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まさに天国から地獄! R-1グランプリ2回戦で起きた不運な香盤表の話



皆さん、R-1グランプリに出場したことはありますか?


そもそも私芸人じゃないし……いやいや、R-1グランプリはアマチュアでも出られるんですよ。


僕は高校生3年生の時、初めてR-1グランプリに出場しました。


結果は一回戦敗退。


それからNSCに入り今まで毎年エントリーを欠かさず行ってきましたが、ほとんどが結果は振るわなかったのです。



そんな中2022年のエントリーで初めて2回戦に行くことが出来ました!



短い一歩だけど、ようやく良い結果が出た‼︎


しかし、そんな嬉しい報告があったその年でも僕の身には不運が舞い降りて来たのです。



初めて2回戦行けたのに?それ以外に何の不幸があるの?




以前、僕は某オーディションに行って爆コケした話を書かせてもらいました。


あの時は自分の準備不足や自らアンケートを送ってしまったことが原因ということもありました。



でも今回は、自分ではどうにも出来なかった!


準備だけでは何も変えられなかった。


これまたついてない、そんなR-1グランプリで起きた運悪エピソードについてお話しさせていただきます!



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目次


1. 自信ネタ完成
2. R-1 2022 一回戦本番
3. おい、嘘だろ⁉︎不運のグループ分け
4. 楽屋で凝視してくるガチ落語家さん
5. 挑んだ二回戦…果たして?



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【 1 .自信ネタ完成】




R-1グランプリにはアマチュア時代から毎年のように参戦している。


ただ結果は振るわずことごとく一回戦敗退。


今年こそは二回戦にいきたい!そうは思うものの、当時僕はコンビを組んでいてその一年ピンネタを磨いてきたかと言われれば正直首を縦には振れなかった。


予選にかけるネタも、オーディションライブでやったネタくらいしかなくとりあえずそれで結果出たらラッキーだなーくらいの甘い考えで一回戦当日を待っていた。




そんなある日のこと、急にネタのアイデアが降りてきた。


それは相方とネタ合わせ中の時のことだった。


ネタ合わせをしていた場所の周りには色々な建物が並び、その中で僕の目にはタワーマンションが入ってきた。


その時に何故そんな内容が浮かんだのかは忘れてしまったが、僕がふと「あ、どーも高級マンション亭オートロックです。」 と呟いた。


あれ、何やこのカンジ?ちょっと楽しいぞ?


何気なく呟いた居るはずもない想像上の落語家の名前大喜利に面白味を感じ、その後も「どーも〇〇亭〇〇です。」と本題であったはずの漫才の練習を忘れ、飽きるまで目につくもの全てを落語家に変えていった。


これはもしかしたら、遊びだけで済ませるにはもったいないのかもしれない。


そう思った僕は一回戦の約二週間前、急遽ネタをこちらの"想像落語家"にシフトチェンジすることを決意して、幻の落語家を演じるための小道具作りに取り掛かった。


元々用意していたネタよりも確実にこちらの方が勝機を感じての行動だった。


着物もドンキホーテに買いに行った。


どうせなら、自分が面白いと思ったものを披露したい。


そして、この直前での行動がその後身を結ぶこととなる。



【 2 .R-1 2022 一回戦本番】





迎えた予選当日、僕はコンビの片割れとは思えない程の量の小道具を抱えて予選会場へと向かっていた。


ネタを想像落語家に決めてから、この日まで何のライブもなかったので今日の一回戦が初出しとなってしまった。


本当に一発勝負、決めるしかない。


楽屋に案内されると早速準備に取り掛かり、大きな箱を組み立ててその中に小道具を入れ、最後僕がドンキで買った着物に着替えて準備は万端!


するとスタッフさんから「〇〇グループの方舞台袖スタンバイお願いします!」と声がかかり、いよいよ本番が近づいてきた。


袖には5、6人くらいの出場者が並んでおり、前列が少なくなるにつれて俄然緊張感が高まってきた。


ちゃんとウケるかな?


出番が近づくにつれて一番抱き始める心配事である。


……ただ、それと同時に僕には別の心配事が浮かんできた。





膀胱の限界である。




元々僕はものすごくトイレが近い。


バイト中もサボってると思われても仕方ないほどに高頻度でトイレに行く。


普段のライブでも出番3組ほど前には必ず一度トイレを済ませておくのだ。


ましてや今回は賞レースの予選。


普段のライブとは比べ物にならない程の緊張感。


ここでダメだったらまた一年待つことになるのだから。


刻一刻と出番が近づく…


ただそれと同時に僕の膀胱も限界に近づく。


もうこの状態で我慢しながらネタをするしかないのか。


ネタ中他のこと気になるの1番嫌やな。



気がつくと、もう自分の出番はこの次だという状況に迫っていた。


仕方ない、我慢しながら必死にやろう。




僕の一つ前出番の芸人さんがネタを終える。



……するとそこで何やらMCの方がスタンバイをしていた。



あれ?僕の出番ではないのか?

これはどうゆうことだ?



