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1980年代後半の南国

帰国を前にして日本からの出向社員に対してなにか講演をしてほしいと頼まれています。何か準備をしなければと思いつつ、石油会社に入社してから今までの歩みや、南国との長い付き合い、そして南国での思い出などを振り返っています。

日本企業が初めて南国の石油開発に参画したのは1967年とのことですので、私がまだ幼かった頃です。そして現在私が所属している会社の前身が南国の石油開発に参画したのは約50年前のことです。私が入社したときには参画してからすでに15年近くたっていたということになります。

先輩に話をうかがうと、参画した50年前の南国は首都でも本当に何もない田舎町という感じだったそうです。当時の写真を見ると漁村に毛が生えたような感じに見えます。

私が南国に初めて来た1980年代後半には近代的な建物も多くみられ、高層ビルとまでは言いませんが、きれいなビルが建ち並ぶ立派な街になっていました。先輩たちからはずいぶん住みやすくなったものだと言われたものです。

ただ市街地はまだ狭く、少し郊外に行くとたちまち荒涼とした土地が広がっているような感じでした。

まだショッピングモールなどと呼べるものはなく、あか抜けないスーパーや怪しげな小売店が軒をつらねる市場があり、価格交渉をしないと買い物もできないような場面が多くありました。

娯楽も少なく、会社の単身寮に図書室やビデオルームがあり、休日などはそこで日本から送られてくる雑誌や本を読んだり映画などを見たりして過ごしたものです。

現在、たまに街の中を散歩しながら、当時の南国の面影を見つけては懐かしんでいます。最近入社してきた南国国民の若者たちは当然私が初めて南国に来た頃の街の姿を知らないので、当時の様子を教えてあげると驚かれるとともに、「おまえいったいいつから南国にいるんだよ」といった顔をされてしまいます。そんなとき、自分も年を取ったもんだと実感するとともに、南国の目覚ましい発展ぶりにあらためて驚かされます。

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