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南城美術館 | 全てがアートに、誰もがアーティストに - 日本最南端の美術館


日本最南端にある美術館・南城美術館。
 
南城美術館は、アートを生活から離れたものでなく「アートは生活の中に存在する」という理念のもと、「情景型美術館」として訪れる人びとを癒しています。
 
今回は、南城美術館で活躍するアーティストたちと、そのストーリーをご紹介します。
南城美術館にこだわりのアートを集めたオーナーとアーティストたちの出会いを含めたストーリーを読めば、あなたもきっと実物を見たくなるはず。
南城美術館に訪れた際は、ぜひ彼らの作品を探してみてくださいね。
 
理念の元は、オーナーの熱い想い。
「アートは生活の中に」という理念の奥底に眠るのは、南城美術館のオーナーの熱い思い。
オーナーがアートに初めて触れたのは、数十年前のフランス。元々「アートが生活を豊かにする」「アートを家に飾る」という概念を持っていなかったオーナーが、フランスで訪れた家のアートに感激した出来事が、南城美術館の本当の第一歩でした。
 
アートで国境や言葉関係なく癒やされ、家での生活が豊かになる。その衝撃から、オーナー自身の家を美術館風に改造。
駆け出しのアーティストの作品を飾り、来客にアートの素晴らしさを宣伝することで、アーティストの支援活動にも繋げました。
 
オーナーが長年をかけてアートに触れた結果行き着いた考えが、「一つのことにこだわりを持って活動していれば、アーティストである」こと。
そんな考えを反映したのが南城美術館なのです。
 
南城美術館で活躍しているアーティストたちは、オーナー自身が声をかけた「達人」アーティストたち。彼らが一丸となって築き上げた空間は、まさにアートそのものです。
 
 アーティスト紹介 ① | 新垣光雄(あらかき みつお)さん
沖縄出身|シーサー職人
 
親子三代にわたって作陶を続けている那覇市の窯元「やちむん家」。新垣氏は、やちむん家でこだわりのシーサーを作り続ける傍ら、四代目となる息子や弟子にシーサー作りを教えています。
新垣氏の龍は京都府清水寺に飾られていることからも、腕の確かさが伺えます。
 
オーナーと新垣さんの作品の出会いは、実に運命的でした。
オーナーが住んでいた沖縄のマンションにあったシーサーが、実は新垣の作品だったのです。一味違ったシーサーに感銘を受けたオーナーは、新垣さんに会いに「読谷(よみたん)」という焼き物の村に出かけます。
新垣さんの工房はナビに出てこず困り果てていたところ、突如現れた龍。その龍の作品を見て、オーナーは一目で新垣さんの作品とわかったそう。
 
そこから新垣さんとオーナーは親睦を深め、南城美術館は新垣さんのシーサーに守られています。


南城美術館のシーサー。新垣さんは、シーサーは中国の影響を受けているとの考えから、中国風の要素を取り入れている。
右側のシーサー(オス)は大きな玉を手に持っており、威厳と出世を表す。胸元の鈴は魔除けを意味する。

右側のメスのシーサーは子どもと一緒に台座に。3頭セットになっているシーサーは沖縄で唯一。
 
メスと子のシーサーは、教育と継承の意味を表します。
南城美術館は西大学院の跡地として、昔の伝統や建物、文化を継承して今の形となり、さらにそれらを未来へ紡いでいます。伝統を重んじる美術館の思いと一致する作品です。
 
アーティスト紹介② | 上原勇俊(うえはら ゆうしゅん)さん
沖縄出身 | 庭職人
 
南城美術館で優雅に揺れるココナツの木。
このココナツの木を植えた上原さんは、南城美術館のあらゆる空間をデザイン・管理しています。
 
オーナーは日本庭園が大好きで、上原さんに最初に依頼したのも日本風の庭園。
しかし沖縄では典型的な日本庭園は一般的でなく、参考資料を集めながらの作品作りとなりました。
 
上原さんの日本庭園は、実に「沖縄に馴染む」日本庭園。
例えば日本庭園に使われる竹は、風が強く年中暑い沖縄には適しておらず、代わりになる木や植物を試行錯誤しながら探しました。
 
