけど。
 今は役に立ってる。

 僕は寒空の下、なんだか妙に高いテンションで踊るように闊歩した。
僕につられるように、早足で歩くマクヒョンの笑い声が、心地いい。

最高の夜だ。
こんな夜が、これからいくつもやって来ますように。

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