MCの方がスタッフさんの「それではお願いします。」の声と共に舞台上へ上がった。



そしてこう言い放った。



「それではここで10分間の換気のお時間となります。」




きたあああああー!!!!



願ってもないトイレチャンス!


この日僕はグループのトップバッターだった。


運も見方をしてネタ前にしっかりとトイレを済ませる事ができた。


良かったああ、これで安心してネタが出来る。


10分後、換気タイムが終了していよいよ自分の出番が回ってきた。


さっきよりも体が格段に楽である。


スタッフさんの声掛けと共に、いざ舞台上へ向かった。



正座で座り、後ろに小道具の入った箱を置いて想像上の落語家を羅列で紹介していく"想像落語家"を披露した。



「どーも、ナンジョウピアノです。よろしくお願いします。」



生意気にも、落語家さん風な入りでネタが始まった。



「今日は僕の想像上の落語家を紹介します。」



そしてどんどん僕の脳内で生まれた落語家を披露していく。



「どーも〇〇亭〇〇です。」



1発目……ウケなかった。


毎年感じていた、あの一回戦敗退の時の空気。でもまだ1発目、この後まだ強いのが残ってるはず。



2発目……ウケなかった。


この時点でやはり不安は大きくなってきた。


今年も…また…ダメか。



「チャカチャンチャンチャンチャンチャン……」


ほぼ直前で考えた口頭での三味線ブリッジ……その声も、少し小さくなってしまった。



そして3発目……少しだけウケた。


さっきの2発はウケなかったけど、まだ笑ってくれるチャンスがあるかもしれない。



迎えた4発目……大きな笑いが来た‼︎‼︎



これは今までの僕のR-1経験で味わったことのない程の笑いだった。


待て!まだ勝負は終わっていない!




続く5発目……4発目を超える笑いが来る‼︎‼︎




これはすごいぞ‼︎ 確実にお客さんが味方についてきてる!




「チャカ、チャンチャンチャンチャンチャンチャン‼︎‼︎‼︎」


ブリッジの声も自然と大きくなっていた。




最後6発目……





ウケた‼︎






明らかに感じた手応え!


こんなの初めてだった。


ネタを終え舞台からはけた後も興奮が止まらず、誰もいない楽屋で「これいってなかったら嘘やでぇ……」と呟いていた。


これほど楽しみに結果発表を待てる事がとても嬉しかった。


結果はその日の内にホームページで発表された‼︎‼︎




"本日の合格者以上〇〇名"










"ナンジョウピアノ"



よっしゃあああーーーー‼︎


歓喜のあまりついワンルームの部屋で叫んでしまった。


今まで落ちに落ち続けたが、初めて通過する事ができた一回戦の壁!


また、今日のウケ量で確実についたこの"想像落語家"というネタに対しての信頼。


これは二回戦も自信を持って披露できるぞ‼︎



この時の僕は確実に調子に乗っていたのだろう……


この思い上がった姿を神様はしっかりと見ていたのかもしれない。


数日後そんなコイツをある不運が襲うこととなる。


【 3 . おい、嘘だろ⁉︎不運のグループ分け】




一回戦から数日が経ち、僕はコンビのことよりもはやピンネタのことで頭がいっぱいになっていた。


次の二回戦、新しい落語家を足すのか、ましてやウケたこの状態のまま変えない方がいいのか、一回戦では前半ウケてなかったけど、それが逆に後半受けるキッカケになったのか?


そんなことを考えながら過ごしていると、R-1グランプリホームページにて二回戦の出場者グループ分けが発表された。


さて自分は何時ごろの出番になるんだろう?


ホームページからナンジョウピアノの文字を探す。すると5組程並んだ名前の中に自分の名前を見つけた。


あ、あったあった。〇〇グループか、なるほど。


二回戦のグループ分けが決まった。


ちゃんと一回戦と同じくらいウケるかな?




……しかしその数秒後!僕は別の大きな不安を抱えることとなる‼︎‼︎


ナンジョウピアノの文字を見つけた後、同じグループにいる他の出場者の名前にも目を向けた。





桂〇〇………?




……ガチの落語家おるやん。





なんと同じグループに本物の落語家さんらしき方の名前があったのだ。



もしものこともあるので、念のためその名前をGoogleで検索にかけてみた。





ちゃんと落語家だった。





流石に個人で"桂"名乗るヤツおらんか。



二回戦数日前に訪れたまさかの緊急事態‼︎


確かにR-1って落語の"R"やから、落語家さん出てくることなんて全然あったよな。


僕のネタは実際いるはずも無い想像上の落語家を披露するというネタである。


それなのに僕の前にガチの落語家さんが出てこられては困る‼︎‼︎


ただ、一回戦で手応えを感じている分このネタを今更変えられない‼︎


しかし、まだ希望はあった。


というのもR-1グランプリでは、ホームページで並んだ名前の通りの順番では無く、当日会場へ行くまでは出順が分からないのだ。


マジで、マジで頼むからこのガチ落語家さんよりも先の出番であってくれ‼︎‼︎


そう願うばかりだった。



【 4 .楽屋で凝視してくるガチ落語家さん】





迎えた二回戦当日。


この数日間、ネタをどのように改良するか?ということよりも、僕とガチ落語家さんの出順はどうなるんだ?ということばかり考えていた。


また今日も両脇に"ピン芸人です!"と言わんばかりの小道具を抱えて会場へ到着した。


受付を済ませて楽屋に案内されると、荷物を置きすぐさま今日の香盤表を確認した‼︎




………
………
桂〇〇
………
ナンジョウピアノ
………
………




なんでやねん




なんで2個後やねん!




