ふるさと納税で、オホーツク海の流氷を注文したら
ある日、いきなり同僚から電話がかかってきた。
同僚「流氷はいつ届くの?」
私「え…たぶん4月…どうして?」
同僚「俺、すっげー買い物した」
私「…高級ダウンとか?」
同僚「もっとすげーやつ」
私「…何買ったんすか?」
同僚「クリオネ!!!!」
もう少し詳しく話すと、私がふるさと納税で「オホーツク海の流氷5kg」を買っていた。
流氷の話をすると確実に「この子どうしたの?」という目で見られるんだけど、「夢とロマンを買った」と答えるようにしている。
紅白を見ながらほろ酔い気分でポチッたのは事実なんだけど、しらふのときから買いたいとは思っていた。要はわたしだって正気だったと言いたい。
流氷から塩を取り出してみようとか、あの氷でベイブレードしたらすっごく滑りがいいんじゃないかとか、まさに夢をいろいろと画策している矢先だった。
その一方で、同僚は地元のスーパーで奇跡的な出会いをする。
それが例の「クリオネ」だ。
クリオネは別名「流氷の天使」だ。
どうやらその瞬間、彼の中で「オホーツク海の流氷」と目の前の「クリオネ」が瞬時に結びついてしまったらしい。そして4匹も買ってきて、「流氷はいつ届くんだ」という興奮気味の電話につながった。
どうやら、わたしの流氷で「クリオネを里帰り」させるつもりらしい。
私が3カ月かけて画策していた「オホーツク海の流氷」の使い道が思わぬ形で決まってしまったわけだ。なんてこった。
最近、会社でホームページ代わりにnoteをはじめた。「noteに書くんだ~」と意気揚々と話す17歳年上の同僚。最初はnoteなんて…とブツブツ言っていた。だからうれしかった。
とてもクリオネを衝動買いするタイプではない。でもうれしそうにクリオネの動きを語りだすもんだから、こっちまでニヤけてしまう。クリオネに? いや、同僚に。
自宅の冷蔵庫で飼っているとか、クリオネ飼育用に大きめの瓶を用意したとか言っていた。
そこから怒涛の質問ラッシュがはじまった。
「noteに上げる写真を撮ったから加工してほしい」
「noteのあれってどうやるの?」
「どうやったら動画あげられるんだ」
気づいたらnoteヘルプセンターになっている私。
やる気満々の同僚。今だから言うけど、正直ここまで彼がやる気になってくれるとは思わなかった。
そしてこんなに本気の彼を、わたしは見たことがない。
「私もクリオネ飼いたい」とボソッと書いたもんだから、同じスーパーにわざわざ探しに行ってくれたらしい。でももう売っていなかったみたい。あの人はそういうところがある。
しょっちゅう言い合いもするが、こんな生意気な小娘ともまともに取りあってくれる人はすごく貴重だ。
周りからは「歳下の上司はどんな感じ?」と聞かれるらしい。我慢してもらっている部分もたくさんあると思う。そりゃそうだ。それも知ってるから、焦って空回りするところもある。言い合いになる原因はだいたいそこにあるのも気づいている。
この同僚がいてくれたことが、この会社をはじめていちばんよかったことだ。これだけは間違いない。
クリオネ日記は彼のnote奮闘記だ。はじめた瞬間からものすごい勢いでnoteの使い方を理解しはじめた。
しかもひとつの日記を複数人で編集したりコメントをつけてつくるから、もはや社員の交換日記になっている。
オホーツク海の流氷を注文して、こんなことが起こるなんて思わなかった。
noteをはじめて、こんな展開になるなんて思わなかった。
同僚へ
流氷届いたらちゃんと分けるので、それまでクリオネが元気でいてくれるように見守ってください。
電話もらったとき、本当はうれしくてニヤニヤが止まりませんでした。読み返してはちょっとずつ再編集してニヤついてたわたしを許してください。でも面倒なのは嫌いなので、会社のnoteは消して、こちらで書き直しました。ごめんなさい。
でもやっぱり、すごくうれしかった。この会社に来てくれてありがとう。
あと、オホーツク海の氷が届いたら絶対ウチの冷蔵庫じゃ間に合わないのでクーラーボックス貸してください。