【プリンセスをもう一度観る:シンデレラ編】お城で出会った王子さまは、素敵な男性ではなかったんだ

シンデレラのストーリーは「"外見こそ全て"を一貫して主張する外見至上主義」「女性は素直で従順で受動的であることが良い家父長制社会の求める女性像」「女性の幸せはお金のある男性との結婚を唄う結婚至上主義」だった。

ディズニープリンセスの中でも、代表的なお姫さまであるシンデレラ。
幼い頃にシンデレラを見て「苦しいことがあっても信じていれば、いつか白馬に乗った王子様が現れるにちがいない」と思った女の子は少なくないのではないでしょうか。

私は「自分はお姫様ではないし、王子様も現れない(正確には嵐の二宮くんとは結婚できない)」と知っている今でも、なんとなく「男性から告白されたい」と思うし、「片膝ついてプロポーズされること」は恥ずかしいけどロマンチックだなと思ったりします。私はレディーファーストもエスコートも悪い気はしません。むしろ、それができる男性の方が素敵だなと思います。

私は漠然と「ジェントルマンな男性が素敵」と思っていました。しかし最近、どんな所作が「ジェントルマン」で、どんな行動が「セクシスト」なのか、曖昧な部分があるのではないかと思い始めました。

そして、そもそも何故「ジェントルマンな男性が素敵」と思ったのか考えたとき、私はジェントルマンの代表が「ミッキー」なのではないかと思いました。

仮説:ディズニーが「男らしさ」「女らしさ」を刷り込んだのではないか

ここで一応伝えておきたいのが、私はディズニーが大好きだということです。小学生のときの6年間、誕生日のプレゼントにお願いしたのは「家族でディズニーへ行くこと」でしたし、高校生までディズニーテーマパークへ年に2回は行っていました。

ですが今回は「ディズニーが好き」という感情とは別に「ディズニーとジェンダー」について考えたいと思いました。

そんな時に出会った本がこちら。

ジェンダーの講義でプリンセス・ストーリーを扱うのは珍しいことではなく、普遍的な学び方だそうです。私はこの本を一読してすぐ、シンデレラのアニメを見てみました。そして15年来にシンデレラを見て「シンデレラとジェンダー」を考察してみました。

▶︎シンデレラのあらすじ

シンデレラのストーリーは多くの人が知っていると思いますが、ここで改めてあらすじを紹介します。
※もちろんネタバレになりますので注意

◯昔々あるところに、シンデレラという美しく優しい女の子がいました。
◯⑦幼い頃に母親を無くしたシンデレラは、父の再婚相手の継母とその連れの二人の姉たちに召使いのよう扱われていました。
◯ある日この国の王子様が舞踏会を開くことになり、姉たちは綺麗に着飾って出かけて行きましたが、シンデレラはもちろん連れて行ってはもらえず、それどころか①屋敷の片付けや掃除を命じられました
◯シンデレラは悲しみに暮れていましたが、②突然魔法使いが現れ、美しいドレスとかぼちゃの馬車を与えてくれました。
◯シンデレラは喜んで舞踏会へ行きます。その時魔法使いは「0時になったら魔法が溶けてしまうから、0時までに帰ってくるように」とシンデレラに言いつけました。
◯忠告を守ると約束したシンデレラがお城へ行くと、③お城の王子様はシンデレラのあまりの美しさに一目惚れし、虜になってしまいました。
◯王子様からダンスに誘われたシンデレラは時間を忘れて舞踏会を楽しみました。
◯シンデレラが時計を見た時、すでに0時近くなっていました。シンデレラは慌ててお城をあとにします。
◯④シンデレラの名前も聞いていなかった王子様は引き止めようとしますが、間に合いません。残念がる彼の前には、片方のガラスの靴のみ残されていました。
◯王子様は⑤「舞踏会に来ていたガラスの靴をはいた女性を自分の妻にする」といい、ガラスの靴にぴったり足が入る女性を召使いたちに探させました。
◯町中の女性たちが残されたガラスの靴を履いてみますが、誰もぴったりと捌ける人はいません。
◯もちろん⑥姉たちも無理やりガラスの靴を履こうとしますが、足が大きすぎて入りません。
◯そこへシンデレラも「私にも試させて欲しい」と家来たちに願い出てガラスの靴を履きます。
◯靴はまるでシンデレラのために作られたかのようにピッタリでした。
◯家来たちはシンデレラをお城まで連れて行き、⑧後日王子様と結婚し、幸せに暮らしました。

