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頼りになる技術者。一人前の技術者とは?

南国の石油開発操業会社では、入社したばかりの新人技術者には約2年間の研修期間が与えられます。

会社にはManpower Development (人材開発) を統括するセクションがあり、各研修生の研修の進捗を把握し、研修生ばかりではなく、研修生の上司や研修生の担当メンターなどにも発破をかけています。

研修で目指すのは、研修が終わって正式に配属された後、必要に応じて上司や先輩からのサポートは受けるとしても、自分の専門に関して一人前の技術者として仕事ができることだと言います。

では一人前の技術者とはどういうことなのでしょう。

石油開発に携わっていると、生産現場でも、掘削現場でも、日々いろいろな問題に直面します。「井戸の生産量が突然減った」「急激に生産圧力が減退した」「生産する油に水が混じり始めた」「掘削中にツールが坑内でスタックした」「循環中の掘削泥水が突然地層内に飲み込まれた」などなど。

まずは問題を問題として把握できること。そして、その問題がどのような原因・理由で発生する可能性があるのか認識できることが非常に重要になります。

問題の原因・理由の可能性により、取りうる対策のオプションを考えます。原因を特定することが重要であれば、追加データや情報を要請することも必要です。

とにかく安全確保のための対処療法的な対応が必要なのか、時間には余裕があるが、原因を明確にして抜本的な対策が必要なのか優先度を見極める必要もあるでしょう。

社内プロセスを理解して、上司や関係者、関係部署への連絡、必要な手続き経て対策を合意し、実施する。対策の結果を評価することも必要です。

油層モデルや開発計画を作る部署では、モデルと実データとのギャップの把握など既存モデルの問題点を理解し、地質解釈や精度向上のためのデータ取得計画など、長期的視点での問題把握、課題設定なども必要となります。

わたしたちは「一人前の技術者」というと、何でも一人で問題を見つけ、原因を究明し、対策を立てて、問題を解決できる技術者を想像してしまいがちですが、実際にはそのようなことが求められているわけではないと思います。

石油開発の現場で起こる多くの問題や課題は、複合的で、たいてい一人でなんとかできるものではありません。

私の経験では、何か問題が起こった時、それを実データに基づいて問題として認識し、関係者に伝えられるか。原因が複数考えられるとき、自分の専門分野から考えられる可能性をできるだけ多く提示できるか。原因特定のためにどのようなデータを収集する必要があるのか提案できるか。自分の専門分野に応じて対策に必要な情報を提示できるか。これらをチーム内、関係者内で積極的にすばやく共有してくれる技術者が非常に頼りになると感じます。

そして、原因究明や対策のための技術がどこにあり、どこにアクセスすればその技術に精通した専門家やコントラクターのサポートが得られるか、常日頃から情報収集に励んでいる技術者は大変頼りになると感じます。

チームで解決するためにタイムリーに情報を提供できる技術者、そしてその情報が信頼できる技術者は、若手であろうとベテランであろうと非常に頼りにできます。

経験も重要ですが、常日頃の情報収集、事例研究、思考訓練、コミュニケーションが大切だと感じます。若手が、ベテランが、ということではありませんね。私も頼りにされる技術者となるよう日々精進していきたいと思います。

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