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【ネタバレ有り】『君のクイズ』が面白すぎて感動した

 『君のクイズ』という小説を読んだ。めちゃくちゃ面白かった。この小説は随分前から各所で話題になっていたから、「何をいまさら…」と思う人は多いだろう。それでも、こうして自分の感想を文字に起こしたくなるほど、この小説は面白かったのだ。そうしないと、小説にしろ、映画にしろ、次に出会う「物語」に上手く入り込めない気がする。自分なりに何とか消化したいと思った。

 僕は普段、本はあまり読まない。月に3冊ぐらいだろうか。だから、本を読むスピードは遅いほうだ。しかし『君のクイズ』は数時間で読めた。ページ数がそれほど多くないのもあるが、文章が平易で論理的で、何より面白かった。だからページを繰る手が止まらなかった。クイズプレイヤーの世界が面白いのはもちろん、クイズというものを通して、三島と本庄の人生の輪郭が明瞭になってくる。その展開に引き込まれた。

 「純粋な面白さ」に感動したのはいつ以来だろうか。小学生の頃、僕はゲームに熱中していた。それから今に至るまで、あれほど何かに没頭した経験はパッとは思い出せない。ただ、『君のクイズ』はゲームに没頭していた小学生の時の自分を思い出させてくれた。「お風呂に入らなきゃ…」「そろそろ寝なきゃ…」「いや、でも今はこれをやりたいんだ」人をそういう状態にさせるものは中々ないと思っている。

 本作を読むと、何かを知っていることとその人の人生との、密接な関係が見えてくる。「何かを知っている」ということには、それを知った経緯、その時の状況や感情などが含まれており、そういった様々な文脈があって「それ」が知識として定着する。そして、定着した知識は、他の知識と結びついていき、知識のネットワークが出来上がっていく。他者のネットワークが見えるにつれて、その人の人間性も見えてくる。目の前の相手が「知っていること」には、その人が今までどんな体験をし、どのように心が動き、その結果何を思い考えたのか、ということが含まれている。

 本庄にとって、クイズはビジネスのために利用価値のある「手段」だった。しかし、それだけとは思えない。三島の目を通して、クイズを通して、僕は本庄という人間の確かな一端を見た。「クイズとは人生である」という三島の答えを読んだとき、「正解であってくれ…!」と僕は両手を合わせ、握りしめた。

 余談だが、『君のクイズ』を読んでいる間、本庄絆は終始僕の脳内で河野玄斗が演じていた。同じような人は結構いるのでは?とひそかに考えている。ちなみに三島玲央のイメージは定まらず、「さんまの東大方程式」に出演していた大津君だったり、伊沢拓司だったりした。

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