今では上原さんの日本庭園は大変な人気があり、沖縄内の一般家庭からも受注があるほど。
 
南城美術館では、上原さんは庭園だけでなくあらゆる空間を手がけています。
細かい依頼をするのではなく、イメージを伝えて、一緒に作り上げる空間。美術館の至るところで上原さんのこだわりを感じることができます。
 

日本庭園にある滝。
周りを取り囲む植物から岩まで、上原さんの作品への想いが詰まっています。
 
 
アーティスト紹介③ | SCHEME LIVING (スキーム リヴィング)
沖縄出身|グラフィティアーティスト & シーサー職人
 
高校からグラフィティアートを始めたSCHEME LIVING氏。2022年時点で29歳の若手アーティストです。
 
東京で2年間勉強した後、故郷の沖縄に戻ってきてアーティスト活動を開始。インディーズバンドのCDジャケットデザインや、飲食店のインテリアデザインなどジャンルを選ばず様々な場面で活躍しています。
 
グラフィティ活動をする傍ら、グラフィティと沖縄文化(シーサー)を融合したい、という思いから、シーサー職人の新垣さんに弟子入り中。
 
南城美術館では、ステンドグラス風の壁をデザインしています。
沖縄とグラフィティの融合を目指し、南城美術館に新しい風をもたらすアーティストです。

S.L氏が手がけた壁。一つ一つの枠で個性を表現しながらも、周りと溶け合い馴染んでいる様子を表現。
S.L氏は自閉症と共に生きており、同じく自閉症の人が見たときに幸せになる作品を作りたい、という思いで一つ一つの作品に幸せを表す要素を織り込んでいる。沖縄伝統のお守り「サン結び」や四葉のクローバーなど、幸せを運ぶ象徴が作品の至るところに散りばめられている。
 
 
アーティスト紹介④ | 吉田貞夫(よしだ さだお)さん
沖縄出身 | 農家(元大工)
 
吉田さんは息子さんとマンゴー農園を管理する傍ら、素晴らしい職人でもあります。
 
実は沖縄には画材屋が少なく、美術学校の付近に少し店舗があるだけ。
そして美術館の様々な作品には、ぴったりと当てはまる市販の枠や土台はありません。吉田さんは一つ一つの作品に馴染む額縁や展示台、木枠をデザインしてくれるのです。
 
素晴らしい作品と、吉田さんの心のこもった額縁や土台が組み合わさることで、さらに見応えがあるこだわり満載の作品が出来上がります。

美術作品に直接関するものだけでなく、例えば美しい海を見渡せるデッキや、台風時の対策まで手がけてくれる吉田さん。
その仕上がりとこだわりはまさに職人技です。
 
吉田さんは実は三線や歌も上手。多面的なアーティストです。
 

三線を演奏する吉田さん
 
アーティスト紹介⑤ | ヒロさん(与那覇博晃 よなは ひろあき)
沖縄出身 | 三線演奏者(介護・農家)
 
ヒロさんの本職は介護職と農家。
しかし、南城美術館でのイベントがあると、ヒロさんは素敵な三線演奏者へ早変わり。歌も上手で、南城美術館に優美な空間をもたらします。
 
ヒロさんのお子さん(eventplanninglee代表比嘉利加さん)はとてもアクティブ!個性や、特技を生かし、多様な方の活躍する場を創るイベントプランナーとして活躍中。
親子2人で、南城美術館のみならず、様々な場面で心地よい歌声・コミュニティーの場
を、提供しています。
 
ヒロさんは、南城市で野菜も作っています。野菜を通してたくさんの人を喜ばせたいと語る。ヒロさんの野菜たちはいつもヒロさんの音色を聴いて育っています。

イベントでパフォーマンスを披露しているヒロさん
 
 
 
南城美術館では、今回紹介したアーティストの他にもさまざまな魅力的なアーティストの作品を展示しています。
 
また、南城美術館の魅力の一つは絶好のロケーション。太平洋が見渡せるだけでなく、美術館から車で5分走れば、世界遺産の斎場御嶽を訪れることができます。
 
オーナーが心からの思いとこだわりを持って作り上げた、空間全体を楽しめる、そして絶好のロケーションに位置する南城美術館は、日常を忘れて癒される心地よいアート空間。
沖縄に訪れる際はぜひお立ち寄りください。
 

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