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合格電報・電話

私が学生の頃はまだ大学の合否を知らせるための「合格電報・電話」というものがありました。今はネットなどで合否が発表されるでしょうから需要はありませんね。

私も学生時代、「合格電報・電話」のボランティアをしたことがあります。申し込んでくれた受験生の合否を何度も何度も確認し、間違いのないように伝えなければなりません。

合格電報は文面が決まっていて、たとえば合格なら「ハルノソラトキハバタク」(春の空朱鷺はばたく)など、不合格なら「エチゴノユキフカシ」(越後の雪深し)など、大学によって特徴ある文面が用意されていました。

この時期、不合格を話題にするのもなんですが、不合格を伝えるのは正直辛かったです。電報で伝えるのはまだ良いのですが、電話で不合格を伝えるのは私にとってはちょっと覚悟が必要でした。

電話をかけるとたいていすぐに電話をとっていただけます。当時は固定電話でしたので、受験生が出る場合もあれば親御さんが出られる場合もありました。あまりにもビジネスライクにお伝えするのも冷たい気がしますし、かといってあまり感情を出すのも違うかなと思い、電話の前でしばらく躊躇していました。

しかし、たいていは予想していたのか、心づもりができていたのか、相手の反応は淡々としたものでした。心の中では「元気を出してください!」と言いたくても、私には何も言えませんでした。

反対に合格をお伝えするときは相手の反応が楽しみでした。喜びを素直に表す人もいれば、静かに喜びをかみしめるように受け答えしてくれる人もいます。私は合格をお伝えしているだけなのに、まるで合格も私のおかげのように感謝の言葉をかけてくださる親御さんもいました。「大学で待っています!」とお伝えできるのがうれしかったです。

受験シーズンの今頃になると「合格電報・電話」のことを思い出します。

私自身は「合格電報・電話」の申し込みをすっかりし忘れて、新聞に掲載される名前で合格を知りました。当時、地方紙である「埼玉新聞」には全国の国立大学の県内高校出身合格者全員の名前が高校名とともに掲載されました。朝、駅の売店まで新聞を買いに行って自分の名前を探しました。

高校受験の時も合格発表は自分で見に行かなかったので、学校の掲示板に張り出される合格発表を味わったことがありません。

受験生の皆さんはどうぞ体調に気をつけて、力を出し切れるようお祈りしています。

そして受験は大きなイベントかも知れませんが、人生のターニングポイントは決して受験だけではありません。希望の学校に合格してもできなくても、人生をよりよくする選択肢はこれからいくつもあるはずです。そういう意味では「これで人生のすべてが決まる」と自分を追い込む必要はありません。と、今なら言えます。

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