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Overdose Photo-加工された過去- 

「ああ、そういえばこんなことがあったな」
 写真を見返しながらそんなことを思い出した。
 同窓会の知らせが届き、何の気なく学生時代の写真を見返した。
 
 写真、とはいってもデータだ。
 いまでは携帯端末で撮影し、そのまま何万枚とクラウド上に保存される。
 かつては取れる枚数も限られ、費用も掛かり、無限に近い枚数が保存される。

 そのため、いつ・どこで・だれと、ということが鮮明に思いだせる。
 そう思われたのだが、思わぬ弊害もあった。

「これじゃあ、いま会ってもだれが友達か分からないな」

 いわゆる「加工」だ。
 あとあとのことなど考えずに加工に加工を重ねてしまう。
 色調補整だけ、なんてぬるい。ほぼ別人ほどに自分や一緒に写っている人の顔を加工してしまうことに何の躊躇もない。

 それが普通だから。

 その時はそれでよかっただろう。
 しかし、思い出を振り返る場合、その瞬間瞬間の事実や本当のことがきれいさっぱり厚塗りに加工されて、なくなってしまっているのだ。

 いま画面に映っている学生時代の修学旅行での一コマの写真も、
 複数人の友人と無邪気に騒いでいる一コマの姿。
 だが、友人が実際、どんな顔だったのか思い出す一助にはならない。
 なにせ、どれが自分だかさえもわからない有様だ。
 そんな風に感じていると、
 
「ん? undo機能・・・?」

 どうやら新しくリリースされた機能らしい。
 加工前の元データを検索、もしくは推測し、加工前のデータを復元してくれるようだ。

 若いころの自分の素顔を見るのも気恥ずかしいが、
 モノは試しと機能を使ってみることにした。

 ジーーーー・・・・・・・・・・

 ボタンを押すと画像がスキャニングされ、画像が解かれて、
 本当のその時あった「写真」が露わになっていた。

 そこに写っていたのは、自分一人だけ。



 ああ、そうだ。友人が居たように加工していたのを忘れていた。


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