2-8

 しんと静まり返った部屋でじっとしたまま。

 暇で、いろんな考えがとめどなく溢れてくる。

 ヒョンの柔らかい髪が気持ちよくて、ふわふわと撫でながら、感情に任せて想いを巡らせる。

 

 ずっと、ただヒョンが笑ってくれていれば、それでいいと思っていた。マクヒョンがジニョンイヒョンを好きなのは、みんなが知ってる事実で。

 だから、二人が仲良しでマクヒョンがいつも楽しそうだったから、それを見ていると僕も嬉しかった。

 ふたりの間に何があったのかは、正直分からない。

 だけど、ある時からジニョンイヒョンはマクヒョンに優しくしなくなった。

 僕がマクヒョンばかり気にしているから、そんな風に思うだけなのかもしれない。だけど、なんか、違う。

 そのこと、気になるけど誰にも聞けないし。

 ときどき目にするマクヒョンの寂しそうな顔。

 そういうのを見せられると、たまらなくって僕も悲しくなって。

 ずっとずっと押し込めてきた。

 僕だったら絶対にヒョンにあんな顔させない。

 悲しくさせないし、何があってもヒョンの味方だし。守るし。

 あまりにも幼稚だけど、でも、これが本当の気持ちなんだ。

 だからヒョン、僕だけを見てよ。

「ユギョマー」

 不意に小さな声で名前を呼ばれて。

 目を落とすと、マクヒョンのクリクリとした目と、視線がぶつかった。

 心臓が駆け足を始める。

 まるで、僕だけを見て欲しいって言ったのが通じたみたいな、錯覚に陥る。

「俺、寝てた?」

 手で目をこすりながら、そう言うヒョン。

「はい。僕もベッドで寝てたけど、ヒョンはこんな所で」

「こんなところ?」

 うーんって言いながら僕の脚に頭を乗せたまま、気持ちよさそうに伸びをする。

「ユギョミの脚、いい枕だなー。また使わせてよ」

 そう言って笑うヒョン。

 それが、僕が想像してたどんな反応とも違って。

 いろいろ気を張ってたのに、なんだか気が抜けてしまう。

 そのヒョンがたまらなく可愛くって、愛しい。

 ヒョンを脚に乗っけたまま、なのにいつの間に心臓も穏やかになっているから不思議だ。

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