TPP等の自由貿易協定脱退、及び憲法改正国民投票法、憲法改正に関する請願の趣旨説明の原稿(改定前、後)及び配布資料1(未配布版、適宜改定後の文言を加筆)
2021年9月14日、地元自治体の市議会で趣旨説明に用いた原稿と市議会議員に配布された資料1。
今更、公開するまでもない内容だとは思うのですが、
趣旨説明の為だけに労力と多くの時間を割いて作成した資料を、このまま捨て置くのは勿体なく感じたのでnoteにて公開します。
作成時は膨大な量に感じていたのですが、こうして見ると大した量はありませんね。
本資料のコンセプトは、推進派の主張するメリットに対するアンチテーゼです。原稿もそれに則って作成しました。本番用の原稿は簡潔に纏めてました。
私の地元の市議会は殆どが自民党、立民など、グローバリズム推進派が議席を占めており、紹介政党の市議団長さんが打ち合わせの時、自由貿易関連の請願は趣旨説明の段階で全力で潰しにかかるだろうと話されていたので、前日に資料を読ませる事で、予め推進派のテンプレ的な主張を潰し、不利な状況から少しでも打開する目的で作成しました。
ここに公開する原稿及び資料は、実際に配布された資料、話した事とは異なり、諸事情で削除を余儀なくされた日本会議に関する内容も含まれております。
実際に配布した、改定後の資料1では、日本会議に関する内容を削除した代わりに、その他の内容を充実させました。
また、デジタル人民元については、請願書を作成した今年の4月時点ではその知見がなく、資料作成時には多少の知見はあったのですが、請願の趣旨から外れると言われたので入れられませんでした。
秋桐 楓さんのnoteで詳しく解説されておりますので、そちらをご参照いただければと思います。
初めに改定前の原稿から。
『 はじめに
現与党はコロナ禍の影で、自由貿易協定や憲法改正等、国民不在の政治を強行している。
国会では、まるでそれらが民意であるかのように、当然のように自由貿易の国内関連法や改憲手続法が採択された。調べるところによると、憲法改正は日本会議というカルト宗教が絡んでおり、本請願は、国民不在の政治が進み、現在、国民が苦しんでいる現状を鑑みて、主に自由貿易協定や憲法改正に反対し、脱退、廃案の意見書の提出を求める目的で提出したものである。
第二次安倍内閣発足後、安倍晋三は、国内向けにはTPP断固反対と言いながら、
「ではいかにして、成長を図るのか。国を開くこと、日本の市場を、オープンにすることです。これは、政治家となって以来、私の中に流れる一貫した哲学でした。
7年前に総理となったとき、私は、日本とASEANのEPAを締結するよう、交渉を急がせました。
今回、再び総理となって最初の課題が、米国を中心とするTPP、そしてEUとのEPAに、果たして乗り出すべきか否かでした。
TPPへの反対は、自民党を支持した皆さんにもありました。私は、全力で、説得しました。そのうえで、交渉参加に断を下しました。
私が追い求める日本とは、世界に対してどこまでも、広々と、オープンにつながる日本です。」
「固い、岩盤のような日本の規制を、私自身をドリルの刃(やいば)として、突き破ろうと思っています。今度こそ、日本をいい国、強い国にして、次の世代に渡すことができないようでは、いままで生きてきた意味がありません。」
(2013年6月19日 安倍晋三総理大臣 経済政策に関する講演、首相官邸バックナンバーから抜粋)
このロンドンで行われた講演会の言葉の通りに、現在では多くの自由貿易協定、経済連携協定が締結され、発効した。法人税の引き下げや消費税の増税等で中小企業が弱り、景気が悪化し、労働者も苦しい状況に置かれ、少子化も加速する最中、現在においてもコロナ禍を隠れ蓑にして、なんの断りもなくそれらの協定に付随する形で多くの法律が変えられ、この国をグローバル企業から守るための岩盤規制を突き破られた。改正国家戦略特区も相俟って、公共資本への外国資本の参入による民営化や、中小企業の買収に関わる法改正、移民の大量受け入れが実行に移され、コロナ禍で混沌として現在に於いても、人流を抑えねばと謳いながら海外からの人流を規制しない。
自民党の野党時代、稲田朋美元防衛大臣が熱弁した「TPPは日本文明の墓場なのだ」という言葉が現実味を帯びてきている。
以下、TPP等の自由貿易協定が日本文明の墓場である理由と、憲法改正の危険性を順に述べる。
① ・RCEP協定等の自由貿易協定に盛り込まれた政府調達には、『内国民待遇』という、内外差別を解消する為の規定がある。これにより、国内産業、中小企業が保護されなくなり、中小企業の入札が減り、地方経済衰退や雇用の縮小に繋がる。
・これに改正銀行法、改正金融商品取引法、改正国家戦略特区法が重なることで、外国資本、ハゲタカファンド等が日本国内に参入しやすくなり、ブレーンのデイビッド・アトキンソンの提言が反映された、菅内閣の中小企業のM&A政策が進むことで、失業者の増加が懸念される。
・現在でも、ゴールドマンサックス等の海外投資ファンドが日本の営業免許を取得した。これは氷山の一角に過ぎず、RCEP発効後、こうした外国資本、外国投資ファンドの参入が増してくる事が予想される。中小企業の保護するために、自由貿易協定の脱退、交渉差止め、廃案を求める。
