上司への「レク」なんて今すぐ廃れればいいのに
○部下が上司に仕事の内容を教える謎文化
僕は昔、お堅い仕事に就いていたことがある。
その職場には、「レク」という文化があった。
レクリエーションではない。
“レクチャー”の略だ。
簡単に言うと、
自分の上司に、自分がやっている仕事の内容を説明する
というものだ。
※上司以外に説明する場合もあるのだが、ここでは「上司へのレクチャー」を指す。
というようなことを、自分の上司(だいたい課長以上)に説明・お願いをするという、
無駄を集めて、煮詰めて、焼いて、蒸したような 悪しき慣習である。
「後ほどこの資料を回します」の『この資料』を、わざわざ面と向かって口頭で説明してあげるのだ。
しかも、部下が上司に
と、下手に出てスケジュールを確保しなくてはならない。
いや、ワケが分からんのだ。
新人の頃、「レク」というものの存在を先輩に説明された時、この人はウソを言っているのだと思った。
頭の中が「?」でいっぱいになったのを覚えている。
そして、これはこの業界だけの独特な文化なのだと勝手に思っていたが、残念ながら転職した今の職場でも、レクは存在しやがる。
どうやら、一つの業界における因習というわけではないらしい。
○上司のせいで仕事が滞る
偏屈な上司や、その日の機嫌によって言うことがコロコロ変わる上司が相手だと、レクの準備に多大な時間と労力をかける必要が出てくる。
そういう上司は、
伝えているはずの事柄を平気で忘れていたり
思い付きで面倒なことを命じてきたり
物事を根底からひっくり返してイチからやり直しを命じたり
見当違いのアドバイスをしてきたり…
と、超劣化版Chat gptみたいなやつらだからだ。
レクの結果次第では、今までの仕事が水の泡になってしまうので、何を言われても対応できるように、周到に準備をしなくてはならない。
だから、
「レクのための打合せ」
「『レクのための打合せ』で使うための資料作り」
みたいな、極めて無駄な作業が本当にあるのだ。
しかも、その内容が業務改善についての資料だったりする。
落語でも描かれないような冗談である。
おまけに、レクは上司のスケジュールが最優先だから、自分に有給休暇の予定があったとしでもずらさなくてはならなくなったりする。
上司のスケジュールが取れないと、レク待ちで仕事が停滞したりする。
「週明けレクだから」 とか言って、その準備で休日出勤したりする人もいる。
アホである。
「身内にズボンの裾を踏まれて前に進めない」というようなお粗末な状態が、慢性的に起こっているわけだ。
そして、この件で最も憂うべきことは、
ほとんどの社員が、この状態を「当たり前」だと本気で思っている
ということだ。
この環境に慣れきってしまっているため、“部下が上司に仕事の内容をレクチャーすること”を当たり前だと信じて疑わないのである。
上司は自らが受け身でいることを当たり前だと思っているし、部下はそのために休日を捧げて準備をすることが当たり前だと思っている。
そう、終わっているのだ。
○人は昇進すると赤ちゃん返りする
考えても見てほしい。
自分が指揮を執っている部署の仕事を、自分自身が部下に説明してもらっている
のである。
めちゃくちゃ恥ずかしいことなのだ。
何も、消耗品を何個発注したとか、末端の社員同士の打合せの内容とか、そんなことまで把握しろとは言っていない。
今それぞれのチームで何をやっていて、どんな方向性で進んでいくのかくらいは把握しろと言っているだけなのだ。
上司の役割は、部下に対して業務の指示や目標を与えるとともに、適切な助言をすることだろう。
今部下がどんな仕事をしているのかも知らない人が、どうやってそれを行うのか。
部下が説明に来るまで仕事の状況を把握していないなんて、職務放棄にもほどがある。
定例会議もあるし、疑問があったら上司側から質問してもいい。社内メールもチャットもある。把握する機会はいくらでもあるはずだ。
悲しいことに、人は昇進するにつれて赤ちゃん返りをするらしい。
飲み会では、自分が飲み食いする分すら人に取り分けてもらうし
エレベーターに乗っても、行先や開閉のボタンすら押さないし
出張の手配も全部人にやってもらうし
自分の部署の仕事を、部下が報告に来るまで把握しようとしないし…
新人には「指示待ち人間はダメだ」と言いながら、自分はすべてにおいて“待ち”しかできない赤ちゃんになっている。
随分とまあ、愚かなもんである。
○「事務系職場における7つのムダ」
たまに、Xなどで
「事務系職場における7つのムダ」
という画像が流れてくることがある。
何でも、トヨタの本社に貼ってある注意事項の画像なのだという。
↓Google画像検索の結果は以下リンクをご覧ください。
僕はトヨタで働いたことがないので、本当にこれがトヨタに貼ってあるかどうかも知らない。
でも、もしそれが本当なのだとしたら、
弊社は清々しいまでの「逆トヨタ」だ。
以下に、その「事務系職場における7つのムダ」(弊社との比較コメント付き)を記す。
……こうやって整理してみると、恥ずかしさと気持ち悪さを再認識する。
でも、こんな「株式会社逆トヨタ」が、この国にはたくさんあるのだろう。
(有限会社とか合同会社とか社団法人とか、適宜読み替えていただきたい)
結局、「決定権を持つ側」の人間が受け身のまま楽をできるというこの状況が、そう簡単に変わるわけがないのだ。
そういう僕だって、何かを変えようと能動的に動いているわけではない。
と文句を言いながら、しっかりと受け身で生きている。
このしょうもない体制を打破する方法を誰かが僕にレクしてくれればいいんだけれど、悲しいことにそうはいかない。
下っ端おじさんの僕は、こうやって愚痴ってストレスを発散しつつ、明日もレクの準備に勤しむしかないのである。
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