ナナシスが教えてくれた「推しもオタクも永遠ではない」ということ

こんにちは。いろいろありましたが今日は推しの話です。

「Tokyo7thSisters」、通称「ナナシス」というコンテンツがあるのをご存知でしょうか。ゲームアプリから始まり、楽曲リリースやキャラを演じる声優さんによるライブなど様々な活動をしているもので、大きなテーマは「アイドル」です。


ナナシスにはゲーム内でEPISODEシリーズと呼ばれるストーリーが存在します。舞台は2034年、東京の娯楽の中心"Tokyo-7th"。2032年に「セブンスシスターズ」という伝説のアイドルグループが解散したあと、『アイドルは時代遅れ』と言われているという設定です。

プレイヤーが、ナナスタと呼ばれる箱スタの2代目支配人に命じられ、ナナスタを存続させるためにマネージャーの「六咲コニー」とともにアイドルの卵をスカウトしにいくという所から話は始まります。その後、「春日部ハル」を始めとする12人の少女が集まり「777☆SISTERS」が結成されます。

先程も記述しましたが、この時代では『アイドルは時代遅れ』。『アイドルなんてダサい』『アイドルは終わった』と言われている時代です。もちろん「777☆SISTERS」は様々な困難にぶち当たり、決して平坦ではない道を歩いていきます。時には時代の最先端を行くガールズバンド「4U」やカリスマと称される双子ユニット「KARAKURI」と言ったライバルともぶつかりながら、「777☆SISTERS」はその真っ直ぐさと『誰かの背中を押したい』という想いでだんだんファンを増やしていき、『アイドルは時代遅れ』の時代でめきめきと成長していきます。

こういう成長系の物語では、大抵『綺麗な場面』しか語られません。どんな困難でも、メンバーが団結し絆で乗り越えていく…みたいな綺麗事だけで、裏事情や複雑な大人の都合みたいなものは一切出てこない。しかしナナシスは違いました。

EPISODE4.0では、一気にスターダムへと駆け上がり人気グループとなった「777☆SISTERS」の前に「AXiS」というグループが登場します。「777☆SISTERS」にとって大仕事である大きな会場でのワンマンライブが開始。すると、突如会場内の電気や音楽が止まり天井が開きます。そこからゲリラ的に登場した「AXiS」は「777☆SISTERS」のライブを乗っ取り、観客の心を奪います。「AXiS」は伝説の「セブンスシスターズ」のメンバーと同じ声を持つ少女たちが集まっており、またこの登場も「セブンスシスターズ」が最初に出てきた時の演出(『セブンスストライク』と呼ばれている)と全く同じだったのです。観客たちや噂を聞きつけた世間は『伝説の再来だ!』と大騒ぎ。世間の関心は「777☆SISTERS」から「AXiS」へと大転換します。

この話のすごいところは、光の裏にある影を描いたところでした。まず「AXiS」のリーダー「天神ネロ」の姉はアイドルだったが、所属していたグループが上手くいかず(直接的に言うと、「777☆SISTERS」に負けた)、体調を崩し病床に伏していたという設定。売れずに日の目を見れない人達を描いたという部分でオタクをハッとさせます。さらに、世間が「AXiS」の存在により直ぐに手のひらを返したという部分。『AXiSの方がかっこいい』『新しい』と、「777☆SISTERS」を応援していた人まで目新しいものにすぐ目移りしている描写がされています。

このような裏事情みたいなものって、オタクが目を逸らし続けたものだと思うのです。売れている人やコンテンツを推している人は売れてないものには目を向けない。いくら口で1つのグループを『ずっと愛し続ける』と言っても、新しく出てきたものへと興味が移り、離れていってしまう。そういうエンターテインメントにおいては必ず無視できない世間の流動性を、ナナシスEPISODE4.0はハッキリ描いたのです。オタクが見ないふりをしてきたものを、真正面から突きつけたのです。

その後公開されたEPISODE0.7(時系列的には最初の方だが公開は4.0より後)やEPISODE6.0でもそのような裏事情が真正面から描かれています。

EPISODE0.7は「セブンスシスターズ」のエピソード。『セブンスストライク』から1年後、「セブンスシスターズ」が日本だけではなく世界各国から注目を浴びるようになった時期の話です。彼女たちは超人気アイドルとして君臨し頂点を極めますが、裏腹に望まない仕事をしなければならない状況にもありました。彼女たちのライブは商売道具として扱われ、本人たちの想いを完全に無視して大人たちの手の中だけで作られていくようになったのです。最初の想いを基に活動を続けられなくなった「セブンスシスターズ」は解散を決断する…という話なのですが、この0.7では『商業的に扱われるアイドル』がハッキリ描写され、「セブンスシスターズ」という真っ直ぐな光が大人の手によって消されていく様が描かれていました。

そして、EPISODEシリーズ完結編として公開されたEPISODE6.0。今度は「777☆SISTERS」の話に戻り、かつての「セブンスシスターズ」と同じようにアイドルの頂点を極め『アイドルは時代遅れ』の世の中を変えた「777☆SISTERS」に、Tokyo-7thに新設されるアリーナのこけら落とし公演のオファーが来るところから始まります。そして今回の敵は、「4U」「KARAKURI」といったライバルや「AXiS」という同じ立場の敵ではなく、『大人』『権力』でした。『誰かの背中を押す』を基に、大人に強要されたことではなくやりたいことをやっていた「777☆SISTERS」に、アイドルとは『客を楽しませるためにはやりたくないことも笑顔でやる』ことであると突きつけます。『やりたいことだけをやるなんて子どもだ、大人になれ』とも言います。それはかつて「セブンスシスターズ」がそうなったように『商業的に扱われるアイドル』をより露骨に描いたものでした。

アイドルのオタクもやっている自分には余りにも刺さりすぎて、このEPISODEを読んだ時に膝から崩れ落ちてしまいました。本当です。

4.0では世間の流動性が描かれましたが、0.7と6.0では商業的なアイドルが描かれました。つまり、アイドル(他芸能人やコンテンツ全て含めて)が『商品』として作られていることをオタクに知らしめました。売上が全てで、その為なら本人たちの意向など関係ない。こう書くと凄く悪いように聞こえますが、存続する上では必要不可欠なことなのです。活動する上では資本が必要で、資本がなければ続けられないし、ずっと赤字ならそれを続けていく必要がない。これはオタクが見ないふりをしてきたどうしようもない事実なのです。

ナナシスが描写したこれらの事実は、『推しもオタクも永遠ではない』ということです。

『推しは永遠ではない』ということはよく言われています。長年人気だったグループの解散とかの度に言われています。が、オタクは『オタクは永遠』だと夢を見ている。よく『一生○○のファン!』と言っている人を見かけますが、絶対にそんなことはないのです。いくら本人がそう思っても、です。なぜなら、人間とは流動する生き物だからです。飽きるし目に新しいものに目が映りがちである。だからこそエンターテインメントは動いているのです。

最後に、ナナシスはオタクの教科書にしたいくらい素晴らしいコンテンツなので、2次元アイドルに興味のない皆さんにもEPISODEだけでも読んで欲しいです。楽曲もめちゃめちゃいいのでぜひ。以上、長ったらしい布教でした。

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