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び、美男子だからっ!!

お盆。
それは親戚に会うということ。

親戚に会うということ。
それは久しぶりの対面を果たすこと。

久しぶりの対面を果たすこと。
それはもはやテンプレートと化したご挨拶を頂き、与えること。

そんなお盆を今年も過ごした。
僕の過去のnoteでも触れているので別に遠慮しないが、2022年の年末に祖父が亡くなった。
祖父は長野県松本市生まれ。祖父の家系の親戚が松本で根を張っている。
そんな祖父のお墓は当然松本市に。
今年も祖母を連れ、母の運転で松本市に。
といっても祖父の家系はクリスチャンなのでお盆という風習とは本来相容れないはずなのだが、まぁここは日本。神道精神で見逃してくれ。

祖父は4人兄姉(こんな字はないが日本語の性質にあやかる)。
長女と祖父は1周りも年齢が違うが、長女の方は今でも健康に過ごされている。
後は等間隔に兄と姉がいる。
そんな家庭なもので、親戚の相関図というのは非常に複雑だ。
いとこやはとこが入り乱れ、きづいたら2歳、3歳、5歳の親戚が増えている。
ちびっ子たちには悪いがここまで複雑だとお年玉なんて面倒だから僕に期待するのはよしておくれ。

こんなに家族がいるのだ。
4人兄弟の末っ子の孫である僕の顔や名前が一発で一致するわけがない。
だから毎年のお盆や大晦日では軽く自己紹介から挨拶が始まる。
そして美味しいご飯が乗っている大きい机を囲んで歓迎を受ける。
そのたびに僕は松本が好きになるのだ。
こんな単純でいいのだ、人間は。

今年の盆は少し違っていた。
というのは今月僕は信じられないくらい金がない。
いつも金がないのだが、といっても一応口座には2~3万円は常駐していた。
しかし今は全くないのだ。
これでどうやって飯を食えというのだ。
これでどうやって心の平静を保てというのだ。
松本に行くのに実家に帰る必要があったのだが、自宅から実家に向かう電車賃も惜しい。
だが実家に着いたらよし。その後の金は家族に頼ればよい。
一泊二日の延命を確約することが出来たのだ。
まぁとはいえ、梶井基次郎のいう”不吉な塊”様な具合の悪さを引きずりながら松本に向かった。

僕の状態が今までのお盆との違いではない。一番の違いはこんなものではない。
松本に着いて、祖父の姉(次女にあたる)に、
「あら、すっかり美男子になっちゃって。」と言われたのだ。

。。。

はい、僕は美男子だそうです。
そんなことを思ってくれる人がこの世の中にいたんだ。
そして僕に向かって言ってくれる人がいたんだ。
まぁ美男子だからなんだ。と言われちまったらそれ以上の事は言えないんだけれども。
ただ不思議だなぁ。
梶井基次郎でいう”檸檬”だな、”不吉な塊”による具合の悪さを忘れちまった。
祖父の姉からの言葉に対して僕は謙遜の仮面を被ったが、
「ほう、そうか。俺は美男子か。金のない美男子か。悪くないな。」
と噛みしめていた。
「金など俺の動いた道に成る。なんでかって俺は美男子だからな。」
こんなことさえ思えちゃう始末だ。

気分が晴れた後の飯っていうのはうまいな。
具合を取り戻した病み上がりの状態ほど最高の調味料はない。
また一歩松本が好きになった。


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