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【大隈塾春合宿】学生主体の授業とは、

受講生100名。この授業に、先生はいない。

「学生主体の授業」大隈塾

早稲田大学の名物授業「たくましい知性を鍛える(通称:大隈塾)」には、教鞭を執る先生はいません。「学生主体の授業」を謳っており、運営は4人のSA(Student Asistant)という現役早大生が行います。

授業構成は5限にゲスト講師による講義、そして質疑応答。6限に講義の内容を踏まえたディスカッションをスモールグループ(3〜5人)で行うというもの。

SAはゲスト講師との打ち合わせから、6限のワーク作成、授業の直前準備、当日のファシリテーションまで全てを行います。

では、大隈塾はSAがいるから「学生主体の授業」なのでしょうか。

答えは、NOです。
大隈塾は「SAがいるから学生主体の授業である」と言いません。

"受講生全員で"、授業を作るから「学生主体である」と初めて言えるのです。

今回私は、合計20名の仲間と共に大隈塾の春合宿に参加してきました。今回この文章には、合宿に参加してみての感想、また受講生として一体どうやって共に授業を作っていくべきなのか、「学生主体の授業」を謳う大隈塾の実態について考えてみました。

▶︎到着、早速アイスブレイク

今回の合宿のスケジュールは以下の通り。

早稲田大学の所有する鴨川セミナーハウスに到着してすぐ、大隈塾をオーガナイズする客員教授のむらさんによるアイスブレイクが始まりました。

「先生!」って言ったら怒られます。
「先生じゃないよ、むらさんだよ」って。

今回の合宿参加者の半数以上は今学期からの受講生でした。まずは自己紹介と、前日4/19のゲスト講師大嶋啓介さんの講義の感想を伝え合います。

私は今学期、※公式もぐりとしての参加です。単位は来ないけど、大学の授業の中で何よりも楽しくて大好きな授業なので合宿にも参加しました。

大嶋啓介さんの講義を受けるのは二回目でした。講義を受ける前は「同じ人の同じ話を聞いても意味がないんじゃないかな」と思いつつ、大隈塾の友人たちに会いたくて授業に出ました。しかし、同じ人の話を1年越しに聞くからこそ「去年と同じ言葉に胸を打たれた!」と去年の自分と今の自分を比較することができたり、「大嶋さんの人を惹きつける話し方の秘訣はこれか!」と講義自体を俯瞰して観ることもできました。

※公式もぐり:正式な受講生ではないが毎回授業に参加する学生

▶︎「今回の合宿の目的は何だろう」

むらさんが問いかけて、各々答えます。

・親睦を深めるため
・SAがどんなことをしているのか知るため
・リーダーシップについて学ぶため
・田舎に来て非日常を味わうため
・たくましい知性を鍛えるため!

出た答えのどれもが正解。それが大隈塾です。
特に今回は
・親睦を深めるため
・SAがどんなことをしているか知るため
・次回4/26の6限のワーク案を体験して改善してみる
ことを大きな目的として設定しました。

▶︎SAの仕事内容を知る

私たち受講生には、授業当日にファシリテーションしている姿しかSAの仕事を見ることができません。私たちの見えないところで、どんな仕事をしているのか今回初めて明かされました。

一つの講義が作られる流れは以下の通り。

①ゲスト講師の選定
②ゲスト講師との打ち合わせ
③SAとのミーティング、リハーサル
④授業中
⑤授業後のお疲れさま会 など

①ゲスト講師の選定

5限に講義していただくゲスト講師の選定は、SAのみならず受講生も参加することができます。その際には「どうしてこの人を呼びたいのか」「この人の話を聞くことによって受講生にどのような影響を与えることを期待するのか」を選定会議出席メンバーに対してプレゼンを行います。

「100人以上の受講生がいるのに、10人ほどのメンバーが納得しない人を呼ぶことはできない!」

選定会議出席メンバーの満場一致を得て、ゲスト講師が決定します。決定した場合、プレゼンをした人があらゆる手段を行使してそのゲスト講師と連絡をとり、登壇を依頼します。