② 日米FTA第一ステージは暫定的な合意となっているため、為替操作禁止条項は含まれていないが、日米FTAは第2ステージの交渉も控えている。そこで為替操作禁止条項が含まれるのを危惧しているのである。日本はトランプ政権時代のアメリカから、日本の財政政策が為替操作に当たるとして、為替操作禁止条項を突きつけられた。その際は、日本の政策は為替操作に当たらないと説明し、為替操作禁止条項は盛り込まれなかったが、現在においても、米財務省から、為替操作国の監視対象とされている。この為替操作禁止条項が盛り込まれると、財政主権が制限されてしまう。早急に脱退するべきであると考える。
③ 遺伝子組み換え作物は、主に除草剤等の農薬耐性のある品種に改良されている。モンサント(現在はドイツのバイエルに買収された)というメーカーから遺伝子組み換え作物とラウンドアップという除草剤をセットで提供されており、双方とも安全性について意見が二分されている。しかしながら、遺伝子組み換え作物の耕作面積の拡大、除草剤な使用料の増加に伴い、癌の発症率や有害事象が増加傾向にあることも事実であり、各国では抗議デモが展開される程である。今日においては、食品や除草剤を選ぶ自由があるが、今後食料自給率が低下し、輸入に頼りきりの状態になってしまうと、種子法の廃止、種苗法改定で国内の種子、種苗が保護されなくなり、自由貿易協定によって輸入されるような効率よく栽培できる遺伝子組み換え作物、食品しか選択肢がなくなる。EU加盟国ではこのような作物、除草剤を規制する動きがあったが、欧州委員会からEU法に抵触するとして断念された。自由貿易協定参加国において、特に我が国のような、政府としての役割を放棄し、市場原理に丸投げする国においては、グローバル投資家、グローバル企業に主権を移譲したようなものなので、モンサントのようなグローバル企業に遺伝子組み換え表示の撤廃を要求された時、従わざるを得なくなる自体になりかねない。自由貿易協定脱退による主権回復を願う。
④ 資料にある通り、自由貿易協定によって相当な額の農産品の減少額が見込まれ、農業従事者への負担は計り知れない。インドでは農業従事者が反発し、大規模な抗議が行われたことから、参加は見送られた。インドはイギリスの東インド会社との貿易で植民地支配を受けていた過去があり、参加の見送りはその為でもある。インドを見れば、日本がどのような末路を辿るのか想像に難く無い。
⑤ 貿易が促進されることで、輸出が盛んになっても、得られるのは外貨であり、溜め込まれた外貨は海外の日系外国法人に投資されるばかりである。日本は円高回避のために、日本円に替えられることはなく、国内へ投資へ回されることもない。つまり、外国に富が流出しているため、労働者にお金が使われていないので、私たちは貧しいままなのである。
⑥ カナダ、メキシコ、韓国等では、過去に外国企業、外国投資ファンドの利益を損なったとして、自由貿易協定に盛り込まれたISD条項によって訴訟を受けた。外務省の説明では、ISD条項は、投資家側に有利になるという事はなく、仲裁邸は公平に機能していると説明しているが、ISD訴訟によって国家側が莫大な賠償請求をされた前例があり、韓国ではISD訴訟を回避するために、国民皆保険制度等の制定が萎縮してしまい、投資家、外国企業に有利な規制緩和がされた。いざ自由貿易協定を脱退することになった際、ISD訴訟をさせない為に、自由貿易協定と別枠にするように交渉するべきである。
また、中国の国内法に、国内法でありながら国外にも適用される、中国輸出管理法、域外適用規定という法律がある。本法案は非常に不明瞭な規定で、いくらでも拡大解釈が可能な内容となっており、この法律に抵触すると、日本の製造業、中国国内の日系企業が制裁を加えられる恐れがある。早急にRCEP、日中韓FTAから脱退するべきである。海外に製造拠点を構えている日系企業は、現地の人を低賃金で雇い、非人道的な労働をさせている事が問題になっている。このような人権侵害は、いずれ日本にも有害な事象を引き起こす事になる。
⑦ 自由貿易協定には『自然人の移動』という項目がある。外務省の説明では、これは移民には当たらない、一時的な移動という事だが、安倍政権下で、高度外国人材と認められた者は容易に、最短で1年で永住権を獲得できる制度が制定された。一時的な滞在であっても、簡単に永住権を獲得できるということになる。国家戦略特区も相俟って、近年の移民の増加傾向は、日本人の人口に反比例的に増加しており、既に日本は移民大国であると言っても差し支えない程だ。このままでは日本は日本人の国ではなく、異邦人達の国にさせられる。このような安い労働力で溢れれば、日本人の賃金は上昇せず、低賃金競走に晒される。私たちは一生を貧しくくらさねばならないのか。これは自己責任などでは決してなく、政府に政策によってそうなったのだ。私たちを都合の良い奴隷にしないで欲しい。
