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【ナニWAA! 第22回セッション】レポート

〇開催日時
2022年5月20日(金)19:30~21:30

〇テーマ“行ける場所ではなく、行きたい場所に行く!~誰もひとりぼっちにさせない/ユニバーサルツーリズムのファーストペンギンに~

〇登壇者 櫻井 純(さくらい じゅん)さん
1987年生まれ、20代で突然複数の神経難病を発症。入退院を繰り返しながら、病気や障害と向き合う方にも「人の優しさや心が癒される景色を、大事な人と共有してほしい」との想いで2016年『櫻スタートラベル』起業。治療と仕事の両立を目指しながら、旅を通じて当事者の日常生活や社会課題に向き合い寄り添う。2019年、2020年「ジャパン・ツーリズム・アワード 受賞(ユニバーサルツーリズム)」連続受賞。SDGs推進室、失語症者向け意思疎通支援者として介護福祉分野で支援活動を行う。
趣味は人の幸せと猫と遊ぶこと。

〇モデレーター 櫻井 宏美(さくらい ひろみ)
ナニWAA!メンバー。
とある薬局の薬学生さんの新卒採用担当。ポンポンでみんなを応援する活動に邁進中!  

皆さま
こんにちは。遅くなりましたが、5月セッションのレポートをお届けします!5月のナニWAA!セッションは、複数の神経難病を抱えながら、障害がある方もない方にもオーダーメイドの旅行を企画する「櫻スタートラベル合同会社」の代表・櫻井純さんをお迎えしました。

櫻井さんはこの日のセッションのために治療を合わせ、体調を整えてご登壇くださいました。その過程を全く感じさせない、温かく柔らかでチャーミングが語りに、とても穏やかなひと時を過ごせました(^^♪

【櫻井純さんの自己紹介ストーリー】

櫻スタートラベル合同会社代表。2014年に突然倒れ、仕事や人間関係を絶たれたのが、2016年に起業したきっかけとなりました。その間の2年間は入退院を繰り返していて、自身の闘病生活の経験から社会参加と自立を目指した活動を行っています。
旅行業のかたわら、旅行関連等のサービス業の学校での講師や障害でコミュニケーションが難しい方の意思疎通の支援、ユニバーサルデザインに関するアドバイス、地元のお米のネット販売の名ポートなどを行ってます。ジャパンツーリズムアワードのビジネス部門で2019年は海外部門、2020年は国内部門、ユニバーサルツーリズムで入賞。

難病と向き合うこと
櫻井さんは国の指定難病を2つ(神経系と遺伝系)抱えています。1つはゆっくりと筋力が低下する病気、もう1つは年数を経ると手足がやせ細り、骨だけになってしまう病気です。1年のうち120日が治療やリハビリに費やす日々を送っています。

初めて聞く難病を申告された時、どう向き合えばいいのか思い悩んだ結果、引きこもりになってしまったそう。人に見られたくないし、歩けない、寝たきりは恥ずかしい、と全く外に出なかったそうです。が、ある日をきっかけに外に出ることに・・・。

夏場に退院していた時に花火大会があったそうです。夕方に花火が打ちあがっている音が聞こえてきた時に、病気をする前から親交があった地域の方から1本の電話がかかってきました。

「花火が上がってるから出てこないか」

最初は全く出ていく気がなかったのですが、電話をくれた方が直接家までむかえにきてしまったため、櫻井さんは恐る恐る外に出てみることにしました。その際に地域の人が「元気にしてたか」「心配してたんだよ」と声をかけてくださったそうで、自分の取り越し苦労だったことに気づかれ、周りの方の温かい対応に感動し、それがきっかけで、入退院も繰り返しながらも少しずつ外へ出ていくようになったそうです。

