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海外赴任・出向

一口に海外赴任といっても、赴任先も海外支店・事務所、海外子会社、出資先会社出向、一人事務所から大人数・多国籍の環境など様々で、また、いろいろな立場で赴任される方がいると思います。

私の場合、海外赴任合計約20年のうちの90%は石油開発・生産のために設立された操業会社への技術専門家としての出向です。

現在働いている南国の操業会社は複数の油田・油層で生産・開発を行っているため、現場でも多くの人が働いていて、従業員の総勢は数千人規模となります。従業員は多国籍で、雇用タイプも様々で、操業会社の直接雇用、派遣会社からの派遣、私と同様、権益を持つ石油会社からの出向社員などがいます。日本人の出向者は1%未満です。

海外赴任は大きな環境変化です。赴任に際しては、会社の期待に応えられるか、責任を全うできるか、上司・同僚とのコミュニケーションがうまくとれるか、自分の専門が通用するかなど、様々な不安がよぎります。

私自身もいろいろ苦労もありましたし、他の日本人出向者の苦労も見てきました。人によって赴任に対する考え方や、赴任先での仕事の仕方など様々な考え方があると思います。

ただ、私の経験からは、一番大切なことは上司や同僚との信頼関係を築いていくことだと思っています。

それは小さなことでも、引き受けた仕事は真摯に丁寧に応える。時間は守る。必要な情報はシェアする、報告する、相談する。相談されたら丁寧に応える。時にはまわりの無理も聞いてあげる。年齢や経験にかかわらず、相手をリスペクトする。
こんなことを意識することによって、お互いの信頼関係が生まれ、私もいろいろ上司や同僚、さらに若手にも助けてもらいました。そして言いたいことも言えるようになりました。

そしてもう一つ大切なことは自分の意見を伝えることです。技術的に信頼される仕事をすることは重要です。ですが、海外では、発言しない、主張しない、議論をしないでは、仮に技術があってもなかなか理解してもらえません。言うべき時には言う。言うべき時に言えるように、技術も心も準備をしておくことが大切だと思っています。そして言うべき時はいつか、タイミングを見極めること。

それでも、人によって海外赴任に耐えられない人も出てきます。

これは海外赴任ばかりではないと思いますが、人によってつらく感じるポイントや、あるつらさに対する耐性が違うからだと思います。あの人はうまくできているのにとか、あの人は乗り越えているのにとか考えるよりも、他人のやり方は参考程度に考えて、自分なりのやり方を見つけていくほうがよいと思います。

そして自分なりにうまくいったなと思う時は、そっと自分を褒めてあげることです。どんな小さいことでも、成功体験は自分の宝物だと思って大切にしてほしいと思います。

人の助けを求めることはおかしいことでも悪いことでもありません。助けを求められたら助けてあげる、助けてほしい時は助けを求める。たとえ赴任が技術指導の立場だとしても、その人がコーディネーションでも交渉でもなんでも得意とは限りません。得意分野で大いに貢献し、弱いところは助けてもらう。赴任先には技術に不安がある人でも別な面で私を助けてくれる人がいます。

考えてみれば日本での仕事でも同じことなのですが、海外赴任という責任と気負いの中で、自分を追い込みすぎないこと。そして自分なりに頑張ってみてうまくいった成功体験は大切にしてあげること。

私が初めて海外赴任したころよりも、今の若い人たちはずっとさらっとスマートに海外赴任をこなしているように見えますが、内心いろいろな葛藤もあるでしょう。

若い日本人出向者が帰任していったあと、赴任先の上司や同僚などが私の席にきて、帰任していった日本人について、「彼・彼女は本当に頑張っていたね。一緒に仕事ができてよかった。こちらの若い技術者の見本だった。」などとしみじみ言われることが、本当に涙が出るほどうれしいです。

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