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2023年に読んで印象深かった本をご紹介

今年読んで印象深かった本を外の話」と「内の話」と言うジャンルに分けてご紹介します。何となく外:世界の認識に関わる話、内:自分自身の認識に関わる話と分けてみましたが、外の話を読んでたつもりが自分自身の見え方が変わったみたいな、内と外が混然一体になった本が自分の好物だったりします。小説なんかでも読み終わった後に世界の見え方がちょっと変わるようなものが高評価になりがちです。今日は小説以外を対象としています。小説はまた別途まとめたいと思います。


外の話

マルク・レビンソン著
『コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった 増補改訂版』

コンテナリゼーション万歳!!!
以前『誰が音楽をタダにした?』を読んだ時にも思いましたが、規格化というのはその産業を発展させるためには、必要でありつつ選定されなかった規格を担いだ会社には大きなダメージがあるので熱いなぁ。と思ったり。

荷役や沖仲仕、海運業界に胸やけしたり、マルコム・マクリーンの発想や行動に胸アツになったり。

海運コストの低下は日本の高度経済成長期にも影響あったんだろうなぁと自国のことを思ってみたり。

年始からずっと読んでいましたが、上記のように飽きずに読むことが出来ました。ただ、こんなに長く詳細に説明する必要あるか?と思わなくもない。でも、良書なのは間違いないですけどね。


荒木 健太郎著
『 もっとすごすぎる天気の図鑑 :空のふしぎがすべてわかる!』

児童書と侮るなかれ、内容はもちろんのこと写真がめっちゃいい、スーパーセルをはじめとした超巨大な雲とか、#霜活で見られるらしい超微細な結晶とか、それらの写真ボーっと見てるだけで超楽しい。

更に色々な現象の仕組みが解説されていて、目から鱗が落ちまくりました。赤い月の理由とか、雷鳴の理由、フェーン現象の仕組みや雲の数え方なんてのも興味深かったです。

中村 淳彦著『パパ活女子』

ふわっと世に出てきてしっかりと定義がない「パパ活」を、よく構造化して描けているなぁと感じました。この本では基本的には買い手である、おっさんの欲求からその構造を見ているのですが、そこから見たことによって、上手くいっているパターン、行ってないパターン(買い手が金額分のリターンを得ていないパターン、売り手が買い叩かれるパターン)などを綺麗に説明できている気がします。

ふわっとして定義がしっかりしていないものだけに、全く違う見方が出来る可能性もあったりするわけですが。

何を売っているのか把握していないパパ活女子の中に、この本を読んだ人が入れば売上めっちゃ上げられそうと思ったりしました。水商売でも、風俗でもなくパパ活に精を出すおっさんが何求めてるのかなんて、まぁまぁ自明なんじゃないのとは思うものの、私がおっさんだからこそ、そこが自明になってるだけなのかもしれないですが。

関係ないですが、この文脈で精を出すって言葉はややこしいですね。

佐藤 航陽著『世界2.0 : メタバースの歩き方と創り方』

ずっと積読にしてたんだけど、もっと早く読めばよかった。思った以上に面白い。

タイトルにもある世界の創り方というのは、自走するコミュニティを作るというのとほぼ同意で、評価社会という言葉がもてはやされたころに、コミュニティやらオンラインサロンの運営について書かれていた内容とよく似ているなぁと思ったけど、そういった本を読んでいないが、仕組みは作らなくてはならない人にとっては、図解してありしかも平易な文章で開設されているこの本は使えるんじゃないかと思った。メタバース関係ないけど。

また、メタバースの浸透によって、平野啓一郎氏の提唱した分人主義がさらに進むだろうというのは如何にもありそうで面白かった。本文ににも書かれているが他人からどう見られるかという認識の上に、自己があるのであればアバターや世界が変われば自己や、振る舞いが変わるのは当然で、それが当たり前になることで誰しもが分人を意識せざるを得なくなるんじゃないだろうか。

