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地質の記載は基本だけど難しい

生物学でも地学でも、記載は基本的な科学の方法だと思います。
記載とは例えば地質学で言えば、地層や岩石の形質や特徴を言葉や図などで記述すること、あるいは記述したものを指します。

地質や岩石について何も知識がないまま、何でもよいから観察したことを記載しなさいと言われても、なかなかうまくできるものではありません。いいところ、色だとか、肌触りだとか、硬さだとか、何かと比べたり、何かに例えたりしながら、数項目記載できれば良いほうだと思います。

教科書などで地層や岩石の分類や特徴などについて知識を得て、先生や先輩と一緒に山を歩いて、実際の地層や岩石を見ながら記載すべき項目と、その区分の仕方を学び、いくつかの特徴の組み合わせから、その地層や岩石を分類してみて、その分類が意味するところの地層や岩石の成因や堆積環境にたどり着く...。こういう訓練や経験を何度も繰り返すことによって、やっとなんとか自分でも役に立つ記載ができる(つもり)になったものです。

記載すべき項目や、分類に必要な特徴が知識としてわかっていても、実際の地層や岩石を見ると、なかなか判断はできないものです。石灰岩の薄片写真を使ってAIで分類を試みたことがありますが、なかなか満足できる正答率を得られなかった経験があります。人間が記載し、分類しても人によって揺らぎが出てしまうので、そもそもAIに正答を学習させる段階で、混乱が生じてしまうのかもしれません。

石油業界では、ある程度スタンダードな記載用紙というものがあって、それを埋めていけば、そこそこ地層や岩石の特徴をつかんで堆積環境などの推定はできるようになると思います。

しかし、油田の開発・生産計画を立てるための詳細な油層モデルを作るスタディでは、いつでも同じ項目を同じ基準で記載すればよいというわけではありません。油層の物性や生産性を左右する地質的要因を油田や油層ごとに見つけだし、それらが有意に区分できる基準を設けて記載をしなければならないことがしばしば生じます。

油層固有の、生産性などに関連する特徴を掴むために何度もコアサンプルに立ち返り、試行錯誤しながら記載をすることもあります。将来AIが補助的な役割を果たしてくれそうな気もしますが、なかなか一筋縄ではいかないだろうなと感じています。

石油業界で必要とされる記載は、客観的であるべきだというのも分かりますが、記載項目やその区分設定をする段階で情報の取捨選択が行われているわけで、記載の目的やゴールがある程度はっきりしていることが望ましいと思います。

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