②ゲスト講師との打ち合わせ、ミーティング

かなり念密に企画書を作成して、ゲスト講師の方との打ち合わせに臨みます。忙しい時間を割いて一緒に講義を作ってくださるゲスト講師の方に失礼のないように、打ち合わせのリハも各自で行います。


③SAとのミーティング、リハーサル

毎週、月曜8:00〜10:30に6限のワークショップの企画、金曜2限4限でリハーサルと直前準備を行い、講義に備えます。


講師の方に「こんな内容を話してください」と依頼はしますが、事前に内容を全ては把握することができないので、ワークショップのテーマ設定等で難しい面が多々あります。なるべく講師の方の話す内容とテーマのズレのないように、もしズレていたとしても受講生にとって満足度の高い講義となるように、考え抜いてワークを作ります。

また、講義で使用する100名分の資料や名札の配布など、雑務的なことも行なっています。それもかなり時間のかかる作業です。

④授業中

私たち受講生が、普段講義中に注目しているのはその回のファシリテーターとなる人です。しかし、その裏でSAさんはたくさん仕事を行っています。

ⅰ.議事録を取る人
講師の方が話した内容がどんなものだったか、次の世代の大隈塾運営に繋げるために議事録をとります。携帯PC使用禁止という授業中のルールなのに唯一パソコンを使っているSAさんは、このためにパソコンを開いていたのですね。

ⅱ.講義を集中して聞く人
講義後の質疑応答のファシリテーションをする際に、講義の内容を理解していなければ、受講生が「どのような意図でこの質問をしたのか」を汲んでフォローすることができません。それなので、ゲスト講師を呼んだ担当SAがメインとなって受講生と一緒に講義を聞きます。

ⅲ.受講生の反応を見て回る人
受講生が講義を聞いて「どんな言葉に反応していたか」「眠そうな人はいるか」「期待している反応があるか、または予想外の反応があるか」を見て回り、6限とのワークの繋がりをリアルタイムで思考します。

ⅳ.タイムキーパー
熱量満点な講義であることがほとんどなので、時間が伸びてしまわないように、受講生の後ろで「あと◯分」という紙を持って講師の方にお伝えし、時間をコントロールしています。どうしても時間が伸びてしまったとき「6限のワークのどこで調整しようか」これもリアルタイムで頭フル回転で考えます。

⑤お疲れ様会

5、6限の講義を終えて、1つの講義作りがやっと終了します。お疲れ様会と称した反省会を行い、さらにより良い授業へと繋げていきます。

SAの全体の仕事内容を初めて聞いて思った感想は「これ、4人じゃ人数足りないでしょう!」でした。各学部で同じ学生として他の授業を受けながら、大隈塾の講義を作るなんて時間がいくらあっても足りないように感じました。それでもSAのみんなは、講義中に辛い顔一つ見せずに前に立って運営しています。

講義の時間だけでなく、授業前後の事務的な連絡、そして大隈塾のコミュニティを盛り上げるためのオンラインのやりとりも行っています。SAさんは本当に真剣になって私たち受講生のために講義内容を考えて、ただ考えるだけでなく実際に行動もしているのです。

▶︎4/26「仕事と稼ぎと暮らし」のワークを体験しよう、改善しよう

SAさんの仕事内容を一通り知れたあと、私たちは次回4/26のゲスト講師長谷川拓也さんの講義の6限に行うワークとして「仕事と稼ぎと暮らしを考える(仮)」を実際に行い、改善を考えました。

※ここでは次週のネタバレになるかもしれないので内容を隠しながら書きます。

あるキーワードについて、ブレスト(ブレインストーミング:考えていることを質より量で書き出していく作業)を行ってみたり。

まとめたことを、スモールグループで発表したり、全体の前で発表したり。

いつもの6限のワークとして受けつつ「これが楽しい!」「このワークの意図は本当に伝わるかな」「もっとこうしたらいいかも」とGoodな点もBetterな点も挙げながら取り組むことができました。

