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孔隙率と浸透率の関係式をエクセルで作ったらイメージと合わなかった

油層の孔隙率と浸透率は、油層性状を表す重要なパラメータです。

孔隙率は油層を形成する岩石の隙間の割合を表すため、油層の中に油をどのくらい貯めることができるか、つまり、石油の埋蔵量に大きくかかわるパラメータです。

一方、浸透率は流体の流れやすさを表すパラメータで、石油の生産レートや、水付きの早さ、生産にともなう圧力変化などに大きく影響します。

孔隙率は地下から実際に採ってきたコアサンプルによる分析だけではなく、井戸にツールをおろして測定してくる比較的安価な物理検層などによってもそこそこ精度よく測定できるのに対して、浸透率の測定はコア分析か、実際に石油を生産して圧力挙動などにより推定するしかなく、浸透率モデルをどう作成するかは、油層モデルつくりの一つの課題となっています。

孔隙率は岩石の隙間の量を表しているので、孔隙が多くなれば流体も流れやすくなるというある程度の関係性が予想できます。

そこで、入社して間もないころ、コアサンプルで測定した孔隙率と浸透率のクロスプロットを作り、その関係式を求め、比較的入手しやすい孔隙率モデルから浸透率モデルを作成する簡易的な方法を学びました。

その研修で、講師の方から、エクセルなどで自動で近似式を作る際には、自分のイメージに合っているかちゃんと確かめなさいと教えられました。どういうことでしょうか?

ここでは模式的な孔隙率と常用対数をとった浸透率のクロスプロットを示します。

私が模式的に作ったプロットですから大変整った分布をしています。パッと分布を見る限り、孔隙率と浸透率の関係式を単純な直線で表すと下図のようになりそうです。

これを、エクセルの近似直線の自動生成で作ってみると以下のような線になります。

なぜか思ったようなところを通っていない気がします。やや直線の傾きがゆるく感じます。
これは、エクセルの近似式が、縦軸に沿った方向での誤差を最小にするようなイメージで近似直線を考えているからです。縦軸に沿った線で見ればだいたい真ん中を通っているように見えます。

しかし、今回のような場合、測定した孔隙率が正しいとも、浸透率が正しいともいえないので、縦軸に沿った方向だけで誤差を小さくするのはちょっと違うような気がしますし、実際にイメージと合いません。

そこで、横軸にそって誤差を最小にする近似直線も作ってみます。下の図の赤破線で示したのが、横軸に沿った方向で誤差を最小にするように作った近似曲線です。
さきほどの青い点線の近似曲線とは傾きが違います。

この赤い近似曲線は、x軸 (横軸) と y軸 (縦軸)の数値を入れ替えれば、エクセルで自動で作成することができます。この二つの直線の間を通る直線が、最初にイメージした、この孔隙率と浸透率の分布から直感的にイメージされる関係式に近いものになります。

考えてみれば当たり前のことなのですが、ソフトウェアを盲目的に使うと危ないなと気づかされました。もちろん、エクセルの近似式は間違ってはいないのですが、近似式の意味をよく理解することと、自分がどういうものを作りたいのかよく理解することが大切なのだと大変心に残る講師からの指摘でした。

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