▶︎シンデレラを見た「素直な感想」

やはりシンデレラは美しく、心優しく、健気で素敵な女性だと思いました。魔法使いが魔法を使って美しいドレスを仕立ててくれた時は感動したし、王子様とのシーンもロマンチック。心のどこかでシンデレラのような美貌を、シンデレラのような展開に憧れがないとは言えませんでした。

▶︎シンデレラを見た「批判的な感想」

素直にシンデレラに憧憬の念を抱きつつ、15年ぶりに(しかも物語に浸ることを目的とせず、考察を目的に)見たシンデレラはツッコミどころ満載でした。

①「屋敷の片付けや掃除を命じられました」
②突然魔法使いが現れ、美しいドレスとかぼちゃの馬車を与えてくれました

シンデレラはその性格について終始「受動的な態度」で描かれます。

美しい顔で召使いのように働き、洗濯をし、食事を作り、掃除をします。苦しい状況でも「いつか王子様に出会えること」を祈り歌い、信じています。シンデレラはとても従順なのです。それに比べ継母や姉たちは、快楽を求め、働かず、嫉妬深く、醜い。もちろん男性にとっての"ステレオタイプとして"理想的な女性像はシンデレラでしょう。

また、シンデレラが舞踏会に行くことができずに嘆き悲しんでいる所に魔法使いが現れました。魔法使いという奇跡的な存在が現れたことによって、美しいドレスと馬車が与えられ、シンデレラは舞踏会に行くことができたのです。

嘆き悲しむほど行きたいのであれば、なんとか自分でドレスを用意したり仕立てたりして、継母と姉たちが留守の間に屋敷を抜け出して行くことができたのではないでしょうか。もっと能動的であっても良いのではないでしょうか。

「女性は素直で従順で受動的であることが良い」とされる価値観は今も残っていると思いますが、それは家父長制が求める女性像だと言います。

かふちょう‐せい【家父長制】父系の家族制度において、家長が絶対的な家長権によって家族員を支配・統率する家族形態。また、このような原理に基づく社会の支配形態。デジタル大辞林より引用

③お城の王子様はシンデレラのあまりの美しさに一目惚れし、虜になってしまいました。
④シンデレラの名前も聞いていなかった王子様は引き止めようとしますが、間に合いません。
⑤「舞踏会に来ていたガラスの靴をはいた女性を自分の妻にする」といい、ガラスの靴にぴったり足が入る女性を召使いたちに探させました。

久しぶりに見てショックだったのは、幼い頃に「いつか私も」と願って求めた王子様の態度そのものです。シンデレラは見た目も心も美しい女性として描かれていますが、王子様は果たしてシンデレラの心の美しさをも見抜いてシンデレラを好きになったのでしょうか。仮面舞踏会でもないのに、シンデレラについて知られた情報は「ガラスの靴を履いた女性」それだけ。名前も素性も聞かず、シンデレラの好きなことやものの一つも聞かないなんて、王子様はシンデレラの美貌以外興味がなかったのではないでしょうか。

悲しいことに王子様が求めた女性は「シンデレラという人物」ではなく「ガラスの靴を履いた女性」ただそれだけだったのではないでしょうか。


⑥姉たちも無理やりガラスの靴を履こうとしますが、足が大きすぎて入りません。
⑦幼い頃に母親を無くしたシンデレラは、父の再婚相手の継母とその連れの二人の姉たちに召使いのよう扱われていました。