⑧ このように低賃金競走に晒された労働者達の雇用は不安定になり、何時でも切り捨てられるような非正規雇用が増加した。それに伴い、労働者の自己負担が増加し、失業、倒産が相次ぎ、産業を衰退させ、自殺者の増加に繋がった。昨今では、赤子を餓死させる子供まで出る始末だ。自殺者の若年化も非常に問題であるが、これは決して心の問題等ではなく、グローバル化という投資家利益追求の政策がそうさせたのだ。安倍政権下では失業と自殺が減ったと主張する経済学者があるが、個人負担が増加し、不安定な状況にあって自殺が減るわけもないのは、公安委員会の資料にある、変死体の増加で説明できる。つまり、自殺者が自殺と計上されていなかっただけで、決して自殺者は減ってなどいなかったのだ。
⑨ 全ての自由貿易協定は2030年を目処に一つの巨大な枠組みとなる。その頃に、国家を統治するのは、グローバル投資家、グローバル企業であることは、現在でも政府が役割を放棄し、市場原理に任せるだけの政策ばかりが制定されるのを見れば明らかではないか。かつてのネイティブ・アメリカンが、キリスト教的なグローバリズムによって蹂躙され、多くの民族が消失した。欧米人やヨーロッパ人とり、現在においても、異教徒である私たちはイエローモンキーなどと蔑まれている。日本という国が一つの巨大な貿易圏に組み込まれた時、その頃には、私たちの人権が守られる保障もない。
⑩ 憲法改正国民投票法は、以下の問題点がある。
・第二章、国民投票の期日、第二条には、『国会が憲法改正を発議した日(国会法(昭和二十二年法律第七十九号)第六十八条の五第一項の規定により国会が日本国憲法第九十六条第一項に定める日本国憲法の改正の発議をし、国民に提案したものとされる日をいう。第百条の二において同じ。)から起算して六十日以後百八十日以内において、国会の議決した期日に行う。』とある通り、投票期間が60日しかない。
・最低得票率の定めがなく、棄権多数でも成立する恐れ
・第百六条、広告に関する条文には広告規制の定めが設けられておらず、資金力のある与党に有利な宣伝になる
⑪ 自民党憲法改正草案には以下の問題点がある
・最高法規、97条、『基本的人権』が削除されている。先人達の普段の努力で獲得した人権を削除するべきではない。11条にも人権に関する項目があるが、そこには『日本人』という記述がなく、近年増加する移民にも保障される憲法になりうる。年々減少する私たち日本人がマイノリティになった時、人権が保障されるのかという不安がある。
・改憲草案12条に規定されている『公の秩序』という文言が、恣意的な解釈によって私権制限や権力の乱用を危険性がある。
・新設された83条二項、『財政健全化』条項は、政府の『国の借金が財政を逼迫させている』という考えに基づいて盛り込まれたものだが、現状を直視するに、この考えに基づいて行われてきたプライマリーバランス黒字化目標達成の為の緊縮財政こそ、未来への負担を増やし、財源を国民からの徴税で賄うといった政策によって税収を減らしてきたのだ。
財務省が主張するところによると、日本に於いて財政破綻の可能性は低いとされている。
財政健全化が明記されたなら、それを遵守しなければならない国会議員は緊縮財政から転換しなくなり、消費税等の不平等税制が是正されなくなり、ビルトインスタビライザーは機能しなくなる。
・新設された99条、98条『緊急事態条項』は、他国と比べて宣言の発動要件が不明確で縛りが弱い規定になっている。国会承認は事後でも良しとされており、100日毎に国会承認を得れば何度でも延長でき、恣意的に乱用できる条文である。
・宣言後、内閣は法律と同等の政令を制定でき、地方自治体にも指示が出せるようになり、内閣独裁体制が敷かれる危険性がある。
・宣言中は、『公の秩序』に反したとき、人権の保障がなくなる危険性がある。
・緊急事態条項を欲しているのは、加藤官房長官のような、コロナ禍のどさくさに紛れ改正を狙う議員ばかりである。現在で、知事間でロックダウン等が話し合われているように、緊急事態条項や、憲法改正をするまでもなく、対応出来ている。それでも彼らが憲法改正を望むのは、現内閣が日本会議というカルト宗教に名を連ねている、カルト内閣だからだ。日本会議のホームページによると、衆参ともに半数以上が憲法改正賛同議員に署名している。そして日本会議は全国に拠点があり、殆どの県議会から憲法改正を求める意見書が提出されている。
統一教会(現在は世界平和統一家庭連合に改名)に名を連ねる閣僚も多く、このカルト宗教の教義には、『人種・民族・文化・国家の壁を超えた人類一家族世界を目指しています。』(世界平和統一家庭連合のホームページより抜粋)という、統一原理に則った教義が掲げられており、キリスト教的なグローバル思想が窺える。このようなカルト宗教の意思が、まるで民意であるかのように憲法が改正されてしまったら、日本はカルト宗教に乗っ取られたも同じではないのか。幸い、岩手県は意見書の提出に踏み切っていない。最後の砦として、憲法改正国民投票法の廃案を求める法律案の立法と、憲法改正発議の差止めを求めるべきだ。
以上の理由から、一市民として、自由貿易協定及び憲法改正によって我々日本人の権利が踏みにじられ、犯されている現状を憂慮して、TPP等の自由貿易協定の脱退、国内法を廃案にする法律案の立法、交渉の離脱を、政府、関係各省庁へ求める意見書の提出と、サイドレター交渉でISD条項を別枠で結ぶ交渉、憲法改正国民投票法を廃案にする法律案の立法と、憲法改正論議、改憲発議の差し止めを求める意見書の提出を求める。』
