見出し画像

オリンピック閉会式で舞台に立ったカンボジア人ラッパーVannDa

実は、パリオリンピックは一度も見ることがありませんでした。スポーツに関心のないカンボジア(特にシェムリアップ)ではケーブルテレビ以外での視聴が難しく、我が家にテレビがないためです。周囲の人も誰もオリンピックを話題にすることはなく、いつの間にか閉会式も終わっていました。

ああ、これがシェムリアップの生活だなあと思っていると、元カンボジア在住で今は帰国している友人からメッセージがありました。

「閉会式にVannDaが出た!!」と…

なんと!!

Yahoo! Japan

このYahoo ニュースの「カンボジア人ラッパー」こそがVannDaです。
フンセン氏(元首相)、フンマネット氏(現首相)もすぐに投稿していました。

投稿4分後には5,600のLikeが!
在カンボジアのフランス大使館からも「ブラボー👏」

さて、さかのぼって私とVannDaの出会いは2021年でした。

プノンペンにて忘れもしないクメール正月の大晦日、夕方6時頃に「ロックダウンするかもしれない」という噂をカンボジア人同僚から聞きました。そこから私はカブコ市場、夫と息子はイオンへと二手に分かれて買い出しをし、私は戦後の闇市のような切羽詰まった市場から両手に買えるだけ食料を買い、2人は時すでに遅し、イオンの棚は空っぽで何も買えないまま家に戻ってきました。そして夜9時頃に外出禁止令、夜12時には至る所にロープが張られ正月元旦に完全ロックダウンとなりました。

家の外に出られなくなった3週間、全てがオンラインになりました。息子の学校はオンライン、夫の仕事もオンライン、私は英語と日本語をオンラインで教え、クメール語をオンラインで習う日々。
鬱々とした中、助けを求めるかのようにクメール語の先生に、「最近カンボジアで流行っている音楽ってなんですか?」と聞いて教えてもらったのがVannDaのこのMVでした。

衝撃でした。こんな洗練された感覚を持ったアーティストがカンボジアにいたのかと。

伝統弦楽器チャパイの巨匠(マスターコンナイ)とのコラボ、60年代CM風のイントロ、一瞬挟まるアンコールトムとバンテアイスレイの古い映像。
そして舞台は我らが国立博物館(勝手にすみません…)。ドゥバラパーラ、西メボンの彫像、たまりません。

ごめんなさい参りました、と思いました。「いい音楽教えてください」と先生に聞いた時には正直、自分をカンボジアの感覚に合わせてあげようという上から目線があったのかもしれません。
MVを見て、頭を殴られた感じがしました。

国立博物館に行きたい想いが募り、再オープン日に行った時のパノラマ写真

そんな訳ですっかり気に入ってしまったVannDaのMVと共にロックダウンを乗り越え、街に出てみるとどうでしょう、街の広告は携帯キャリア最大手のCellcardをはじめ、VannDaの写真だらけだったのでした。

同じ景色なのに、それまで気づかなかったのです。


さて、このメッセージを送ってくれた友人と出会ったのはプノンペンの職場でした。地味な仕事でした。またご主人はアーティスト活動の傍ら、小学生向けにバスケのコーチをボランティアでされていて、公私で親子共々お世話になっていました。

お二人がシェムリアップで芸能事務所をされていたことは後から知り、初めてVannDaの話をしたのは私がシェムリアップ、彼女が日本に住んでからです。そしてこの投稿で初めて、VannDaのMVを数年前に撮っていたということを知ったのです。

現在27歳ということは、当時21歳!まだあどけないです。Wikipediaを見ると、VannDaはシアヌークビルに生まれ、両親は市場でココナツを削る仕事をしていたとありました。
なんと壮大なカンボジアンドリーム。旧宗主国のフランスにて、カンボジア人(や私)に希望を持たせてくれる舞台でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?