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南国のID カード事情

南国では日本のマイナンバーカードにあたるような ID カードが十年以上前から普及し始めました。居住ビザを取得した外国人に対しても発行されます。

銀行口座を開設するにも、車の免許を取るにも、アパートを借りるにも、車を買うにも、携帯のSIMカードを買うにも、水道、電気、ガスの契約にも何をするにもこのIDカードの提示が求められます。

コロナ禍のPCR検査結果も、ワクチン接種回数などもIDカードにタグ付けされて管理されます。それこそ健康保険証もID カードと連携され、最近では健康保険証の代わりにIDカードの提出が求められます。

日本と違うのは、郵便物の受け取りや宅配などの受け取りの際にも、まさに身分証明書として利用され、写真に撮られたり、カードリーダーで情報を読み取られたりしています。

他人のIDナンバーなど知ろうと思えばいくらでもチャンスがあるような状態です。オフィスビルなどの入館の際にはIDカードを預けてそれと引き換えに入館証が発行されるなど、IDカードが自分の手を離れて人の手に預けられることもしばしばです。

そして南国でもう一つ特徴的なのが、様々な情報や政府・民間のサービスがIDナンバーばかりではなく、携帯番号ともタグ付けされていることです。たいていIDカードの提示とセットで、携帯番号を聞かれます。

つまり、IDカードと同様に携帯番号なしではこの南国では生きていくのがほぼ不可能な世の中になっています。

オフィスビルの入館の際にIDカードを預けなければならないのに、ビルに入ってオフィスでの手続きにIDカードの提出を求められるという笑い話にもならない出来事が起こります。

かつての南国の混沌としたさまざまな手続きから考えると、現在はとてもシステマティックになりました。そして役所などに届けている様々な情報が一元管理されて、自分の登録情報もステータスも一つのサイトで確認できるのは、南国の行政システムに疎いわれわれ外国人にとってはむしろ安心感を感じることもあります。

しかし、その一方で、行政機関ばかりではなく、民間の銀行や、電話、電気、水道、ガス会社の情報や、学校、会社の情報、病歴などなどどんな情報でも集めようと思えば集められるし、細かな暮らしぶりまで知ろうと思えば知ることができるこれらの情報の管理や利用の実態は私たちにはなかなかわからないのは不安要素でもあります。

この国で生まれ、家族や友人とともにずっとこの国で暮していく人々にとって、そこまで自分の個人情報を自分の知らないところで管理される不安が無いのか知りたいところです。

なにしろ独裁国家や権威主義的国家にとっては政府が国民の情報を徹底管理できるツールを持つというのは非常にありがたいことでしょうから。

南国はIDシステムの導入に際して国民の声をどの程度聞いているのか分かりませんが、民主国家であれば、政権は国民の不安に丁寧に応えていく必要があると思います。

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