2-2

 そう思って、バスルームを覗きに行く。

 楽しそうなふたりの笑い声が聞こえてくる。

「ヒョン~、コーヒー買って、来、ました」

「ああ、お帰りー」

「ありがとーっ」

 パッと勢い良く入ったものの、その状況に面食らって、一瞬言葉に詰まった。

 ヒョン達は上半身裸でバスルームにいて、マクヒョンはバスタブの中に、ヨンジェヒョンは淵に腰かけている。

「あ、は、はい、」

「置いといて、もうちょっとで終わっ、わっココっ」

「はははっ、もっとやっちゃえココ」

 ココが体をブルブルっと降って水が弾けると、マクヒョンが濡れて、ヨンジェヒョンが大きな声で笑った。

「あ、はい」

 僕はあたふたとしているのを気がつかれないよう、さっと身を翻すと、ドアを閉めた。

 ココを洗ってるだけ、ココを洗ってるだけ、ココを洗ってるだけだ!

 ぎゅっと目を閉じても、バスルームでの楽しそうな様子が目の奥でチラチラする。

 ドアの奥から、マクヒョンの楽しげな笑い声が聞こえてくる。

 だめだだめだっ。

 僕はざわつく心を鎮めたくて、リビングまでドカドカと歩くと、カップのフタを開けてヒョンのコーヒーをぐいっと飲んだ。

「アチッ、にがっ」

 

 熱い塊が喉を落ちていって、ようやく思考力が戻ってくる。

 わかってる、マクヒョンとヨンジェヒョンはココのアッパとオンマだから、ココの世話を一緒にするのは当たり前で、大好きなココと一緒だから、あんなにも楽しそうで、可愛い笑顔を向けてて、ココが暴れて濡れちゃうから裸で、だから、だから、だから、だけどっ。

 僕はスマホを手にバスルームに戻る、カメラ起動してやる。

 ドアを開けると、二人がバスタブに腰かけて、ココをタオルで拭いているところだった。

「え、なに撮ってんの」

 ふんっ

「ユギョマ、SNSとか上げんなよっ」

「そんなことしませんよっ」

 僕はそう言うと、半裸で仲睦まじく写る二人の写真を、きっと僕と同じくらい忌まわしい気持ちで見るであろう、ヒョンに送りつける。

 カトク開いて、ヒョンのトークに貼り付けてやる。

 すぐに既読になったのを確認して。

 ぼ、僕はなんて大それたことをしてしまったんだろう、って心臓がドキドキし始める。

 でも、もう遅い。

 スマホをぎゅっと握りしめたまま、ソファに仰向けになって、天井を見つめる。

 

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?