核兵器の製造・維持コスト
現在核兵器を保有している9か国 (米国、ロシア、イギリス、フランス、中国、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮) が2020年に核兵器の製造や維持に費やした金額は推計で計726億ドル (約7兆9000億円) にのぼるそうです。
日本の年間国家予算が約110兆円とすると、およそその8%にあたる金額をこの非人道的な、誰もがその使用が全人類に惨劇をもたらすことを認めざるを得ない兵器につぎ込んでいるわけです。
核抑止が、「核保有国間において、双方が核兵器の応酬による壊滅的な結果を避けようとするため、自制的となり核の使用が抑止される」という理論に依拠するのだとしたら、核を持たない決意は相手国の核抑止の必要性、つまり核保有の根拠を失わせるものであるはずです。反対に核抑止の必要性に関係なく核を保有したがるような「ならず者」には、そもそも核抑止の理論など通用しないでしょう。
核抑止を建前としているはずのロシアは、核抑止が働いているという現在でさえ核による恫喝を行っています。理性の効かない核保有国が現れたら核抑止など何の意味もないことは明らかです。また、かつてのアメリカのように対抗する核保有国がなくても一国だけでも核を保有しようとする国がでてくるのであれば、核保有には核抑止とは別のモチベーションが働いているとしか考えられず、そんな中で核抑止を語る意味もないはずです。核戦争を止めるのは核抑止ではだめなのだと思います。
私たちは、核を持たない国に対して核で恫喝することや核を使用することが、どんな理由をもってしても絶対に許されることではないということを、国際社会の確固たる常識として認めることが重要だと思います。これが核兵器禁止条約の立場だと思います。すべての核保有国は、核兵器を廃棄し、核兵器禁止条約の側に立つことが、合理的で理性的であり、世界を核兵器の危険から守ることになるのだと気がつくべきです。
核兵器禁止条約は、現在核兵器を保有する9か国について、保有する核兵器等をすべて廃棄した後で、または定められた期限までに核兵器を廃棄する義務を果たすことを前提に、条約に加盟できると規定しています。核保有国はたったこれだけのコミットメントで世界に良識を示すことができ、核兵器を保有しないという経済的メリットが得られ、これまで自分たちと同様に核抑止論で対抗してきた相手国を黙らせることが出来るのではないでしょうか。
2024年は少しでも核兵器廃絶に近づく年であってほしいです。日本の被爆者をがっかりさせないで欲しいです。日本には核兵器禁止条約の立場に立ってすべての核保有国に対して核兵器廃棄を訴え続けて欲しいと思います。