2-11
「ヒョン。びっくりしたんだね」
「あ、うん」
「ヒョンがそういうのに理解あるってこと、僕は知ってるよ。でも、現場見ちゃうのはさすがにきついよね」
「ああ……うん」
ぴったりと並んでくっついて、膝を抱えて座るヒョンの腰を抱いて。
ドキドキとときめいていいシチュエーションなんだけど、ヒョンのことが心配で、そんな気分にはならない。
「ヒョン。僕こどもじゃないからね。知ってましたよ」
「えっ?」
「ジェボミヒョンとヨンジェヒョンでしょ? 僕、ふたりは忙しいから部屋に入っちゃダメって、言ったでしょ」
「えっ! あれって、そんな、え、ユギョミ知ってたの? 嘘、え?」
「知ってました」
「え、本当に? マジで?」
ヒョンは、心底驚いた顔で、僕を見つめる。
「うん……そんなシーン僕も見たことないし、もし見たら本当マクヒョンみたいに隠れたくなるのも分かります。でも、二人がどんな関係で何してんのかは、知ってました」
「え、そっか……そうなんだ」
「悪いことじゃないし……でしょ?」
「あ、うん、そだね」
「僕は羨ましいです」
「えっ」
「いや、やりたいって直接的な意味じゃなくって、好きな人と想いが通じて、お互いに幸せになれて、それって、すごいなって」
マクヒョンを見つめる僕の目に、どのくらいの気持ちがこもっているんだろう。
ヒョンに、伝わればいいって思った。
「ユギョマ?」
「僕は、好きな人が幸せになってくれればいいって、ずっと思ってます」
じっとマクヒョンを見つめる。
「できれば、僕が幸せにしたい」
ヒョンの腰を抱いて、じっと合った目がそらせなくて。
マクヒョンに届けばいい。
ずっとずっと、気がつかないで欲しいって思ってたけど、心の奥底では違った。
もう、解放してもいいかな、って思ったりして。
届けばいいのに。
「ユギョミは好きな子がいるんだな。俺の知ってる子?」
「さあ、どうでしょう」
ヒョンは急な僕の恋してます宣言に面食らったみたい。ぽかんとしたまま、そう言っただけだ。
ヒョンも恋してるでしょう?
そう聞き返すほど、僕はドMじゃない。
「ヒョン、僕、大丈夫だったでしょう? ヒョンの悩みは僕が聞くから、これからも話してくださいね」
なんだかわかんないけど、僕一人心の中で燃え上がった炎が消せなくて。
僕はぎゅっとヒョンを抱きしめた。
「ああ、頼りになるマンネだよ」
「でしょう?」
「話してよかったよ」
「もう大丈夫ですよね?」
「ああ、大丈夫」
ヒョンが、僕の背中をトントンと叩く。
もう離れていいよ、のサインだってわかってるけど、僕はぎゅっと力を込める。
「ユギョミ何してんの」
「抱きしめてんの、」
「や、それはわかるけど、だからなんで」
「ヒョンのこと好きだから」
「ああ、ありがと、でも、そろそろ離れて、俺お腹すいた」
「僕もお腹ペコペコです」
「食べてないの?」
「うん、ヒョンが変なところに隠れてるから、心配で」
「そか、ごめん。じゃ、なんか食べよう。テイクアウトでもしに行く?」
「うん、行きますっ」
「んじゃ行こう」
僕が腕を緩めると、ヒョンが立ち上がって、僕の腕を引っ張って立たせてくれる。
そんな一つ一つの行動に、いちいち嬉しくなってしまう。
ヒョンが僕の肩に腕を回して、部屋を出る。
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