次に、実際に趣旨説明の場で話した改定後の原稿です。~だ、~である調ですが、実際はですます調で話しました。
()内はアドリブ
『 はじめに
今日に於いて、景気が上向いているという政府の見解が発表されている一方で、私や、同じ職場の人達も低所得で、碌に休むことも出来ず少ない手取りで苦しい生活をしている。景気が上向いている実感が丸でなく、将来が不安で仕方がない。借金を返すだけの日々で、最早何のために生きているのかも分からない。
調べるところによると、この国の貧困問題は深刻な状況にあり、中には餓死する人まで出ている、その原因がグローバリズムにあり、(グローバル企業の経済活動、自由貿易、及び市場主義経済にあるのではという考えに至りました。)グローバリズムに警鐘を鳴らす学者が居て、そしてグローバリズムは、有識者の提言や米国等からの外圧により決められている事が分かった。本請願は、最下層に居る庶民の声が政治の場に通り難い現状と、グローバル化によって大勢が貧困に喘いでいる事を愁い、また、私自身、永遠にそこから抜け出せないのではないかという絶望や怒りから、自由貿易協定及び憲法改正に反対し、意見書を政府、関係各省庁への提出を求める目的で提出したものである。
以下、TPP等の自由貿易協定の推進と憲法改正の反対理由とそれらが労働者にどのような弊害をもたらすかを簡単に述べる
① RCEP協定等の自由貿易協定に盛り込まれた政府調達には、『内国民待遇』という、内外差別を解消する為の規定があり、外国資本の参入で地方経済の衰退と雇用の縮小を招く事を懸念している。改正銀行法、改正金融商品取引法も、中小企業の統廃合で乗っ取られてしまうのではないかと4月23日の衆議院財務金融委員会で、立憲民主党の長谷川嘉一衆議院議員も懸念を表明している。私自身、中小企業に務める労働者なので、東北の地方銀行の統合も進んでいる事から、この先、私の勤め先や、私を含めた職場の人達やその他の中小企業で働く人達の職場は守られるのか、とても不安に感じている。中小企業の保護するためにも自由貿易協定の脱退、交渉差止め、廃案を求める。
② 日米FTAは第2ステージの交渉で為替操作禁止条項が含まれるのを危惧しており、この為替操作禁止条項が盛り込まれると、日経新聞の記事では、消費税減税等の格差是正の為の政策が、財政主権が制限されることで制限される恐れがあるとされているので、脱退して欲しい。もしこのまま格差が固定され、一生を送ることになると思うと、私のような庶民は生きる希望を見失う。
③ 自由貿易協定によって安全性が不明瞭な遺伝子組み換え作物、食品が国内に輸入され、安価な食品を買い漁る庶民に健康被害が予想される。知らず知らずのうち、危険な食品を選んで、病苦にのたうち回りたくない。安全な国内農産物をもっと保護して欲しいので、自由貿易協定の脱退を願う。
④ 資料にある通り、自由貿易協定によって相当な額の農産品の減少額が見込まれ、農業従事者への負担は計り知れない。日本の農家を守るために脱退を願う。
インドでは農業従事者が反発し、大規模な抗議が行われたことから、RCEP参加は見送られた。参加見送りの理由は、農家を傷つけるからという理由である。インドはイギリスの東インド会社との貿易で植民地支配を受けていた過去があり、インドにおける農家の、特に青年の自殺率は高い水準にある事からも、日本の農業の今後を憂いている。
⑤ 証券アナリストの三國陽夫氏は、自身の著者、『黒字亡国-対米黒字が日本経済を殺す』で、『輸出拡大で日本がいくら黒字を蓄積しても、アメリカの銀行に貸し置かれる。日本からの預金はアメリカにしてみれば資金調達である。貸出などに自由に使うことができる。日本は稼いだ黒字にふさわしい恩恵に与らないどころか、輸出関連産業を除いて国内消費は慢性的な停滞に喘いでいる。』と主張している。資料にもある通り、輸出に依存した経済政策が外国に富を移転させているので、不況脱却のため、全ての自由貿易協定の脱退を願う。
⑥ 自由貿易協定に盛り込まれるISD条項による訴訟は、投資家と国家間の紛争解決の際に、主にワシントンにある投資紛争解決国際センターで裁定が行われるが、投資家や大企業によるロビー活動などで投資家側に有利な裁定になり、投資家の利益が優先される危険性がある。また、国家側が敗訴し莫大な賠償金が税金から払わされた事例が数多くあり、主権侵害が横行している現状があるので、国家主権や国民主権の回復のため、脱退を願う。
また、一般財団法人安全保障貿易情報センターの資料によると中国の国内法に、中国輸出管理法、域外適用規定という法律があり、日本の製造業の権利を侵害しかねない。
日本の企業と、そこで働く人達の権利を保護する為にも、全ての自由貿易協定は脱退して欲しい。
⑦ 自由貿易協定の『自然人の移動』という項目に加え、日本では容易に永住権を獲得できる制度が制定された為に、資料にある通り近年の移民の増加傾向は、日本人の人口に反比例して増加している。このような安い労働力で溢れれば、日本人も外国人も低賃金競走に晒され、経済格差の拡大に拍車をかけるので、格差是正、賃金上昇の為にも脱退を願う。