直近すぎるやろ‼︎




僕の願いは虚しく、出番順はガチ落語家さんの後になってしまった……しかも2個後と不運に不運が重なってしまった。


ただ決まってしまったものは仕方ない。


早速ネタの準備に取り掛かった。


一回戦と同様、箱を組み立ててそこに小道具を入れ、更に最後着物を着用する……


すると、その様子を同じ楽屋にいたガチ落語家さんがめちゃくちゃ見られていた。


彼からするとライバルだと思ったのかもしれない。


コイツどこの一門や⁈……んでも、まあなんかデッカい箱2個あるし……小道具めっちゃ持ってきてるし……


準備が整った僕は楽屋で練習を始め、その場に正座した。




っっっやっぱりコイツも落語家なん⁉︎⁉︎




だいぶ混乱させてしまったかもしれない。


ただもしこの立ち回りで僕が落語始めたら完全に落語会追放やろ。委員会とかの人ら黙ってへんと思うで。


終始ガチ落語家さんの視線を感じながらも、舞台袖スタンバイの声が掛かるまで何度も楽屋で練習を繰り返した。



【 5 . 挑んだ二回戦…果たして?】





スタッフさんに案内され、僕は舞台袖にスタンバイしていた。


その2つ前にはガチ落語家さんが立っている。


どう考えてもこの2人近いって。


着物2人に挟まれたこの人も可哀想やって。


いつもはスタンバイ中、尿意を催す筈だったのに、今回ばかりは出順のことで頭いっぱいでそんなことを気にもかけていなかった。


そして、ガチ落語家さんの出番がくる。


二つ前なので袖からしっかりとネタが見えた。



"〇〇と〇〇、この二つの言葉イントネーションが同じですよね。〇〇と〇〇、〇〇と〇〇……"






めっちゃちゃんとしたネタしはるやん。


想像落語家出てくる前にガチ落語家のガチ話披露されてるやん。


こんなもんもう俺の立場無いやろ。


舞台袖で明らかに無くなっていく自信。


果たして、このネタは2回戦でも通用するのだろうか?



前の出場者の出番が終わりいざ二回戦、自分の出番が回ってきた。



「どーも、ナンジョウピアノです。お願いします。」


また一丁前に落語家風に挨拶をする。


この瞬間、心なしか一回戦よりも多く入っているはずのお客さんの拍手が少ない気がした。


まだそこだけでは何も分からない。


一回戦同様自信を持ってネタをどんどん披露していった。



「どーも〇〇亭〇〇です。」



1発目……ウケなかった。


ここの部分は一回戦と別のものを披露した。しかし、一発目は前もウケなかったのでまだなんの心配もしていなかった。




2発目……ウケなかった。 


こちらも新ネタを披露。勝ち進むにはここら辺ではウケ初めて欲しかったが、反応はもらえなかった。



3発目…………ウケなかった。


流石に少し焦り始めていた。一回戦ではここらで少しずつ尻上がりにウケていったのに。無反応はマズい。




ただ、まだ僕には希望があった。



なぜなら、次の4発目。ここで必ずデカい笑いが来るはず‼︎


そこに大きな自信があったのだ!


4発目、5発目、6発目を連続で大きな笑いで終われたら少しだけ可能性が広がるだろう‼︎


そんな気持ちを込めて披露した。





その4発目………………ウケなかった…!




もうこの時点で正直敗退は確定したようなものだった。



唯一聞こえてきた反応も「へへっ」くらいの笑いだった。




「チャカ、チャンチャンチャンチャン…」



ブリッジの声も終わりに近づくにつれて段々と小さくなっていった。




続く5発目6発目も全くウケず、しっかりと滑ってしまった。


お客さんからしたら「どーも〇〇亭〇〇です。」と言われても




何やそれ。


我々今さっきガチの落語家さんのガチ噺聞いたところやねん。



その後に「想像上の落語家紹介します。」言われても…


そんな奴おらんこと知ってるねん。





てな感じで思われていたかもしれない。



出番が終わり、一回戦とは一変肩を落とし敗退を確信してその場を後にした。


その夜ホームページで結果を確認したところ、案の定"ナンジョウピアノ"の文字はどこにもなかった。



こうして僕のR-1グランプリ2022は一回戦で最高の気分を味わった後、すぐさま二回戦で絶望するという短期間で感情が忙しいまま幕を閉じることとなった。




































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