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第13回牧水・短歌甲子園の歌

8/19・20と宮崎県日向市の第13回牧水・短歌甲子園に行ってきました。


一緒に行った長谷川さんと雨月さんが短評書かれてましたので、わたしも何首か引いておきたいと思います。


ざりざりと血が滲んでいる新学期 談笑って右足からだっけ/岩本菖
下の句の言い回しから、混乱している様子、過度の緊張が伝わってきます。気負いのつたわる歌。上の句の『血が滲んでいる』は心理的な描写だと取ったけれど、噛み締めた唇とか、具体的なところに落とし込んでも良いのかも。

競技会張り詰めた空気解けるとき六分間の普通計算終わる/黒木理那
最初資格試験かなと思ったんだけど、競技大会というのがあるんですね。空気解ける/普通計算終わる、の二つの動詞の重なりにかなり読みどころがある。議論の上でこういう破調をどう肯定するのか、ディベート形式では悩ましいところだと思いました。

三千年立派な兄と「競」っている隣の兄の足のとんがり/川上俊
漢字の成り立ちに注目した一首。観念先行ではあるけれど、このタイプの歌で議論が盛り上がるのは、双チームとても真摯に読み込んでいるのが分かる。下の句、「の」で読む対象を狭めていくところのバランス感。

♪〜(発車ベル)駆け出す子らが競り負けた イヤホン外し振り返した手/沖野七海
「♪〜(SEの説明)」って字幕放送の表記で、これを持ち込んだだけでもこの歌の功績がある。二句目以降は読者に負荷をかけないほうが初句を活かせるだろうか。

始発バス揉まれてゆらぐ足元にまだ真四角のスクールバッグ/児玉りの
主体とスクールバッグを切り離したことで一首が成立している。対比構造が分かりやすい/分かりやすすぎる、というところもディベートの上で難しくて、なので試合のやりとりがとてもよかったです。

◎短歌甲子園は初めて生で見たんだけど、これまでの蓄積…進め方のセオリーやチーム毎の工夫が色々伺われて良かったですね。参加チームもだし、運営サイドもノウハウが継承されてる感じがあってとても良かった。
◎朗詠とPR(味方チームの最初の評)については事前の練習や演出が担う部分が大きくて、各チーム相当工夫して仕上げてきてるな、という印象。対して、むしろ観客としてはその後のディスカッションの部分で良いやり取りが見られたら方が熱戦だなって思える。
…ので、朗詠やPRのパフォーマンス性の部分は、ジャッジとはまた別枠で評価してもいいのでは?ということを伊藤一彦さんとお話しました。ひょっとすると来年からパフォーマンス部門(仮)が出来るかもしれません。

牧水生家(ぼくすいせいか)バス停


自分が高校生の時に参加してたら、やり切ってそのまま短歌辞めてたんじゃないかな。そのくらい熱い戦いでした。


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