2016年6月16日の農協新聞によると、92年以降のメキシコは、NAFTAの関税削減の影響で多くの小規模農家を失業させ、アメリカに1000万人いるとされる不法移民の要因となった。アメリカのデトロイト市では工場の移転で多くの失業者を出した。このように自由貿易協定は締結国双方の雇用を侵害し、それが行き場を失った移民という不幸を生み出す元凶となった。日本の場合、失業しても海を渡って不法移民になる訳にもいかないから、自殺という形でこの世を去っているのではないか。
⑧ 低賃金競走に晒された労働者の雇用は不安定になり、非正規雇用が増加した。それに伴い、労働者の、とりわけ若年層の自己負担が増加し、失業、倒産、産業を衰退させた事が、資料によると年間数多くの、とりわけ若年層の自殺者を出した大きな要因だと言えるのではないか。雇用を安定させる為にも自由貿易協定の脱退を願う。
2018年2月22日のNewsweekの記事によると、日本にも餓死者がいることが多数確認されている。私も大学時代、学業、夜勤のアルバイト、部活の板挟みで体を壊し、仕送りも絶たれ、中退までの数週間、飢えを経験した。(所得の格差が、学業に時間を割ける格差になり、学歴の格差に繋がるのだと実感しました。)
こうしている今も、貧しい生まれの子供や食料不足で困窮している苦学生、シングルマザー、失業者が自ら命を絶っているかと思うと悔しくて仕方がない。
⑨ 経団連の提言によると、資料にもある通り、2020年を目処にFTAAPの完成、2030年を目処に全ての自由貿易協定は一つの巨大な貿易園に統合される。自由貿易協定のような過激なグローバリズムが世界規模で展開され、規制改革が全て実行された時、グローバル資本やグローバル企業は国家を越えた権力を有し、先に述べた弊害により日本を含めたあらゆる国の労働者は不幸の連鎖に陥るのではないかと恐れている。経団連の提言が全て実現される前に脱退して欲しい。
⑩ 憲法改正国民投票法は、以下の問題点がある。
・第二章、国民投票の期日、第二条には、『国会が憲法改正を発議した日(国会法(昭和二十二年法律第七十九号)第六十八条の五第一項の規定により国会が日本国憲法第九十六条第一項に定める日本国憲法の改正の発議をし、国民に提案したものとされる日をいう。第百条の二において同じ。)から起算して六十日以後百八十日以内において、国会の議決した期日に行う。』とある通り、投票期間が(最低)60日しかなくなる。
・最低得票率の定めがなく、棄権多数でも成立する恐れがある。(特に先の国会では十分な議論も行われなかった)
・第百六条、広告に関する条文には広告規制の定めが設けられておらず、資金力のある与党に有利な宣伝になる
(憲法改正国民投票法の請願内容は、日本弁護士連合会の意見書を参考に作成しました。)
⑪ 平成24年の自民党憲法改正草案を参考に、以下、憲法改正に反対する理由を述べる。
・最高法規、97条、『基本的人権』が削除されている。先人達の不断の努力で獲得した人権を削除するべきではない。
・改憲草案12条に規定されている『公の秩序』という文言が、恣意的な解釈によって私権制限や権力の乱用を危険性がある。
・新設された83条二項、『財政健全化』条項が加憲される事で、緊縮財政から転換できなくなるのではないかという恐れがある。
・新設された99条、98条『緊急事態条項』は、資料の通り、他国と比べて宣言の発動要件が不明確で縛りが弱い規定になっており、恣意的に乱用され、三権分立が崩れる恐れがある。
・現在で、知事間でロックダウン等が話し合われているように、緊急事態条項や、憲法改正をするまでもなく、対応出来ているため、戦前の教訓から加えなかった緊急事態条項を、今更になって加憲しないで欲しい。
以上の理由から、(請願第三号)全ての自由貿易協定の脱退、国内法を廃案にする法律案の立法、交渉の離脱と、サイドレター交渉でISD条項を別枠で結ぶ交渉、自由貿易協定を核とした新自由主義的な政策の廃止、中小企業、事業者へ自由貿易協定の影響の説明を政府、関係各省庁へ求める意見書の提出及び(請願第4号)憲法改正国民投票法を廃案にする法律案の立法と、憲法改正論議、改憲発議の差し止めを求める意見書の提出を求める。』
最後に、改定前の資料1です。レイアウト等はnoteに移植する際に修正した為、多少の差異があります。また、改定後の文言を適宜挿入しました。
①
・自由貿易協定に盛り込まれた政府調達は、過去に国内産品優遇政策が取られていたが、(下、及び右下は経済産業省より、第13章『政府調達』から抜粋)
『ケネディ・ラウンド』以降は国内産品優遇が非関税障壁の1つとされ、それを解消するために内国民待遇及び無差別待遇が規定されたとある。『外国からの入札を制限する政策が差別だとして、締結国の外国企業も平等に国内の公共事業に入札出来る、「内国民待遇」「無差別待遇」が規定されており、これが規定されるということは、経産省の資料を読む限りでは国内産業を放棄した事に他ならない。これがまかり通れば、国内業者の入札が減少し、中小零細企業は追い込まれ、地域経済の衰退、雇用縮小を招き、更に公的機関の事業の一部が、現在でも民間委託されているが、今後も内外差別の解消が進められていくと、安全保障上の問題や、アメリカのような、貧困層に差別的な問題が生じる。
