Z世代が聴く名盤 #12 Metallica「メタリカ(Metallica)」
ここ数年で「Z世代」という単語をよく聞くようになった。「団塊世代」「氷河期世代」「ゆとり世代」等に続く新たな世代の区分である。
なんでも世間様はこの世代を「自分達とは全く違う感性を持った若者」と見ているようで、そんな歳の若者が起こした迷惑行為やトラブルを見つけては叩く報道や、そんな歳の若者を集めては「昔はこうだった」と昭和や平成の映像やらを持ち出して色々説明して反応を見てみる企画が最近増えてきており、「最近の若いのは何を考えているのやら」という空気をなんとな~く感じる事が多くなってきた。
そこまで我々の考えていることが気になるなら発信していこうじゃないか、ということでこのシリーズを始めることにした。当記事はZ世代にあたる筆者が世代よりも上のアーティストが出した名盤を聴いて、感想を書いていくただそれだけの記事である。
筆者は2003年生まれで、ニュースなどで取り沙汰される「Z世代」よりやや年上だが、WikipediaによればZ世代とは概ね1995~2010年生まれの若者を指すとのことなので、そのちょうど真ん中あたりに生まれた自分はバリバリZ世代を名乗れる。
作品情報
メタリカ、5枚目のオリジナル・アルバム。見てのとおり真っ黒なアルバムジャケットから通称「ブラック・アルバム」と呼ばれている。
前置き
これまで教養をつけようといろんなジャンルの曲に触れてきたけど、なぜかメタルは一回も聴く機会がなかった。ドコドコ言うドラムに、重たい音色の速いギター、観客はそれを聴いてヘドバン…みたいな漠然としたイメージはあるけどやっぱり実態はよく知らない。
一回だけライブハウスで自分の大学の音楽系サークルがみんな一堂に会してごちゃ混ぜでライブを開催したことがあって、唯一そのときにヘビメタ系のバンドのライブを生で見たんだけど、モッシュ(曲のサビなどで観客どうしがもみくちゃになること)が明らかに他のバンドのときより凶暴で見事なまでにイメージ通り。ビビりゆえに壁に張り付いて隅の方で様子を見てたんだけどそれでも観客がモッシュから弾かれた勢いでこっち側にぶつかってきたり、普段は大人しいサークルの先輩が殴り込みに行くような体勢でモッシュの中に飛び込んでいったりでヘヴィメタルのライブの雰囲気とその異世界っぷりは充分すぎるくらいに伝わった。
とはいえ、その一回限りの経験だけでメタルのイメージを固めてしまうのはもったいない。せっかくこういうシリーズをやってるからにはきちんと音源を聴いて教養を深めた方が良いでしょうと思い至り、メタルの名盤の中から何かしらを選んで聴くことにしたのがこの記事の始まりである。
そうして今回白羽の矢が立ったのがメタリカ。アメリカ出身のメタルバンドということが名前を一目見ただけで分かるし(由来はラテン語の「メタル」でメタル+アメリカというわけではないらしい)、メタル系の名盤で唯一存在を知ってるのが今作ということもあり、ある程度初心者向けかなと推測してSpotifyで聴いてみた。
感想
思ってたよりテンポが遅かった。個人的なメタルへの偏見として速いテンポにバカテクの演奏が乗っかる、X JAPANの「紅」みたいな曲が主流みたいなイメージがあったんだけど、今作にそのような曲は皆無。むしろ自分が普段聴いているJ-POPよりも遅い曲が大半を占めていた。
調べてみたところ自分がイメージしていたメタルは厳密には「スラッシュ・メタル」というサブジャンルに属するらしく、今作は当時幅を利かせていたスラッシュ・メタルのカウンターとしてヘビーさに重きを置いて制作されたらしい。思い返せば自分が行ったメタル系のライブで披露されてた曲も別にそんなに速いテンポではなかった。
歌詞もロックらしく強いメッセージ性が込められているようで、Wikipediaの記事はサウンド面より歌詞についての言及の方が目立つ。例によって自分は歌詞を全く見ないのでその辺の魅力はあまり伝わってこなかったんだけど、宗教に対する疑問や苦悩を描いたという「The Unforgiven」や「The God That Failed」が収録されていながら今より宗教の影響力が強かったであろうアメリカを中心に3000万枚も売り上げたのは驚き。
基本的にはメンバー4人の演奏がメインであり、外部の演奏は極力存在感を出さないようにしている。なので自分がこれまで聴いてきた名盤に比べると統一感強めな印象が強いけどテンポ速めの「Holier Than Thou」やバラード調の「Nothing Else Matters」など曲調はそれなりに幅広い。
とはいえ曲調の幅広さはあくまでメタルの範疇内では幅広い、というだけであってメタルに興味のない人が聴いてもたぶん全部同じに聞こえると思う。前述の2曲や同じくバラード調の「The Unforgiven」みたいな変わり種はすぐ記憶に残ったけど他はほとんど区別がつかず、曲によって6分超えとかザラにあるので一気に聴き通すのは結構しんどかった。
わりと横一線な印象の曲が続くなか、「Through the Never」は某深夜番組で「寿司!鳥!風呂!寝ろ!」との空耳が聞こえると紹介されたことがあり、馴染みの薄いゴリゴリハードな曲から唐突に聞き覚えのあるネタフレーズが飛び出したもんだから思いっきり吹き出してしまった。今作のハイライトは個人的には間違いなくここ。
一番好きな曲:Through the Never
一番「…」な曲:特にないけど強いて挙げるならThe Unforgiven
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?