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「Unlucky Morpheus」=神の音楽

通称「あんきも」。なんとも覚えやすい…

元々はVo.FukiとGt.紫煉(しれん)「コミケ」で自主販売を行っていて、東方Projectの楽曲アレンジが中心だったが、徐々にメンバーを増やし、現在では発売前の新譜の予約だけでamazon HR/HM売れ筋ランキング1位になってしまう程の人気バンドになった。

何故これ程までに人気があるのか。それは彼らがメタラーのツボを抑える”お約束”と”独自の武器”を両立させているからだろう。

強烈過ぎる”声”

この有無を言わせぬ声量である。そもそも女性ボーカル自体が貴重なジャンルでハイトーンとこの”太さ”を両立できるシンガーがどれ程いるだろうか。ハンター×ハンターなら間違いなく強化系だろう…思わず笑ってしまう凄みがこの声にはある。

Fuki(通称ふっきー)は、そもそもメタル界では有名な人物で「LIGHT BRINGER」のボーカルとして鮮烈なデビューを飾り、それからソロ活動である「Fuki Commune」や「DOLL$BOXX」,そして「Sound Horizon」や「SYU」等々…数えきれないほどのゲスト参加をしている人気ボーカリストだ。

何故、これほどまでに引っ張りだこなのか。ただ強い歌い方だけではなく、曲に合わせた歌い訳がしっかりできる器用さがあるからだろう。

可愛い感じだったり、

ちょっと少女チックだったり。このような、曲に合わせた歌い分けは彼女も敬愛する陰陽座の黒猫にも通づるものがあるのかもしれない。情感豊かな彼女の詞も個人的にはどれもハズレが無くて素晴らしい。

”リードヴァイオリン”とも言うべき弾きっぷり

あんきもをUnlucky Morpheusたらしめている最大の要因はJill(ジル)によるヴァイオリンだろう。そもそもヴァイオリンがメンバーにいるバンド自体が少ない中、東京藝術大学器楽科卒のガッチガチのヴァイオリニストで、加えて華やかな女性という貴重な人材だ。

ヴァイオリンの音を取り入れているバンド自体は珍しくも無いが、大抵の場合はバックで雰囲気づくりで流れているものがほとんどである。だが、彼女はライブでも音源でもガンガン弾く。頭を振りながら弾き倒す。かわいい。

彼女の存在のおかげで、ツインリードギターというありがちな展開に加え、トリプルリードや、Vn.×Gt.のツインリードなど…他のバンドにはできない旋律を聴くことが出来る。Gt.紫煉の怪我の影響か、近年では元々がギターだったパートがVn.に置き換えられたアレンジに変わることも増え、より一層重要なメンバーになってきていると感じます。

伝統的なメタルには無い、現代的な”重さ”

メタル全体ではもはや珍しくもなんともないのだが、あんきものような所謂”クサメロ”を重視したメロディックスピードメタルでここまで7弦ギターを生かしているバンドは少ないと思う。

言葉にしにくいのだが、この重さはデスコアやメタルコアなど、王道からは外れた今風の重さだと思う。あるいはメロデスだろうか。なんとなく現代の要素を取り入れたのではなく、元々聴いて育った音楽にモダンなメタルがあったのだろうと予想できる自然さ。

彼らの音楽は、単に華やかであるだけではなく、ある種の凶暴さみたいなものを感じるのだ。この一見矛盾する要素の両立が強力な武器となっているのだと僕は思っている。

絶対に崩れない”様式美”

アルペジオ→静かな歌い出し→リフ→シャウト&ヴァイオリンの入り、サビの開放感、Cメロから間奏(ギターの速弾き→Vnによるハモり→ドラムソロ→泣きのツインリードギター)…完璧だ。(オタク特有の早口)

個人的にはXの「silent jealousy」並みの100点満点を付けたい。東方Projectのアレンジ曲だが、原曲がここまで生まれ変わるとはZUN氏もびっくりだろう。

ヘヴィメタルと言うジャンルは一定のルールみたいなものが存在していたりしなかったり…殊に、テクニカルなバンドと言うのは速弾きなどの必殺技を聴かせるまでの流れが特に重要視される。単にABサビ間奏と言う流れでは足りない。全然足りない。

このバンドはその点一切のスキがない。どの曲を聴いても”くるぞ…!”感が感じられるのだ。王道が何故”王”道と言われるのか。それはみんな好きだからだろう。

ただ、王道は飽きも早い。

紫煉(しれん)さん、作曲能力高すぎでは

え、こういうのもイケちゃうの…と思った最近の楽曲。

和風な楽曲において、西洋の楽器であるヴァイオリンに一切の違和感がないことに驚いたのを今でも覚えている。なんでも中国の楽器である二胡のニュアンスを表しているらしい。多分そこらのメタラーの引き出しには入っていない発想だと思う。

そして、他の楽曲とはガラッとモチーフが変わっているのにもかかわらず前述した”重さ”や王道展開は一切ブレていない上に違和感が無い。なんちゃって”和風メタル”になっていないのだ。

打って変わってこちらは王道のメロスピ。

「CADAVER」と「REVADAC」という曲名は「回文」。逆から読んでも意味の通る言葉になっているという事だ。MVを見ていればある程度は察しが付くが、驚くべきことに”曲自体”が回文になっている。

ドラムは流石に無理だったようだが、その他のパート(Vo,Vn,Gt,Ba)は楽譜を逆から演奏するともう一曲になるという仕掛けだ。作曲者本人も言っていたが多分他のバンドが成し遂げていない偉業である。凄い。

思いついても、こんなこと実際に出来る人がどれ程いるだろうか。加えて、東方Project楽曲のメタルアレンジにおける”元々自分たちの楽曲だった”と感じてしまうような違和感のなさや、和風だったりメタルコア風だったりといった引き出しの多さ、そして絶対に美味しい部分は外さない王道展開の感覚…紫煉氏の能力が恐ろしい。

怪我をして余りギターを弾けなくなった状態でも、ヴァイオリンパートを増やしたり、指1本で弾ける楽曲を生み出したりと柔軟な思考も持ち合わせている。このバンドの中心は間違いなく彼だと思わざるを得ない。素晴らしい。

と、褒めちぎってきたけど最強のバンドじゃんこれ。

女性メンバーが二人いる絵面の華やかさもグッとくるし、言うまでもないけど演奏力は断トツで高い。紫煉さんのスクリームも年々上手くなっている…更に技が増えてしまうのか。向かう所、敵無し。

もうすぐ新譜が出るので、もしこれを読んでグッと来た人は買いましょう。新曲いい感じなんで多分傑作だと思います。まだ発売してないけど。

では。

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