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深淵を覗く時、フェチもまたこちらを覗いていた -頭部の無いヌード写真たち-

 今日も楽しく骨董の業者市へ。

骨董の業者市と言うが、なんでも鑑定団の如くウン百万もするような陶磁器や絵画を扱うような所ばかりではない。

業者市は各地で開催されており、市場ごとに掛け軸、紙モノ、布、家具など出品されるモノに特色がある。

僕が扱うのは本や所謂紙の資料と言ったところなので、その手のモノが多く出品される市だ。

市に行くと、段ボールに入った出品物たちがうず高く積まれており、開催時間まではろくすっぽ見れない所が多い。

そういうところでは開始と同時に開封され、買い手の目下に晒される。で、一つずつ競売にかけられるのだ。晒されてから競売までの時間は決して長くない。これが市場のにくいところで、短期間に紙の山を目で泳ぎ、適切な値段を見極めて入札せねばならない。むずかし〜い。と言うかムリ。

競りは基本声出し、会主ないしは競り担当の方がフィーリングで開始価格を決めるか、売り手のホック(開始価格)があればその値段から。買い手はそれを基準に入札してゆく。入札はだいたい五百円か千円単位、上がってゆけば概ね現在価格の十分の一、さらに高値になれば万単位にも。そこまでいけば太刀打ち出来ねえけど。

安く買えりゃあと願うものほどバカスカ入札が入ったり・・・よくもまあ刹那に紙の山漁って値段ぶち込めるよな、歴戦の戦士達のカンには勝てないですね。

とにかく一瞬の判断が求められる訳です。

そんな時に流れてきたのが古い白黒写真の一山、覗き込むとどうやら戦後のヌード撮影会の写真らしい。戦後に流行ったみたいですね、アルスの写真画報「六年間の記録 終戦から講和まで」(1951)でもヌード撮影会の撮影風景写真載ってたし。

面白そうだしまあ売れるだろうなと声を出す。どこの世界でもエロ系ってのは人気がありますので、それなりに競りはするものの無事落札。

落札してちょいと見てみると、どうやら単なるヌード写真だけではないようだ。ネガや通常の四角い写真に加え、裸体に沿ってキレイに切り抜いてあるものが多い。へー手間暇かけてあるなー、フェチの塊じゃん。

じっくり見たかったものの、他にも落札したいのでそそくさと入札へ戻った。

その日も本、紙の山、日記なんぞを落札。両手にクリスマスプレゼントを抱えたガキのごとく満面の笑みで一路帰店の途に就いた。

やっぱり買った紙の山を検品する時が一番楽しいですね。

よっしゃヌード写真も検品して枚数や年代確認しとくかと蓋を開けた。

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わあ、裸体がわらわら入ってる。一生であんまり見ることが無い光景ですね。

大方どこかのオッサンが撮影したのか、それとも温泉地の土産で買ったのか、まあその手合いでしょう。市場に出てしまった今、出どころも追えず真相は闇の中ですが。

とまあ見えぬ持ち主に想いを馳せても仕方なし、遠くを見ずに手前の写真を捌かねば。

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パッと見たところいくつかの形態のものが混じっているようだ。元の写真らしい四角いもの、切断加工が加えられたものなど、とりあえず分類を試みる。これが一括資料とすれば、分類によって元の持ち主の思考もある程度理解できるはずなので。

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タイプA

いちばん目立つのは、やはり裸体に沿って切ったものだ。執拗にキレイに切ってある。まるで現代芸術家の作品かのような、何か作り手の意思をイヤに感じさせられるブツだ。とりあえずAタイプとしておこう。

これの特筆すべき点としては、全て顔と腕、さらに足までもが排除されている点だ。ものによっては上半身も無い。とにかく女体と最低限分かる部位しかない。極限にまで削ぎ落とされている。まるで粥見井尻遺跡で出土した最古級の土偶みたいな、四肢と頭のないトルソーみたいなあれを思い出す。もしかしたらこれは最も原始的な女体の表現なのか。ちょっと怖くなってきた。

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タイプB

次に局部を中心とした下半身付近の写真だ。多くが6.5×4.5㎝と定型の縦長写真、他に大きさが不揃いなものもそれなりにある。あまり見ない大きさだけどわざわざ切ったのかしら。これはBタイプにしておく。

上記の加工されたAとBタイプがかなりの割合を占めている。

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あとはヌード撮影会のネガの写真。なにらやBタイプに含まれる写真と同一人物らしいのがちらほら、これが加工前の元データなんだろう。

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切れ端も混じっている。排除されている顔や腕に足も写っていた。

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残りはこれ、この山では圧倒的少数派な"五大満足"の"加工されていない"女性の写真である。

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そうそう、これがよく見る昭和のヌード写真だよな。五大満足がフツーのはずなのにこれぐらいしかないの、かなり異常ですね。

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引き伸ばしたであろう大きめの縦長なヌード写真もある。五体満足だと安心するね。

以上がこの写真一山を構成している殆どだ。

大別するとネガや五体満足の無加工写真、四肢と頭部のない加工済みの写真である。

両者を見比べると、どうやらモデルが同一人物と思われる個体がかなり多い。

たとえば未加工の縦長ヌード写真は、Aタイプと同じ肉付きのものが散見できる。また1点のみだが、頭部が残存しているのにキレイに切り抜かれている、無加工とAタイプの中間の個体が確認出来た。

これが決め手だ、おそらくは下記のような工程を経て加工をしていたのだ。

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無加工→中間個体→Aタイプ

またネガの写真のモデルはBタイプに多い。おそらくネガから四肢と顔を排除し、その後に引き伸ばしBタイプとなったのではないか。ただし排除して女体の部分のみになったであろうネガ写真が現存せず、いささかの疑問は残るが。

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ネガの写真→ネガの切れ端→Bタイプ

もしこれらの想定した製造過程が正しいとして、これだけの枚数があると言うことは計画的に生産していたのだろうか。

計画的に整えられた写真を生産していたのだとしたら、これは趣味のフェチ的なものだけではなく、現代芸術的な活動の産物の可能性も高いのでは!?

もしくは何か実験的な試みの残骸?

とにかく一介のフェチの行為にしては手が混みすぎているんですよね。

すぐに裸体を用いる現代芸術家を調べねば!作品だったらサザビーズにでも出してもらうか・・・。

なんて考えながら、残りわずかな分類がよく分からん写真たちを眺めていたら、どうも一般人らしい女性の写真が同一人物ということに気づく。

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全て立ち姿だ。ん?

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なんか穴空いてますね。

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もしやこれは?

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ぴったしだ。

てことでフツーにフェチの産物ですね。











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終わり


(2021.07.25追記

写真の股間切り取られた部分に、切り取った裸体を嵌め込めるからフェチ認定した根拠というか発想元なんですが、過去にこんなジョークグッズを見たからでした。

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テエロホンカードなるブツ、時代はバブル期ごろでしょうか?当時見た人いたら教えて・・・。

これ、単なるエセテレホンカードじゃなくて、なぜか股間部分に開閉するギミックが付いているんですよ。

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このギミックの理由は、御案内状なる説明書に書いてあるのです。

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・・・。

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しょ〜もね〜〜〜!

と、まあおそらくバブル期のお下品ジョークグッズでした。かの写真はこれがでるもっと昔に、自分で作って楽しんでたんでしょうね。

おわり

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