南木隆助

様々なプロジェクトの企画や、空間系の設計をしています。時々和菓子の仕事もしています。n…

南木隆助

様々なプロジェクトの企画や、空間系の設計をしています。時々和菓子の仕事もしています。noteでは体験のデザインの方法論を中心に書いていきます。 https://twitter.com/NankiRyusuke

最近の記事

問いを設定する構想、答えを生むプロセス 【M+香港 ビジュアルアート部門リードキュレーター講演から】

(ご指摘をいただきタイトルを一部修正いたしました。失礼いたしました。) 近年、美術やデザインの力で、東アジア、特に中国、台湾、韓国の存在感を、日本でも強く感じることが増えてきた。10年以上前から、アジア各国に訪れるとビジネスの勢いやサービスを強く感じることは当然だったし、経済/ビジネスメディアを通じてその力を感じることは少なくなかった。しかし、この数年は日本の、それもデザインアワードの展覧会などでも、漢字やハングルを美しく活用したタイポグラフィーに出会ったり、街角で日本以外

    • スーパー地方公務員はデザインの使い方を知っている。

      近年地方のユニークな取り組みが、様々なニュースとして現れてきている。 例えばくまモンなどはその中でも有名な話で書籍にもまとまっている。 https://www.amazon.co.jp/dp/B00C6QFIE4/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1 この書籍の登場人もそうなのだが、いわゆるスーパー地方公務員と呼べる人がいる。通常の地方公務員の枠組みや仕組みを壊して、新しいことを仕掛ける。高い志を持って地方の人たちを巻き込

      • 世界最先端レストラン【INUA】の体験デザイン

        何度か仕事をしているクライアントであり、シェフである友人にINUA(イヌア)に連れていってもらった。INUAは何度か世界最高のレストランに選ばれているNOMA出身のシェフが、KADOKAWAの出資を受けて日本にオープンしたレストランだ。(前提として、この記事自体にグルメレビューとしての価値はあまりないと思う笑) 結論から言うと、すごく面白い体験だった。 すごく美味しかったというより、すごく面白かった、がしっくりくる。美味しかったのだけれど、それを語るときに、美味しさは一番前

        • 何者でもないデザイナーが助けてもらうべきは、「公共」だったりする。

          ちょっと新しい事や、面白いデザインを思いついた時に、すんなり自分だけの力だけでは全然太刀打ち出来ないことは多い。 憧れの有名デザイナーのインタビューなどをデザイン雑誌やその著書で読むと、そういう時には「若手時代の才能を認めて助けてくれるすごい人」というのがそれなりの頻度で現れる、でもそんな奇特な人は実際はほとんどいない。(だからインタビューがドラマチックになるのだ。) 自分が現実で「すごい人」に頼むと断られる事も多い。特に若いときはなおさらだ。その時はとても落ち込む。でも

        問いを設定する構想、答えを生むプロセス 【M+香港 ビジュアルアート部門リードキュレーター講演から】

          「枯れた技術の水平思考」というデザイン手法

          デザイナーとしての横井軍平  横井軍平という人がいる。横井さん(会ったことはないのだが、尊敬の念を込めて横井さんと呼びたい。)は任天堂のゲームの黎明期を支えたゲームクリエイターで、ゲームウォッチやゲームボーイを作った人だ。ゲームクリエイターという肩書きが生まれる前から、ゲームを作っていた。自分としては、横井さんは技術とコミュニケーションを活用した、いわゆるデザイナーだと思っている。 「枯れた技術の水平思考」  横井さんが提唱していたのが「枯れた技術の水平思考」だ。これは

          「枯れた技術の水平思考」というデザイン手法

          現象観察→抽象理解→具体実行のプロセス

          ゴールは「現象」であることが多い。 多くの場合、クライアントはデザイナーに対して「具体的な指示」はしないことが多い。例えば、最近いくつか店舗のプロジェクトに関わっているが、その時の依頼として多いのが「インスタ映えするお店にしてください」だ。このような依頼は現在それなりの数の、店舗、グラフィック、プロダクトのデザイナーが多少なりとも投げかけられているものではないかと推測する。 インスタ映えはあくまで結果的に人々が行う行動であり、あくまで「現象」なので、そこから直接的に色や形

          現象観察→抽象理解→具体実行のプロセス

          マーケットドリブンでデザインを考える。

           前に書いた「伝統産業こそ市場を変えて戦うべきかもしれない」という文章にありがたい反応をいただいた。マーケティングとデザインについて、自分のためにも、もう1つ事例を紹介しつつまとめておきたいと思う。 売り場の規模や製品の量でマーケットを認識する。  以前、和菓子の本を作ったことがあった。私たちが出そうとしていた本は、ある卓越した和菓子職人の作品集だった。しかし、当時大きな書店でも和菓子のコーナーは洋菓子のコーナーに比べて小さく、またそのほとんどが「家でもできるあんことお菓子

          マーケットドリブンでデザインを考える。

          伝統産業こそ、違う市場で戦いを挑むべきかもしれない。

           いろんな偶然が重なって、100年以上続く伝統産業のデザインの仕事をいくつかさせて頂いている。今回ありがたいことにその一つをとても褒めていただいた。褒めていただいたことでそのプロジェクトを改めて振り返った時に「伝統産業」に対するアプローチの一つとして、タイトルの様な、「市場を変える」ということが有効なのではと思い、まとめておきたいと思う。 バブル期の「伝統産業×著名デザイナー」の座組みが生み出した負の遺産  伝統産業の仕事をする時に、よく聞くのが 「昔、すごく有名なデザイ

          伝統産業こそ、違う市場で戦いを挑むべきかもしれない。

          罠っぽい仕事とチャンスの紙一重

           罠っぽい仕事の話というのは生きていると時々出会う。学生時代や仕事を始めたての頃はそんな話に巻き込まれて嫌な思いをする人も多い。やがて「罠っぽさ」に気づくようになるが、時に罠っぽさを自覚しながら、無理やりチャンスにできることもある。以下の話はおそらく多少なりともレアケースだと思うが、こういうこともあるということで参考になれば幸いだと思う。  数年前に、ヨーロッパの国立美術館で行なわれた日本美術界ではほぼ100%が知る日本を代表するアーティストの展覧会の企画と空間デザインをし

          罠っぽい仕事とチャンスの紙一重