起業のきっかけは「会える時に会いたい人に会いに行った」こと
病気が進行したら動けなくなる。であれば一番遠い距離にいる人に会いに行こうと、新卒で旅行会社に入社した時に初めて作った最初のツアーコース・鹿児島県の甑島(こしきじま)へ旅行に出られました。バリアフリーの概念がまだあまりない離島でしたが、「櫻井さんが来るから助けに行って」との島の方の一言で、常に誰かが助けてくれて島めぐりをできました。病気が進行したら歩けなくなること島の人に話したところ、「担いであげるからまたおいで」と、温かい言葉をかけていただき、涙されたそうです。人の優しさや心が癒される景色を大事な人と共有してほしい。病気で外に行けない仲間にもこの景色を見せてあげたという想いから旅行会社をつくってみようと思うよになりました。そして、島に行った2.3週間後に次の入院が決まっていたそうですが、いろんな人に協力してもらって、3週間で無事に起業できたそうです。

「櫻スタートラベル」の由来はその甑島は明かりが無いので星空がとてもきれいだったこと、そして入院中に病室から見た桜を、同じ病気を持つ仲間と実際に観に行くことができたことからつけられました。

櫻井さんが起業当時から目指していることは
・障害のある方もない方も楽しめるよう当事者目線から外出をサポート
・病室にいても病者や障害者がPC1つで就労継続可能な働き方の構築
・難病障害当事者の私たちがもっと外に出て人と触れあう機会を増やし、相互理解と交流の機会を作る。
です。

起業当時の日常的な働き方
日中は血液を交換したり、検査をしたり夕方まで治療を行い、就寝時間は22時ですが夕食後、こっそりと夜中にPCを使って旅行手配、それを病室に持ち込んだプリンターでチケットを印刷し、封筒に入れて病院前のポストに投函・・・これが創業当時の活動の仕方だったそうです。
入院中くらい休んだらいいじゃないか、と言われることもありましたが、現実問題として、櫻井さんは20代で発症したため、長く闘病するためには働かないと自分の医療が確保できないと言います。自分が元気で自立して楽しく社会で生活することによって、息子は頑張ってるゾ!という気持ちをご家族に伝えたい気持ちも病室で働く原動力になったそうです。

“バリアフリー”の問題とは
櫻井さんの活動の1つにユニバーサルデザインに関する調査・アドバイスがありますが、櫻井さんにとってのバリアフリーの問題点は、バリアフリーという言葉、概念。世の中はバリアフリー、ユニバーサルツーリズム、インクルーシブなど「障害の方に配慮していますよ」、というイメージとか言葉が先行していると櫻井さんは感じています。
病室はバリアフリーになっているとしても、例えば手すりが右側にあったとして、病室にいる人が右手が麻痺していたら手すりをつかめない。これでは手すりがあってもバリアフリーではありません。相手の気持ちになってその人が求めていることを考え、配慮する気持ちが大事だということ。そして櫻井さんは配慮してもらうばかりではなく、自分たちもちゃんと伝える。そこが一番大事なポイントだと言います。

行ける場所ではなく、行きたい場所へ行けたらいいな
2019年、櫻井さんは車椅子で仲間と一緒にエアーズロックを登りました。「トラベルフォアード」という支援団体の協力を得て、六甲山で登山の練習をしり、事前準備を万全に行われたそうです。砂漠地帯では熱された熱い砂で車椅子の車輪のゴムが解けたり、ボロボロになったりしましたが、登りたいという強い覚悟と危険なことをしっかりと理解することで、仲間と助け合いながら登りました。エアーズロックは強風だと入山ができません。強風で2日入れまかったそうでしたが、奇跡的に3日目に登山道が空いて挑戦することができました。帽子や荷物が吹き飛ばされるほどの突風だったので7合目ぐらいまでしか登れなかったのですが、無茶せずに帰ってきてこうして無事にいられるのは仲間のお陰だと感謝されていました。明かりが全くないエアーズロックで南十字星が見える夜空を皆と寝転がってみることができたのが一番の思い出だそうです。

