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岩石の濡れ性と油の回収 (油層を洗う?)

車の表面についた水滴が、ペタッと車体の表面にくっついたように流れたり、ころころ玉のように流れたりする様子を見たことがあるかと思います。

これは車体の表面の水に対する濡れ性の違いによるものです。車体の表面が水に対して濡れ性が強い (water wet) 場合は、水滴が平たく車体の表面にペタッとくっついたようになります。反対に車体の表面が油に対して濡れ性が強い (oil wet) 場合、水滴をはじきやすくなり、表面の水は、接地面積が小さく、丸く玉のように流れます。

あんまりやりたくないですが、これと反対に油を車体の表面に垂らすと、water wet な表面では油ははじかれやすく丸くなり、oil wet な表面では油がペタッと表面にくっついたようになります。

岩石の表面も岩石の種類やさまざまな条件によって濡れ性に違いがあります。また、岩石の表面が長く油に接していたか、水に接していたかによっても、水や油に対する濡れ性がだんだん変化してきます。

油が岩石の表面とくっつきやすい oil wet の場合、油の生産は難しくなります。例えば、油を生産するために周りから水を圧入して油を押し出して回収率を上げる水攻法という方法がありますが、油層の岩石が oil wet だと水が岩石の隙間 (孔隙) の油を効率よく押し出さず、孔隙内の岩石の表面に油を残したまま、水だけが岩石の隙間を通って、圧入井から生産性に流れて行ってしまう (water breakthrough) を起こしてしまいます。いずれ圧入した水ばかりが生産されるようになり、油層内の油をいつまでたってもうまく回収できないということになります。

そのような場合には、水だけではなくガスを圧入したり、岩石の表面の濡れ性を変化させる薬品を入れたりして、油の回収率を上げる試みをする場合もあります。

「油汚れになんとか ♪」と食器洗いのCMがありますが、まさに岩石の表面についた油汚れをきれいにしてあげるイメージです。あるいは衣類についた油汚れを落とすクリーニングのイメージでしょうか?

油層の中の孔隙の形やつながり方は複雑で、例えば油汚れに強い洗剤みたいなものを油層に圧入したとしても、油層内に残っている油とうまく接触してくれないと、油の回収率は上がりません。油の回収率を上げるためには、油の性質や、岩石表面の濡れ性を変えるための圧入流体の工夫はもちろん、孔隙の形やつながり方を理解して、効率よく油を押し出すように流体を圧入する工夫など、さまざまな研究が必要です。

そのために地下の油層を構成する岩石のサンプルをとってきて、油層と同じような温度や圧力状態にして、油層内にある流体と同じ油を岩石サンプルの中に満たして、さまざまな圧入流体を押し込んで、回収率を測定する試験なども行われます。

また、数十センチオーダーの岩石サンプルでテストしたことが、何百メートル、何キロメートルオーダーの実際の油層で通用するのか、フィールドでの実証試験も必要です。

油層内の油を100%回収することはできませんが、できるだけ取り残しを少なくするのも、石油を探すことと同様に大切な私たちの仕事です。

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