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英語が話せればいいってもんじゃない?陸上地震探査現場見学で学んだこと

入社して数年目に地震探査処理の研修でイギリスに3か月ほど滞在したとき、その研修の一環として、その会社が請け負っているアラブ首長国連邦 (UAE) の陸上地震探査収録現場を見学させてもらえることになりました。季節は冬、UAEの砂漠を訪れるには最高の季節です。

イギリスからアブダビに入り、アブダビ市内から地震探査会社の4WDでサウジアラビアとの国境に近いルブアルハリ砂漠の中の現場に向かいました。

GPSがまだ民間には普及していない時代の話です。3時間ほど舗装された幹線道路を走り、そこからおもむろに砂漠に入ると小旗の目印を頼りに砂漠のデューンを超えながら現場に向かいます。ルブアルハリ砂漠には大きなデューンが発達していて、デューンを超えるとたちまち幹線道路の気配を感じなくなります。

砂漠の運転になれた運転手でもたまにスタックして動けなくなるそうですが、小旗の目印にそって走っていれば、他の車に簡単に発見してもらえるのであまり深刻な事態にはならないとのことでした。反対にうっかり小旗の目印から外れたところでスタックしてしまうと発見が遅れる可能性があるということです。

砂漠に入って1時間ほどの迫力のデューンドライブを経て、現場に到着しました。到着したときはすでに夕暮れ時となり、現場の宿泊および地震探査収録の基地となるトレーラーハウスが煌々と明かりをともして並んでいました。

現場で私たちを案内してくださったのはトルコ人のベテランエンジニアでした。現場についてすこし落ち着いたところで夕食に誘われました。食堂用のトレーラーが準備されていましたが、外で焚火をしながら食事をすることにしました。冬のルブアルハリ砂漠はすこし肌寒いぐらいで、外で焚火を囲んで語り合うには最高の季節です。

UAEはイスラムの国ですが、驚いたことに現場にはビールも用意されていました。もちろんイスラム教徒は禁酒ですが、UAEはサウジアラビアほど厳しくはなく、イスラム教徒以外の外国人であれば飲酒も許されているとはいえ、まさか現場でビールが飲めるとは思いませんでした。

トルコ人のエンジニアは、ビールを飲みながら私たち若いエンジニアにいろいろと現場の経験などを話してくれました。

その中で特に印象に残っているのは、わたしが、英語を母国語とする人たちとのコミュニケーションが難しいという話をしたところ、「英語を話せるからといって多国籍の現場でうまく働けるというわけではない。いろいろな言語を母国語とする人たちと一緒に英語で仕事をするなら、一度話して通じないとき、英語でもいろいろな表現の仕方で相手がわかるように言い換えて伝えられることが重要なんだ。相手がわかるように言い換えられない人が本当に多いんだよ。このような人はたとえ英語が母国語でも、多国籍の現場には向いていない。国際的ではないということさ。お前が気にすることはないよ。」と励まされたことです。

わたしはずいぶんこの言葉に励まされました。英語の勉強をさぼる理由にはできませんが、英語を母国語とする人とも、わからなければ何度でも聞き直す勇気を持つことができました。

さすがにスコットランド出身のコントラクターのエンジニアや、ウェールズ出身の同僚とは、英語にすら聞こえないぐらいどうしても聞き取れなくて、言いたいことを紙に書いてもらったことは何度もありますが。。。

翌日からは砂漠の中で地震探査のレシーバーを設置する作業や、バイブロサイスと呼ばれる非爆薬震源により地震波を発生させる数台のトレーラー群の作業を見学させていただいたり、収録現場での簡易処理など説明していただいたり、充実した現場研修でした。


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