このエアーズロック登頂に参加された方の中から「配慮が必要な仲間をどこかへ連れていきたい」という声が上がり、それが「失語症者とともに創る白浜団体バスツアー」につながりました。ここではTeamWAA!でも大変なじみ深い和歌山県白浜町にあるホテルシーモアにお世話になったそうです。車椅子の方、失語症の方、いろんな障害を持った方が一度に泊まれる旅館やホテルがどこにもありませんでした。櫻井さんは、旅行実現に至るまでの半年の間、現地の下見をされたり、この方はこういう配慮が必要です、この方は部屋を出てしまうと迷ってしまって戻ることができません・・・など細かい部屋の配置など交渉をホテルの担当者と重ねられました。

その交渉の中で車いす用のトイレの目印がインテリアで隠れていたり、女性用の車いす用のトイレが夜中には使えないことを見つけられ、ホテルに伝え、ホテルも人の配置や動線を配慮してくださったそうです。旅行前に、旅の目標を描いたイラストがありました。シーモアで海を眺めながら車いすや杖を脇に置いて足湯に足をつけてボーっと夕陽を眺めたい、というイラスト通りに、みんなで実現できて良かったなあとしみじみ思われたそうです。今でもシーモアに行くたびにスタッフの方はこの時のことを覚えてくださっていて、旅行後、社員教育で配慮が必要な方の事を大事にされていたり、コロナ禍であっても障害者雇用を促進されているそうです。

白浜旅行で参加者が一番楽しかったこと。それは、みんなで眺めた夕陽よりも、「部屋飲み」だったという事実に驚いたそうです。誰かと旅行に行ったら、部屋で飲んだりお菓子を食べたりおしゃべりをするというは当たり前のこと。でも、配慮が必要な方は誰かと旅行に行くこともなければ、ワイワイと夜中まで部屋で一緒に行った人と時間を共有すること自体が初めての経験です。それぐらい、配慮が必要な人にとって旅行が遠い存在だったのか、難しいのかということにあらためて気づかされたそうです。

「合理的な配慮」は「寄り添うこと」
櫻井さんが旅行から得た知識でぜひ皆さんにご紹介したいのは、配慮が必要な方が外へ出た場面、仕事の場面で日常の中でも配慮ができることは特別な技術・知識が無くてもたくさんあるということ。
「障害者差別解消法」の法令の改正により“合理的な配慮“というものが努力義務から義務化されました。今までは「ちょっと配慮を考えないといけないですよ、でもできなくてもいい」という感じだったものが、「ちゃんとその方に対して必要な配慮を考えましょう」と法令改正されました。

合理的配慮の提供というのはバリアを取り除くために負担が重すぎない範囲で対応することです。負担が重すぎない範囲で、と言うのは、聴覚障害の方は筆談をして書いて見せたりとか、代替手段を使うことによって手話ができなかったとしても配慮が必要な方とコミュニケーションが取れるように方法を考るということを誰でもできることを言います。

合理的な配慮ができない時は、それを絶対しないといけないという訳ではなく、なぜそれが難しいのかというのを別のやり方や方法を考えたり、話し合って理解を得るということが大事です。例えばお店の入り口に段差があり、車椅子で入れない場合、段差をなくすために大掛かりな工事をするのではなく、店員さんが「一段あるのでお手伝いしますね」と声をかけ、対応の方法を当事者が意見交換して対話をすることによって解消するのが合理的配慮のポイントだと、櫻井さんは言います。

合理的配慮は特殊な技能、知識がなくても誰にでもできることです。「言葉の持つイメージが固すぎるのでは?」という問いに、櫻井さんは「合理的配慮は“寄り添い”と言い換えられます」とお話しくださいました。
 
行きたい場所に 行けるうちに
会いたい人に 会えるうちに
やりたいことが できるうちに

誰かの事を思いやって、尊重して、応援する。元気なうちにいろんなことを体験させていただきたいです。と、おっしゃった櫻井さん。前向きで優しさに溢れた方だと心から応援したくなりました!

もし、皆さんの中で、急がない旅行をお考えの方がいらっしゃれば、ぜひ「櫻スタートラベル」へ手配をよろしくお願いいたします!

さくちゃんFB https://www.facebook.com/jun.sakurai.980
櫻スタートラベルLINE ID sakurastartravel
櫻スタートラベルHP https://www.sakurastartravel.com


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