2024年上半期に読んで印象深かった小説なんかをご紹介
上半期読んで印象深かった小説なんかをご紹介とさせてもらっているのは、エッセイも含めたからです。小説・随筆・詩歌なんかをまとめて一般的には文芸書というような気がしますが、定義が間違っていたら良くないのでこういったタイトルにしています。
上半期で印象深かった本を10冊ほど印象順に並べてみました。一番はなんといっても万城目 学著『八月の御所グラウンド』です。下にも書いてますが物語の破壊力をいやというほど感じることが出来ます。題材に何の思入れもない、比較的共感力の低い私が泣いちゃうんだから題材に思入れのある人や共感力の高い人は大泣きするんではないでしょうか。
次に印象深かったのは市川 沙央著『ハンチバック』です。これは題材と文章が非常に印象に残る小説でした。ただちょっと感想は難しいんですよね。色々な意味で。
浅倉 秋成著『家族解散まで千キロメートル』も印象に残った小説です。浅倉氏の新刊は『ショーハショーテン』を含めて出たら買うと決めているので、こちらも発売から比較的すぐに買ったんだったと思います。個人的には『六人の嘘つきな大学生』には及ばなかったのですが、楽しく読んでその後家族について考えることが出来ました。思うに家族という柵に囚われている人こそ読む価値のある本なんじゃないかと思います。私は比較的、柵がライトなのでそこまで刺さらなかったんじゃないかと。
万城目 学著『八月の御所グラウンド』
「十二月の都大路上下ル」と「八月の御所グラウンド」の2篇が入った本。
「十二月の都大路上下ル」も瑞々しい感情が描かれていて悪くなかったけど、表題作の「八月の御所グラウンド」は物語の破壊力というのが嫌というほどに出ている傑作と言えると思う。
私は京都に住んだこともないし、野球は好き嫌いで言うと嫌いな方なんだけど、気が付いたら物語に涙していた。
他人の気持ち、まして、生きた時代も違う他人の気持ちなんて分かりっこないし想像もできないわけだけど、この小説を読んでいるとある時代に生きたある特性を持った人達の感情に思いを馳せざるを得ない。
共感力が低い私がそうなんだから、この小説は誰にでも同じような心の動きをさせるんじゃないだろうか。ちょっと怖いぐらいにそういった力のある物語だ。
市川 沙央著『ハンチバック』
主人公の身体的特徴について書かれている部分は、ずっと真顔で読んでいた。
人間それぞれ勝手に、他人に役割を期待するもので、作中で田中は求められた通りには悪人ではないし、最後に物語に昇華して涅槃に達したんやっていう陳腐な流れは私が求めるものではなかったりする。まぁ、知らんけど。
浅倉 秋成著『家族解散まで千キロメートル』
以下にまとめました
永野著『僕はロックなんか聴いてきた〜ゴッホより普通にニルヴァーナが好き!〜』
逆張りしがちなので、J-POP全盛の時代に私は洋楽ばかり聴いていた。
そんな青春を送っていたので、この本でも取り上げられている、レッチリとか、ニルヴァーナとかU2、Blur、Korn、Limpなんかは、いやぁ、わかるわぁと膝を打ちながら読ませてもらった。
中でも、Sugar Rayについては膝打ち過ぎてちょっと痛かった。私のオールタイムベストを10枚入れるとしたら「14:59」か「Best of Sugar Ray」(When it's overが入ってる)は是非とも入れたい。長野さんが書かれているように丁度いいんですよね。聞いてて疲れないし、癒しを押し付けても来ない。Sugar Rayにそれを感じている人が他にいたってのが嬉しすぎて膝が無くなった。
まぁ、私は歌詞とか読まないので歌手が何言ってるのかはわかってないんですけどね。
この本には、永野さんのロックの定義がどのようなものかが表現されているのだと思うのですが、私はそのロックからは対極にいるような人間なので、だからこそ彼の語るロック(逸脱)に惹かれるところがあるのかもしれないなどと思った。
永野著『オルタナティブ』
誰しもここで永野さんが言うようなオルタナティブな部分というのは持ってるんじゃないかと思ったりしたけど、どうなんだろうなぁ。私が共感するところが多少あったからそう思ってるだけなのかもしれない。
前作、『僕はロックなんか聴いてきた 〜ゴッホより普通にニルヴァーナが好き!』では音楽の話が中心でしたが、今作は映画、自分語りと範囲が広がっています。カバーよりもコピーバンドの方が元のアーティストへのリスペクトがあるとか、本物を目指す偽物の可愛さみたいな話は結構興味深かったなぁ。
綾辻 行人著『Another エピソードS』
Another2001を読み始めたのですが、主人公が誰かよくわからなかったので、途中で止めてこちらを読みました。よくわかりましたし、おかげでanotherの世界観も思い出すことが出来ました。
個人的には好きなパターンのトリックでした。
綾辻 行人著『Another 2001』
違和感の出し方がお上手なので、読んでるときにはひっかかるけど、ストーリー展開の邪魔になるほどではなく、後でちゃんとあぁあの時の違和感はそれが原因やったんやと、納得できるというのが良いところだと思います。
十角館とかではそうは感じなかったのですが、Anotherでは同じように感じたのでこのシリーズの特徴なのかもしれないです。
前作を読んでいると、こうだと主人公(読者)がつらいだろうなという謎の視点から、色々見えてしまうところがあるのですが、もうひとひねり入っていて簡単には先が読めない作りになっていたのが良かったです。
2001年に高校生ということは鳴とかは同世代だったんだなぁなどと思ったりしつつ。
綾辻 行人著『十角館の殺人』
ネタバレしてから読んだので、何とも評価し辛い。
面白かったのだけど、心理描写とかトリックどちらもちょっと粗い感じがしてしまってどっちかに振り切った方が良かったのではないかと思ったりもした。
犯人の狙いが全然ハマらん感じはちょっと面白かった。
南波 永人著
『ピアノマン 『BLUE GIANT』雪祈の物語』
マンガ『BLUE GIANT』の第一部のバンドメンバーユキノリを主人公にした小説。花粉症の時期に読んだら鼻詰まってるのに、泣いてしまいかなり苦しかった。原作であるマンガ以上にマンガしているなぁなどと思う。
この長さ(小説一冊や、映画一本)で綺麗にまとめるのであれば、この展開がベターなんだけど、Blue Giant Explorer(9)までの長さ(コミック30巻)を使えるのであれば、マンガ版の展開も、厳しさや真摯さが出てていいんじゃないかと思ったりしました。
夕木 春央著『方舟』
まぁ、殺人が起るのでそりゃあそうなんですが、なんか寂しい話だなぁなどと思ったりしました。実際のところこういった限界状況に追い込まれると、寂しいシビアな選択が必要になるってことなのかもしれないですけどね。
2023年下半期に読んで印象深かった小説をご紹介
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