グロテスクな表現のために省かれたという原作グリム童話のシンデレラの中では「姉たちはガラスの靴を履けない自分の足を切って血を流しながら小さな足にした」という箇所があります。姉たちもまた、求められる女性像の奴隷となって、ありのままの自分を傷つけて型に自ら当てはまろうとしたのです。

また、そもそも父親と継母の再婚は愛あるものだったのか疑問です。愛ある婚約の中に、シンデレラを召使いとして扱う選択があるでしょうか。継母がシンデレラを気に入らない理由が「自分よりも美しいから」と言われています。美しさは比較できるものなのかも疑問ですが、この外見至上主義の世界観の中でシンデレラの父親に見初められるほどには美しかったのですから、妬む必要などなかったのではないでしょうか。

⑧後日王子様と結婚し、幸せに暮らしました。

そしてこのストーリーは結婚で締めくくられます。思えば、他のどのプリンセスのストーリーも「結婚して」「恋が実って」お話が終わります。でも実際は「結婚してから」「恋人同士になってから」が始まりです。「お姫様とジェンダー」を書いた若桑先生は、「女性の幸せは結婚することである、と教えたものの一つは現代大量消費されるプリンセス・ストーリーだ」と言います。

▶︎シンデレラ・コンプレックス

自立できない女性がシンデレラのように、理想の男性が現れて幸福にしてくれるのを待つ心理を、シンデレラ・コンプレックスというそうです。

美貌を持ち合わせて生まれてくることは、自分の努力ではありません。ほとんどの女性が、普通の女性です。その普通の女性がメイクやダイエットに一生懸命になります。時に過度に、それらを行います。

またいくら美貌を持ち合わせていようと、人は年老います。時に「女性は賞味期限がある」と表現されます。「ちやほやされるのは20代まで」もよく聞く言葉です。

10代、20代で「若さ」と「美しさ」以外に存在価値を見い出すことのできなかった女性は、シンデレラの継母のように、「若さ」と「美しさ」を持っている女性を虐めて生きるのでしょうか。毎朝鏡を見て、悲しみからスタートしなくてはならないのでしょうか。

ここで忘れてはいけないのが、女性が「若さ」と「美しさ」に目くじら立てて取り組むのは、男性に選ばれるためなのです。

生まれがよくてお金持ちで背が高くてイケメンな男性を求め、贅沢を保証してもらいたがる女性こそ、普通の男性を不幸にするのではないでしょうか。

▶︎感想

シンデレラの考察をするのは色々な意味で疲れたのが正直な気持ちです。批判的に物事を観るのは本当に疲れます。幼少期の自分を否定しているようだったし、みんなから愛されるシンデレラを批判する自分がとても性格の悪い奴に思えました。

しかし、ここまでシンデレラについて考えて、もし自分の子供が生まれたら、シンデレラのようなストーリーは見せたくないと思いました。外見の美しさで人を判断して欲しくないし、また容姿だけで自分を選ぶようなパートナーと一緒になって欲しくないし、幸せは自分で掴んで欲しいからです。

私は今能動的に活動することの楽しさを知っています。無知であるより、学び続けることの方が人生を豊かにすることを知っています。結婚を望んでいますが、100年の人生のうちの出来事の一つであることを認識しています。

「賢い女は嫌われる」
勉強すればするほどこの言葉が頭をよぎります。
「自己主張する女はモテない」
主張したいことは山ほどありますが、時々呟くことも憚れます。
「ジェンダーを学んだ女子は就活で不利」
ジェンダーを学んでいる女子を落とす企業なんてごめんですが。

自分の子供が社会に出るときは、そんな言葉が無くなっていて欲しいです。

▶︎白雪姫編(を書くか迷ってます〜)

ジェンダーについて一人で考えるより、みんなで考えた方がいいと思いました。一人でこれを考えるのは、随分消耗する作業でした。男の子とか女の子とか関係なく、もし興味がある方がいたら、一緒に白雪姫を見ましょう!


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