3「1番幸せになってほしい人 〜不思議なオーラ編〜」④
私は、きっと、最後の家族旅行になると思った。
良い流れが来ているとしか思う事しかできない。
きっと、兄の生活リズムの中にスッと何の違和感も無く入って来た、誰かが居る。
その存在が、うちの家族に優しくて穏やかで、安心をくれているのだと思った。
だから、旅行から帰ってすぐ、
「結婚しようと思ってさ」と、聞いた時は、やっとその言葉が本人から聞けて本当に嬉しかった。そして初めて知った事があった。親はもう既に会っていた。
彼女はウチに来た事が2回もあると言うのだ。私は、
「え⁉︎ いつ⁉︎ どんな人⁉︎ なんで教えてくれなかったの⁉︎」と、驚きを隠せなかった。普段生活しているこの家に、いつの間にか来ていたんだ…どうして気付けなかったのだろう。似た空気の持ち主なのだと思った。母は、
「別に隠してた訳じゃないよ。お兄ちゃんが直接伝えるって言ってたんだよ。妹がいる事は伝わってるみたいだし、きっと相手の方が気してるだろうから。それに来たのは土日だったから」と。
私は、確かに土日がメインの仕事をしているけど、頭の中で整理ができず、驚きを隠せなかった。私だけ何も知らず、ただの妄想にふけていたんだ…。
グレーゾーンの時間を随分と長くとられてしまった。腑に落ちず、仲間外れにされた気分だった。私は自分の部屋に閉じこもって一人で泣いた。すると、
コンコン! と、ドアをノックされた。
「おーい!」と、兄の声がした。
「なーに?」と、涙を拭いて返事をした。
「今、ちょっと良い?」
「うん…」と言うと、兄は祝福した私に、
「さっきはありがとうな! 3つ年下人だから、よろしくね! 仲良くしてあげてね」と言ってきた。私と同じ歳か…。
「うん、分かった」と、返事をした。
兄はいよいよ結婚するんだ。モヤモヤとした期間が長かったけど、やっぱり嬉しかった。泣きながら、ただただ首を縦に振った。兄は、
「俺は遠くに行ったりしないから。それは安心して。結婚しても、ちょこちょこ顔出すから。あ! 父さん、母さんの事、何かあったら直ぐに教えてね。あと…」と、少し間があった。
「あと何?」と聞くと、最後まで私に何も伝えて来なかった理由が分かった。
「大丈夫か? 心がいきなり混乱してないか?」と、聞かれた。
タイミングを見てくれていた事がよく分かった。モヤモヤしていたのは妹の私だけではなく、兄も同じだった。だから、その言葉を聞いた時は更に涙が出た。
「いや、自信はないかな」と、兄が居ない日常が想像できず、本音を言ってしまった。すると、
「そうだよな。引っ越して来て、この辺に知り合いも、仲が良い人もいないから、そこが一番心配だったんだよね」と。
私に早くから不安を持たせないように、気にしてくれていた。幸せな報告を後回しにさせてしまった理由が凄く伝わって来た。