橘 玲著『世界はなぜ地獄になるのか』

キャンセルカルチャーや、ネットの炎上の背景を紹介することによって、平穏な人生を歩む一助になることを目指して書かれた本(多分)

インターネットによって誰でも発信できるようになったことと誰しもが自分らしく生きられる状態を目指す過程で、意見の対立が表面化したってのが現代なんじゃないかと思います。

現代は過去よりも、誰もが自分らしき生きられるよい状態(天国)でありながら、ある種の息苦しさや、本書でも紹介されているパク・ヨンミ氏が感じたような狂気(地獄)をはらんでいるので、この現状を「ユーディストピア(天国かつ地獄)」を呼ぶことに何ら反対はないです。

しかし、個人的には良い(ユートピア)や、悪い(ディストピア)は相対的なものなんじゃないかと思うので、いつの時代でも世界は、それなりにユーディストピアの状況にあったのではないかと思ったりもします。

この本読んだ後に、書かれているようなトピックについてネットに考えを開陳する気には到底ならないので感想が難しいですな。

高橋 勅徳著『大学教授がマッチングアプリに挑戦してみたら、経営学から経済学、マーケティングまで学べた件について。』

35歳の大学准教授のマッチングアプリ体験記に見せかけたビジネス教養本。経営学の戦略とか、行動経済学のちょっとした理論とかが、現代人にとって身近な(?)題材であるマッチングの運用戦略と絡めて書かれていて、すんなりと入ってくる。
『傲慢と善良』を読んでから婚活の市場原理に興味があったので、そういった意味でも面白く読むことが出来た。

内の話

ジル・チャン著『「静かな人」の戦略書』

私の場合ブクログにレビューを登録すると、Twitterに自動的に投稿されるようになっているのですが、投稿されたツイートに対して作者のジル・チャンさんと思われるアカウントからいいねされました。日本語でもエゴサされてるんだろうか、すごい。良い本だったので以下の記事に感想をまとめ直してみました。

谷川 祐基著
『賢さをつくる 頭はよくなる。よくなりたければ。』

何気なく読んでみた本ですが、思いの外面白かったため、以下にまとめてみました。

深井 龍之介著
『世界史を俯瞰して、思い込みから自分を解放する 歴史思考』

COTEN RADIOのパーソナリティ深井龍之介氏の著作です。以前からCOTEN RADIOでも語られていたような歴史を学ぶ有用性が分かり易くまとめられていたので、記事にしてみました。

深井 龍之介, 野村 高文著
『視点という教養(リベラルアーツ)世界の見方が変わる7つの対話』

視点を持てば持つほど生き易くなると思って本を読んでいる節があるので、こちらの本は非常に楽しく読むことが出来ました。
個人的には社会の中で起こる現象を構造的に捉える文化人類学、社会学や、我々の基本OSである西洋哲学とは別の方向から世界を捉える東洋哲学、科学から我々が世界をどう認識しているのかを探る脳科学辺りはさらに突っ込んで本を読んでみたいと感じました。

アニー・マーフィー・ポール著
『脳の外で考える――最新科学でわかった思考力を研ぎ澄ます技法』

事例なども結構紹介されていて内容がボリューミーだったので何とも感想がまとめ辛いんですが、本の後半2割が本やら論文が大量に並んだ注釈なので、やりはしないもののしたければ書かれている内容の検証が可能という点で信頼できる本なのではないかと思う。

脳トレとかをするよりも環境を整えたり、取り組み方を変える方が何倍も効果はありそうです。

今後は、内受容感覚を鍛えて、良いものはどんどん模倣して、抽象的なものは脳の外に出して、PCでは出来るだけ大きい画面を使って、体を動かしたりジェスチャーをしながら考え事をしたいと思います。

チームで協力してトランザクティブメモリーシステムを構築するのは難しそうなので、ラバーダックにでも話かけてやろうと思います。
ラバーダックは何も覚えてくれないので人の代替にはならないですが、一人で考えるよりは人に説明するためにアウトプットする点で優れていそうなので。


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