・改正銀行法、改正金融商品取引法
2021年5月19日、日本経済新聞の記事から抜粋。
改正金融商品取引法による投資ファンドの参入、改正銀行法による地方銀行の外資化が進み、コロナで業績の悪化した中小企業の統廃合で、失業者の増加が懸念される。
『外資の銀行が含まれるのであれば、言葉は悪いんですが、外資銀行が我が国の魅力ある中小企業を乗っ取ることが可能になるということを意味するということになります。このことを併せて申し添えさせていただきます』
法案が審議された4月23日の衆議院財務金融委員会、立憲民主党、長谷川嘉一衆議院議員
(https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009520420210423013.htm)
現にハゲタカファンドの米金融業者のゴールドマンサックスが日本での営業免許を取得した。(右は2021年7月7日日本経済新聞から抜粋)
・東京都の国家戦略特区による東京都大改革から抜粋。
改正国家戦略特区域内の東京などで構想されている国際金融都市化計画が進められている。昨今では、「新型コロナウイルス感染症等の影響による社会経済情勢の変化に対応して金融の機能の強化及び安定の確保を図るための銀行法等の一部を改正する法律」により金融商品取引法が改正された。この政策で国家戦略特区域内の高度金融人材の誘致が進められ、簡素な手続きで投資業務に参入することができる。
そして地域活性化という隠れ蓑で成立した改正銀行法は、非上場企業の株式を100%取得できる。
自由貿易協定による規制緩和で外国資本、投資ファンドを誘致し、参入を容易にする為の法整備がされた。これらの一連の流れは、対米従属の政策がもたらした日本を外国資本の狩場にする為の政策ではないか。
②
・為替操作禁止条項
トランプ政権時に日米FTAで交渉された為替操作禁止条項は現段階では盛り込まれていないが、日米FTA第二弾交渉で盛り込まれる事を危惧している。
下は、2019年4月19日、Sankei Bizから抜粋

バイデン政権に変わってからも、為替操作国と認定された国はなかったものの、日本は米財務省に、通過政策の監視対象国とされている。
News week
2021年4月17日の記事から抜粋
日米FTAはまだ交渉を控えていること、日本は為替操作国と認定されてはいないが、依然として監視対象であり、今後の交渉次第で、日本は為替操作禁止条項を押し付けられ、財政主権が制限される恐れがある。
過去の日米間の交渉を見るに、政府は米国側の要求を受け入れるばかりである。
年次改革要望書や日米経済対話を見ると、交渉に関わる項目がTPP等の自由貿易協定の項目と類似していることが分かる。自由貿易協定は、それらに変わるアメリカからの要望であり、交渉とは名ばかりの植民地政策に他ならないのではないか。また、経団連の政党評価表、モルガン・スタンレーMUFGチーフ・エコノミスト、ロバート・フェルドマン個人の国家戦略特区改革アイデアリストを見ると、特定の団体、有識者個人の要望がそのまま政策に反映されており、彼らへの利益誘導の為の政策であり、一般大衆の民意など反映されていないことが分かる。
日米FTA交渉も、アメリカの要求通りに為替操作禁止条項を受け入れてしまうのではないかという不安があるので、直ぐにでも交渉を中止し、全ての自由貿易協定の脱退を願う。
③
・遺伝子組み換え作物の市場の殆どを占めるモンサントが販売する遺伝子組み換え作物は、グリホサートという除草剤成分が含まれたラウンドアップアップという除草剤と共にグローバルに供給されている。その2つは、内臓疾患や自閉症、認知症、発がん性等の危険があるとし、毎年5月には各国でラウンドアップの使用、販売を禁止を求める、「反モンサント・デー」という抗議デモが展開された。
長州新聞の記事から抜粋
アメリカ医薬品局のデータから作成された遺伝子組み換え大豆やコーンの耕作される割合と大豆やコーンにかけられるグリホサートの使用料と肝臓ガンの発生の相関を見てみると、両者とも比例的に増加している。
新聞『農民』2016年4月16日の記事から抜粋
食品安全委員会より、国際がん研究機関のQ&Aから抜粋
安全性に問題はないと主張する研究機関も多数あるが、国際がん研究機関の見解は上の通りである。 
モンサント社によると、遺伝子組み換え作物は、グリホサート等の農薬に耐性が付くように改良されている。日本に於いても、小中高生の有害事象の発症は増加傾向にある。(上は文科省『令和元年度 通級による指導実施状況調査結果について』)
下は農林水産省『農薬を巡る情勢』から抜粋
フランスやオーストリア等の国ではグリホサートの使用を全面禁止にする法案が各国の議会に上程されたが、EU法に抵触するとして、フランスでは断念、オーストリアでは部分的な禁止となり、規制は縮小された。EU加盟によって、主権の一部を委譲した事による弊害と同じことが、自由貿易協定を推進する事で、将来的に日本でも起こり得る。
