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明日は明るいに違いない Ⅲ

夏子は考えている。自分のことを

ニューヨークは音が溢れている 

耳をつん裂く様な、車のクラクション

NYPD(ニューヨーク警察)のパトカーのサイレン

この2つはニューヨーク名物と言っても過言ではない。

夏子は少々、HSPなところがあるので急に背後で大きな音が聞こえると、

咄嗟に耳を塞ぎたくなる事がある。

それに、多言語の声の音

これはさすがニューヨーク、人種の坩堝というだけあって

色んな国の言葉、そして各々の訛りの英語の会話が、

そこかしこから聴こえて、面白い。

後は、よく街角から音楽が聴こえてくる。

ぞれはjazzだったり、クラシックのバイオリンだったり…

これもまたさまざまだ。

ノリの良い音楽を聴いていると楽しくなる。

こんな雰囲気大好き…。

  ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

夏子は、公園のベンチに座っている

ふ〜っと深呼吸して、考えている。

私って、音楽好きなのか?

うーん、確かに、大っ嫌いではない。

気分に任せて音楽をチョイスはしてはいる。


楽しそうに演奏している人を見るにつけ、

いつも不思議だ。仕事だから出来るの?

毎日同じ事の繰り返しで嫌にならないの?

毎度の事だ。

音楽の事になると気が滅入る。

夏子は元々は、音楽畑に居た。

が、ある時期を境に、遠ざけた。

それは、難病がわかった事がひとつの原因だ。

夏子の病気は、段々と筋肉が固縮していく難病だ。

子供の頃から、何かしら違和感を感じていた。

練習しても、スムーズに腕や指が人と同じように動かない。

周りからは、練習不足という言葉だけが投げかけられる。

アガリ症なのか?と思っていたが

それも練習不足と括られる。

その後、大人になるに従って、手が震え出し止まらないという現象が起きる。

その当時は、自分が病に犯されている事を知らなかった、

周りから『アルコール中毒?』と冗談めかして言われたら

カッとして、横っ面を引っ叩きたくなる衝動にかられた。

さすがにそういう現実はなかったが。


なのである時期から、音楽の仲間や、


過去の自分の知人から距離を取るように生きている。

会いたいと思わない。

説明もしたくない。

同情も揶揄する言葉も聞きたくない。

だから、こうやって誰も私の事を知らない国に居る事に

癒されているのだろうか…。

ここ久しくコンサートにも行く事はない。

夏子は、ここでなら音楽を聴いてみたいな…

少し楽しめるんじゃないかな…?

誰かに会うわけでなし。

少しばかり、気楽考えている。

          つづく


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