私たち受講生は、何においても積極的に「Good Feedback(良いと思った意見)」を見つけるだけでなく、時に「Better Feedback(より良くするための意見)」も持つべきでしょう。その時、講義自体に意見をする場合「どれだけ一生懸命SAさんが受講生のために準備したものなのか」忘れてはいけないと思います。組織の足枷となる無自覚な批判者になってしまわぬように、感謝と他者理解を心がける必要があると思います。

▶︎合宿での食事

大隈塾には「お残しは許しまへんで!」という鉄の掟があります。

大隈塾にはたくさんのプロジェクトがあります。
その中でも人気なプロジェクト、

・「一次産業に携わる人の声を届けるWEBメディアNIPPON TABERU TIMESとのコラボプロジェクト」

・「家畜と人間の関係を通じて食について考えるくまぶ〜プロジェクト

があります。

人に「食」の大切さを伝えるならば、まず自分たちが実践します。それぞれプロジェクトという大きなアクションの中で、一番大切なことは小さなアクションをどれだけしっかり実践できるかではないでしょうか。

▶︎合宿ならではの時間

普段は「授業を一緒に受けて、真面目なことを話し合う」関係になりがちな大隈塾ですが、合宿だからこそ、言葉も言葉以外のコミュニケーションがありました。

スポーツを通して親睦を深めたり

みんなで同じ景色を眺めてみたり

気ままに海へ散歩に行ってみたり

夜中まで語り合ったり

やっぱり、一緒に時間を過ごすと心地よい空気が流れ始めてくる。そんな優しい空間は、限られた時間内での授業とその前後で、私たちはどうやって生み出していくことができるでしょうか。

▶︎「学生主体の授業」にするための提案

合宿に参加して改めて大隈塾の楽しさ、 SAさんの仕事振り、むらさんの思いを感じて、私に考えられた一人の受講生からできる「学生主体の授業」への貢献を提案します。

・遅刻はしないようにしよう
長い時間をかけてSAさんとむらさんは私たちのために一つ一つの授業を作っています。SAさんに1分でも多く、時間の余裕を私たちが作っていきましょう。

・もし授業前に時間があるなら、準備のお手伝いをしよう
100名以上分の名札を振り分けたり、プリントを準備したりするのは大変な作業。でも一人でも二人でも助っ人がいたら、作業が終わる時間がうんと早くなるはず。みんながみんなやる必要はないと思うから、時間と気持ちの余裕のあるときに、早めに行って準備の手伝いをしたらどうかな。

・講義中はSAさんの指示に従おう、分からないところがあったらすぐに質問しよう
講義の進行を妨げないためにも、SAさんの指示には速やかに従おう。でもファシリの途中で言葉の意味が不明瞭だったり、やるべきことが分からなかったら、そのときは迷いなく質問したい。それが他の受講生にとっても、SAさんにとっても協力になるはず。

・スモールグループで一緒になった受講生と互いに仲良くなろう
100人以上もいる授業の中で、全員の顔と名前を覚えるのは難しいかもしれない。じゃあせめて、同じグループになった人とは大隈塾で会ったら挨拶したり、授業の前後で少し会話するのを続けたらどうだろう。小さな優しい空間が、ポツポツと生まれて、それが大きなものになるのではないでしょうか。

「"受講生全員で"、授業を作る」それは何も、ゲスト講師の選定に関わることや、SAさんと同じ仕事をするだけではないはずです。たった一人でも、大隈塾で得られる学びを最大化することはできると思います。

「楽しい場所に人は集まる」

今までの人生を振り返って…
例えば中学校や高校で、普段の授業よりも体育祭や文化祭が楽しいと感じる人が多いのは、ただ単に勉強じゃないことをやれるからでしょうか。

楽しいときは、受動的でなく能動的に動くときではありませんか。
楽しいときは、自分の好きな人と好きなことをやれるときではありませんか。

だったら、大隈塾でも小さなことから能動的に動きましょう。たくさん好きな人を増やしましょう。

この授業に、先生はいない。

いや、受講生全員が学ぶ者であり、また違う価値観の中を生きる、互いに学び合うべき師なんだと思う。




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