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価値を伝えるラベル、実は関係ないラベル

えいと:なんぼーさん、今度僕、デートに行くんですが、美味しい焼肉屋さん知りませんか?

なんぼー:おお、いいね。どんなお店がいいの?

えいと:ガヤガヤしすぎていなくて、エリアは渋谷あたりが良くて…あとはA5ランクのお肉がでるところがいいです!

なんぼー:A5ランク!こだわるねえ。どうして?

えいと:えっ……うーん、そうですね……。美味しいお肉のお店に行きたいから?

なんぼー:ほうほう。

えいと:あれっ、でも今ネットで調べてみたらA5ランクという等級は美味しさにそんなに関係ないって検索結果に出てきました!

なんぼー:等級が高い肉は霜降り肉も多いから、そういうお肉が好きな人にはある程度美味しさの保証にはなるかもしれないけどね。

えいと:うーん。そうでもないんですけどね……なんだ、これって美味しさの基準じゃないのか。すっかりプロの口コミで決まるような美味しさのランク付けかと思ってました。

なんぼー:そういうのって実は多いよね。たとえば日本酒とかもそう。日本酒って精米技術によって、「吟醸」「大吟醸」っていうカテゴリ分けがあるの知ってる?

えいと:なんか高い日本酒に “大吟醸” !ってドーンと書かれたラベルは見たことあるような気がします。

なんぼー:そうそう。大吟醸や純米大吟醸って一般的には高いものが多いんだよね。説明すると長くなるんだけど、日本酒って作り方と精米具合とよばれる米をどれだけ磨いたか、でこの名称が決まっていて。

えいと:なるほど!いっぱいお米を削ってから材料にするから、沢山米が必要になる……それで自然と値段もあがるわけですね。

なんぼー:そうそう。さらに、一般的には「純米大吟醸」という種類が、一番美味しいとされている。というのは、米を沢山削ってお酒をつくると、雑味が減ってピュアな味わいになるからなんだけど。

えいと:へえ。だけど、米を沢山削ると必ず美味しくなるのかな。

なんぼー:まさに!良いところに気がついたね。もちろん一般的には雑味が少なくなるとは言われているし、僕もそう思うけれど、だからって必ずしもうまいってわけじゃない。これはあくまで「作り方の違い」であって、別に「美味しさの等級」ではないんだよね。意味としては「どれだけ米を削ってるか」で名前をつけているわけだから。

えいと:お肉のように騙されないぞ〜!

なんぼー:ふふふ。例えば、『新政』っていう物凄く人気のある日本酒があるんだけど、新政のラベルは実は「純米吟醸」といったような、「特定名称」がどこにも書いていないんだよね。例えば有名な「No.6」というお酒のX-typeなら精米歩合は45%だから、純米大吟醸を名乗ることもできるんだけど、名乗ってない。

えいと:それは、どうしてですか?

なんぼー:本当の理由はわからないけど、一つ考えられるのは新政酒造からのメッセージだと思っていて。新政が人気な理由はもちろん美味しくて、それがブランドになっていて、その美味しさの理由は独自のこだわりを持っているから。

えいと:等級に頼らなくても、新政ブランドがあると。

なんぼー:そうだね。「新政」という名前で、独自の手法で勝負しているからこそ、特定名称には頼らないという意思なんじゃないかって思うんだよね。

ちなみに、新政で製造している中には「涅槃龜(にるがめ)」っていう変わったお酒もあってさ。このお酒って精米歩合が90%なんだよね。ほぼ削ってない。普通、日本酒って最低でも70%は削ると言われているんだけど、あえて90%で作ってる。

これも、「精米歩合だけが日本酒じゃない」っていう、新政からのメッセージかもしれないなと思うんだよ。

えいと:かっこいい!でもそう考えると、僕たちって実際に食事する前に、情報を見て美味しさを判断しがちですね。

なんぼー:「情報を食べてる」っていうよね。食べログの点数とかミシュランも、より美味しさの基準には近いかもしれないけれど、本当に自分が感じる味わいと向き合っている人には関係ない指標だと思うし。

えいと:実は、実力とは関係ないラベル。何かを消費する時には気をつけていかないと。名前に注意!情報に注意!本質を見極めないと!

なんぼー:もちろん名前が素晴らしい役割を果たすこともあるけどね。たとえば、『ホワイトパズル』って知ってる?

えいと:聞いたことあります!絵柄が一切書いてない真っ白なパズルですよね。

なんぼー:あれ『宇宙パズル』と呼ばれて、10年で22万個売れてるらしいんだ。

えいと:に、にじゅうにまん?!?!

なんぼー:すごいよね。これって、そもそもパズルの価値を一新してて素晴らしいんだけど、実は名前もすごく素晴らしい役割を果たしていると思っていて。

えいと:ふむふむ。

なんぼー:そもそも、『宇宙パズル』ってどうして呼ばれているかというと、宇宙飛行士がこのパズルを試験として使っているからということなんだけど。

えいと:へえ!漫画の『宇宙兄弟』大好きだからやりたくなる!

なんぼー:そうだよね。まず価値のところでいうと、普通のパズルは絵柄を揃えることが価値になっているけど、『宇宙パズル』は、「パズルをはめる」ということが価値になっている。

えいと:真っ白なパズルですからね。

なんぼー:その価値を「宇宙飛行士もチャレンジしている『宇宙パズル』」と名前をつけることで、より効果的に伝えているんだ。

えいと:確かに!まさに僕もやりたくなりました。

なんぼー:素晴らしいのが、このパズルの本質的な価値を効果的に伝えている点。「パズルをはめる」こと自体に価値があるから、当然絵柄のあるパズルも面白いだろうし、定期的にやり続けると思うんだよね。実際、このホワイトパズルって、毎年約2万個ずつ、ずっと売れ続けていらしくて。

えいと:すごい!ロングセラー商品ですね。

なんぼー:一時的に流行って消えていく商品は沢山あるけれど、ずっと売れ続けているのはすごいよね。これも、名前がそのプロダクトが持つ価値を毀損せずに、むしろそれをより効果的に伝えることができているからこそだと思うんだ。

えいと:それって、前回話した「スパイシーキャビア」の話にも通じるかもしれませんね。

なんぼー:うんうん。

えいと:スパイシーキャビアも、明太子の価値やシズル感をうまく伝えている。「誠実」なネーミングって素敵だなあ。

なんぼー:誠実っていいね。確かに、等級なんかよりさらに不誠実なネーミングもあるもんね。

えいと:そうなんです!「ストレスゼロ!」って書かれた商品とか買って、実際に使ってみたら全然その効果がわからないような商品もある気がして。そういうのって、後ろの「ストレスゼロ」の根拠を見てみると、よくわかんなかったりするんですよね〜

なんぼー:名前やラベルにつけられたものが、本質的な価値を伝えているかは気をつけて見ないといけないね。

えいと:キャッチーなラベルに騙されないぞ!この目で!価値を見極める!!

なんぼー:かっこいい。そんなえいとくんに楽しんでほしい焼き肉のお店、あとでメッセージで送るね。

えいと:そうだった!!ありがとうございます!!

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