このように、遺伝子組み換え作物を取り巻く問題は、その安全性が未知数であることと、現在は表示義務があるから私たち国民は遺伝子組み換えとそう出ないものを選ぶ自由があるが、自由貿易協定の非関税障壁の撤廃で段階的に表示義務が緩和されていき、知らず知らずのうちに安全性が不明確な食品を選んでしまう危険性があること、そしてモンサントのような巨大なグローバル企業企業に食の主権を握られてしまうことである。
我が国の食糧生産自給率は農林水産省のHPで確認できるように低い水準にある。このような状況下で、種子法廃止や、改正種苗法によって、地域の公共財としての種子は守られなくなり、モンサントのような外国企業に食の主権を握られた時、将来的に訪れると言われている世界的な食糧難に陥った際に、日本は食料を安定して供給できるとは考えにくい。食糧難の危機に備え、自国で食糧を賄うべきではないか。我が国では国家戦略特区域内での安く使える外国人材の誘致によって人材不足を解消するとしているが、これでは日本人の農業従事者が育たない。人手不足と言うなら、欧州、欧米のように、農家の収入を国からの補助金で賄うべきである。安定した収入が見込めるなら、自ずと人手不足も解消できるのではないのか。

下は農林水産省『世界の食料自給率』から抜粋
④
政府はRCEP協定の農産物の減少額は、重要品目は除外できたため試算が行われなかったことを受け、東京大学の鈴木研究室で緊急試算が行われたところ、TPP11の農産物の減少額が12465億、RCEPは5629億だった。TPPの半分ではあるが相当な数字だ。青果物は、TPP11が245億なのに対しRCEPでは856億の減少額という約3.5倍という損失である。
TPP11の全国の農林水産物の減少額は905~1,469億、本県の減少額が21.9~36.3億、日米FTAは、全国の減少額は603~1,096億、本県は17.3~34.2億、日EU・EPAは、全国は626~1,143億、本県は14.8~29.9億である。
インドがRCEP参加を見送った理由が、このような農家への影響を危惧したからである。インドはイギリスの東インド会社との貿易で植民地支配を受けていた国でもある。家内工業によって生産されるインド産の綿布がイギリスに輸出される構図は、産業革命以降、イギリス産の綿工業で生産された綿布がインドに流入することとなり、結果としてインド国内の産業の衰退を招いた。日本はその後追い自殺をするかのように自由貿易の推進している。文化と共に根付いた既存の日本の農林水産業が衰退し、国家戦略特区域内にビジネスの為に参入してくる外国資本に取って代わられ、日本文化と産業の衰退を危惧する。
下は農業協同組合新聞 RCEPで誰が得て、誰が失うか【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】2021年4月15日の記事より抜粋

⑤
日本は自由貿易推進によってGDPの増加を図り、経済成長を目指すと言っているが、GDPが増えたところで日本国民に投資されなければ我々の日本国民の所得には繋がらない。よってGDPが伸びたところで経済成長には繋がらない。
「2018年1-9月期の日本の対外直接投資額は1,080億ドルである。2010年以降の対外投資の推移をみると、①2017年は過去最高の1,604億ドル(17兆9,970億円)である。国際金融危機(リーマンショック)による落ち込み直後の2010年と比べ約2.85倍の規模である。②牽引するのは対米投資および対欧投資である。米国および欧州向け投資が占める割合は65.5%を占める(2017年)、③非製造業分野の投資が主で、2017年の対外投資額の約65.4%を占める。④投資額が大きく膨らんでいる背景に、契約額が10億ドルを上回るM&A型投資がある(別表参照)。⑤2016年の対ASEAN投資のマイナスはソフトバンク・グループのシンガポール法人による株式売却による。この売却益は英国の半導体企業の買収資金の一部に使われている」(近年における日本の対外直接投資の特徴~大型M&А・非製造業を中心に展開 増田耕太郎 (一財)国際貿易投資研究所 客員研究員)

このように年々膨れ上がる対外直接投資に対し、対内直接投資は先進国と比較して最も低い水準にある。主要国の対外純資産を比較しても、日本はトップクラスであることからも分かる通り、外貨で得たお金は外貨のまま、外国で、外国人を雇い、外国に納税するために使われている。外貨を円に変えると円高になり、輸出企業に影響する。日銀が円高回避の為に円売りドル買い介入をしてきたのを見ても分かる通り、日本にはドルが貯まる一方である。
少なくとも、貿易依存型の経済は、私たちの生活を豊かにしなかったと言える。
対して、対内直接投資は低水準にある。下は『日本の対内直接投資の動向』財務省より


対外純資産は、主要国でもトップクラスである。
また、周知の通り、円高回避の為に日銀は為替介入を行ってきた。
日本はグローバル化に伴う輸出依存の経済は、富を流出させ、日本の労働者への投資を行ってこなかった為、賃金と購買力の上昇を妨げてきた。
国民または地方を豊かにするためには、グローバル化という外需依存から脱却する必要がある。
(配布された資料の加筆分)
