こんな友達でいたい。
お金の貸し借りは嫌だから、あげてやる。でもそれはお前さんが乞いてきた行為に対してのお金じゃなくて、お前さんという存在をもってしてあげるお金であることは忘れるな。
数か月に一回ガチャガチャしたお店でお酒を飲むんじゃなくても、週に一回やそれ以上でもいいけど川沿いで歩きながら大喜利したり、大して成就しない色恋話に明け暮れたりしてやる。話のネタがないなんて野暮なことは言うなよ。ネタなんか一緒に作ればいいだけの話だからな。
身内に何か不幸な事があったら一緒に悲しんでやる。お前さんが話したいタイミングまで待ってるからな。遠慮なんかクサイことはするなよ。
俺にとって気になることはなんだって面と向かって言ってやる。仲良しを集めてお前さんの陰口を言うような下劣なことをするわけがない。世間や道徳がどうとかじゃなく俺の偏見にまみれた意見をお前さんにぶつけてやるからな。お前さんもその気で向き合ってくれよ。
どれだけ興味のない話題でも聞き流してやる。言葉ってのは運動だからな、思ったことをペチャクチャと喋ってみないと論理の穴に気づくことができないんだ。その代わりその穴を付け焼刃で埋めようとするなよ。その穴の大きさがお前さんだからな。俺が壁になってその時間をお前さんに与えてやる。アイドルの話でも、御朱印の話でもなんでもかかってこい。全部聞き流してやるからな。
お前さんが恋仲と喧嘩したら笑ってやる。喧嘩というのはすればするほど良いってもんでもないが、熱ってのは空気にさえ触れさせておけば冷めていくもんだ。俺の空気で申し訳ないが、お前さんどうせ他にあてがあるわけじゃないだろ。存分に笑ってやる。
今までの慣習を捨てようと思っているときは背中を思いっきり押してやる。”可愛い子には旅をさせよ”だっけか。まぁお前さんはかわいいとは程遠いが、うずまきナルトも崖から落とされて口寄せの術を会得したんだ。怪我をさせるんだ、背中を押した相手の先々諸々のことを背負うという覚悟がない奴に他人の背中など押せやしない。この事さえ胸においてくれりゃお前さんはただ前だけ見てればいいんだ。安心して傷を負え。
死にたくなったら一緒に疲れるまで夜を徘徊してやる。どっちかがくたびれたら終わりじゃないからな。一緒にくたびれるまで付き合うんだ。これはこれで話のネタになるぞ。クソみたいにうるせえ世間が隣でやかましいが、一緒に老いていこうじゃないか。
もし俺がお前さんより先にくたびれたら一生憑いてやる。お前さんの入浴までついていってやるぞ。シャンプーをシャワーで流した後のジャストのタイミングで鏡にうつりこんで脅かしてやるからな。驚いた後はホッと安心でもしとけ。お前さんが自然に死ぬまで俺が疫病神のポストを占領しといてやるからな。それはそれで面白そうな余生になるな。笑い死にさせてやる。
お前さん。お前さんだよ。
正直に生きるのが馬鹿馬鹿しくなったときは変顔でもするんだな。
馬鹿馬鹿しくなってくるからおすすめだぞ。