見出し画像

石油開発の技術はどこに?

だいぶ前のことになりますが、SPE: Society of Petroleum Engineers (石油技術者協会) のある地質系フォーラムに運営委員として参加したことがあります。

SPEの技術者が集まるイベントにはいくつかの種類があって、それぞれ異なる目的やターゲットを持っていました。当時、主なイベントとしては Conference, Workshop, Forum などがありました。

Conference はどちらかというと技術成果を発表する場、Workshop は現在直面している技術課題とその解決方法などについて議論する場、そしてForumは特に将来を見据えた技術課題や技術的なチャンスについて話し合う場として位置づけられていました。

フォーラムに参加できるのは招待状を受け取った人のみで、私が参加したフォーラムの最終招待者は80名程度でした。参加希望者は簡単な自分の経歴とフォーラムの主題に関する経験や研究内容などについて記載したドキュメントを提出して、それをもとに運営委員会で招待する人を絞り込みます。

フォーラムごとに雰囲気は違うのでしょうが、私の参加したフォーラムの運営委員のほとんどは石油会社か大手技術系ベンダーからの技術者で、招待者を選ぶ際には、「業界の将来を支える技術は我々企業にある」と生々しくプライドを表明していて、大学研究者などアカデミックなバックグランドを持つ人たちを、結構あからさまに招待者リストに入れようとしない傾向がありました。

実際、私が招待者に入れるべきだと思った大学研究者を招待者リストに残すのに苦労しました。

海外のほうが日本よりもむしろ産学共同研究や技術研究コンソーシアムなどが盛んなように見えるのに、個々の技術者レベルではこんなにも対抗意識があるのかと驚いたものです。

実際のところ、実油田で新技術を適用し実証するには、油田や操業現場を持つ企業のほうが圧倒的に有利に感じます。新ツールなどの開発はベンダーが何歩も前に出ているように感じますし、様々なデータを統合した油田開発に関わるスタディはデータの集まる石油会社に利があると思います。しかし新しいツールや技術を支える地道な基礎研究は、大学などの貢献がなくてはならないはずで、運営委員会でのむき出しの対抗意識の意味がよくわからなかったというのが正直なところです。

プライドを持つのもいいですが、石油会社、ベンダー、大学の協力が必要なのではないかと、個人的に考えさせられるイベントでした。

フォーラムの目的が、将来の技術について語るということで、夢物語のような議論が行われることもありましたが、全体を通して、参加者の問題意識が高く、非常に活発な議論が終始行われていました。

ただ、フォーラムは何となく、選ばれた人たちが集うサロンのような雰囲気を感じ (個人の感想です)、 もっと「今、この課題を解決したい!」という、なんとなく泥臭さというか切実さを感じるワークショップのほうが、私にはエキサイティングに感じます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?