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「私たちは子どもに何ができるのか」

私たちが直面している少子化問題は深刻です。「異次元の少子化対策」と名を打って政府が行動を"起こそう"としてくれていることに、私は幾許か成果が出ることを期待をしつつ、「出生率」という数として扱われる子どもたちが、それぞれどんな人生を生きる可能性があるのかについて、考えることがあります。

生まれる国も、生まれる家庭も何も選ぶ権利のない子どもたちが、私たちの社会に「未来」として誕生してくれる、ただそれだけで私たちは一方的に子どもたちから返しきれないほど多くのものを受け取っています。

しかし、私たち大人は、課題大国ニッポンと言われる通り、国内においても、グローバルな地球環境問題、エネルギー問題、地政学的な争いにおいても、多くの負債を生まれた瞬間から子どもたちに背負わせてしまっています。

困難が溢れる社会にいつか立ち向かわなくてはならなくなったとき、その子が幸せでいられるように、患難を乗り越える力と環境と仲間がいてくれるように、「今の私たちには何ができるのだろうか」と、そう思うことがあります。

「私たちには何ができるのだろう」その一つの解答

私たちが、子どもたちのためにできること、やらなくてはいけないことはたくさんあると思いますが、その最も大きな1つが「教育改革」です。

そして、その指南書として1つ参考にしたいのが「私たちは子どもに何ができるのかー非認知能力を育み、格差に挑む」という本です。

日本における子どもの貧困

もので溢れて、スマートフォンであらゆる情報にアクセス可能になって、人がこれまで望んでなかった欲望を掘り起こすようにしてビジネスが行われています。そんな中、日本における子どもの貧困率は、1980年代から上昇傾向にあり、今日では実に7人に1人の子どもが貧困状態にあるとされています。

引用元:日本財団
子どもの相対的貧困率の推移。1985年に10.9%であった子どもの貧困率は、2019年には13.5%となっています。

子どもの貧困は、一生の財産になる「非認知能力」を獲得する機会を奪い取ってしまう

著書の中では、子どもたちが幸せに生きるためには、従来の学術的な成績や知識だけでなく、非認知能力(ソフトスキル)の育成が重要であると言われています。非認知能力とは、自制力、毅力、自己調整能力、社会的なスキルなど、学業の成果や将来の成功に重要な影響を与える能力のことです。

貧困状態にある子どもたちは、さまざまな困難やストレスに直面し、学校での成功に影響を受ける可能性が他の子どもたちよりも高く、非認知能力を育む機会を得られないことがあります。
そしてその結果、給与の高い仕事に就くことができなかったり、仕事を続けることができなかったりし、貧困のループから抜け出せないということがあります。

日本全国、あらゆる子どもたちに対して、認知教育はもちろん、非認知教育を施し、貧困による社会的な不平等や学力の格差を減らすためには、教育政策や教育プログラムの改革が必要です。

そして、「非認知能力を養う」こと自体の需要性の理解も重要ですが、どうして民間・家庭だけではなく、国家が主体的にそれに取り組むべきなのかという理解も大変重要だと考えます。

著者のポール・タフ氏は米国での実践と研究実施による科学的根拠に基づいて、これらの重要性を示唆してくれています。

どうか幸せな子どもが増えてる未来を望んで、この本を手に取る人が増えますように。訳者のまえがきを引用して、noteを締め括ります。

世界各国でおこなわれた貧困問題への意識調査で興味深いデータがある(The Pew Global Attitudes Project、 2007年)。

「自力で生きていけないようなとても貧しい人たちの面倒をみるのは、国や政府の責任である。この考えについてどう思うか?」という問いに対し、「そう思わない」と答えた人は、中国ではわずか9%、イギリスでは8%、ドイツでは7%の人だけだった。つまり、これらの国々ではほとんどの人が、貧しい人の支援を政府が行うべき、と考えていることが分かる。

しかし、日本では「そう思わない」と答えた人が38%。諸外国の5倍近く。アメリカですら28%だというのに。 貧困に冷たい我が国は、貧困は自己責任だと突き放し、そして結果として、自己責任なんて持ちようがない子どもたちの間に貧困が広がることを、放置してしまっている。
日本をアメリカのような子どもの貧困が蔓延する状況にしてはいけない。そのためにも、この本は読まれねばならない。

そして行動しなくてはいけない。私たちの愛する、子どもたちのために。

フローレンス代表理事
駒崎弘樹

HELPING CHILDREN SUCCEED 私たちは子どもに何ができるのか
 ポール・タフ著 高山真由美訳

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