円高になれば、輸出拡大が困難になるからだと、証券アナリスト、三國陽夫の著者『黒字亡国-対米黒字が日本経済を殺す』で主張されている。
「円高を回避するためにドルをアメリカに貸し置けば日本国内に円が流通しにくくなって、経済成長の足を引っ張っている。」
また、インドとイギリスの間接的な植民地政策について次のように主張している。
「イギリスの植民地であったインドは、香辛料等の原材料を輸出してイギリスを相手に多額の黒字を計上した。その輸出代金は自国通貨ルピーではなく、イギリス通貨であるポンドを使って決済された。インドが稼いだ黒字分はポンドのままイギリス国内に貸し置かれ、それがイギリスの銀行から金融市場を通じてイギリス経済のために活用された。イギリスは、インドから輸入した品物で生活を豊かにすることができた。支払ったはずのポンドはそのままイギリスに戻ってくる。イギリスの銀行預金の名義がイギリス人からインド人に変更されるだけである。イギリスの銀行は預金の名義とは関係なく、預金を元に貸出ができる」
このように、富が移転される構造が、日米間にも当てはまると主張している。
「輸出拡大で日本がいくら黒字を蓄積しても、アメリカの銀行に貸し置かれる。日本からの預金はアメリカにしてみれば資金調達である。貸出などに自由に使うことができる。日本は稼いだ黒字にふさわしい恩恵に与らないどころか、輸出関連産業を除いて国内消費は慢性的な停滞に喘いでいる。」(81項~84項から抜粋、適宜中略)
⑥
自由貿易協定にはISD条項が盛り込まれている。ISD条項を含まない協定も存在するが、各国がISD条項を含んでいるTPP参加の意向を示している。
外務省で紹介されているISD条項の仲裁判例の事例ではNAFTAにおける仲裁付託案件の例が挙げられている。米国企業が訴えた件数は50件で、そのうち係争中のものを除いた31件のうち、米国企業が勝訴した件数は8件であり、必ずしも米国企業が勝つというもよではなく、仲裁廷は公平に機能されていると説明されているが、米国側が勝訴した場合、多額の賠償金が請求される。
・米国企業対メキシコ政府、廃棄物埋立事業
「仲裁廷は,①メキシコ中央政府が地方政府の行為を許容したことにより,廃棄物処理場を操業するA社の権利の否定に同意したといえること,②有害産業廃棄物を許可する排他的権限は中央政府にあったのであり,地方政府の行為は権限から逸脱していたこと等を指摘した上で,収用禁止の違反等にあたると判断し,損害賠償として約1669万ドルの支払いを命じた。」
(外務省より)
・米国企業対カナダ政府
「カナダ政府は97年、神経系統に影響を与えると判断したガソリン添加物MMTの輸入と越境販売を禁止した。これに対して米国の企業が、「わが社が得られたはずの利益が政府の規制により失われ、損失が生じた」として、カナダ政府を提訴した。国民の健康を守るために設けられた規制であるため、カナダ国民は当然、米国の企業が敗退するものだとばかり信じていた。
ところが、調停と協議の結果、カナダ政府は巨額の賠償金を支払うことになり、さらに規制も撤廃する。政府の規制が「不必要な貿易障壁」とされたからだ。営利活動が国家の法規制を押しつぶしたのである。」
(PRESIDENT online「米国企業に巨額賠償金を払ったカナダ政府」 2012年1月30日より)
・米投資ファンド ローンスター対韓国政府

2019年5月19日 中央日報日本語版の記事から抜粋
2018年3月26日 JETRO ビジネス短信「ISDSや原産地規則の改定めぐり意見対立が続く-ライトハイザーUSTR代表公聴会(2)-(米国、メキシコ、カナダ)」

また、新NAFTAを巡る交渉についての記事ではアメリカ議会両院でロバート・ライトバイザー米通商代表部とのISDS撤廃を巡る対立がの中でライトバイザー代表は
「ISDSは米国の裁判所で米国人が持つ以上の権利を外国企業に与えるもので、国家主権上の問題がある。また、米国から拠点を移したい企業に対して、その投資に係るリスクを保証することは米国政府の役割ではない」と主張した。
ツイッター上では、#STOP ISDSで検索すると、多くの国からのツイートが散見される。
NAFTAで米国企業に政府が訴えられた事例を皮切りに、反グローバリズム、ISDS廃止が世界の潮流ということではないだろうか。
「米韓FTAの本質と韓国の医療」(小笠原信実(京都大学経済学研究科ジュニアリサーチャー))では、韓国の政策がISDSによって国内の政策が萎縮し、ISDS訴訟を避けるために新自由主義的な政策へ舵を切らざるを得なかった事例が挙げられている。
以下、抜粋
「OECDデータより松田亮三が作成した資料によると2010年医療財源別医療支出において、日本の私的負担比率が18.1%であるのに対し、韓国は42%である(松田亮三、2016、p.83)。このような医療における自己負担比率の高さが韓国において実損型民間医療保険を拡大させる重要な一因になってきた。このような状況を改善するために、韓国では公的医療保険を強化すべきであるという主張が市民団体や労働組合からなされてきた。このような主張を韓国政府が受け入れて公的医療保険を強化する処置をとった場合、民間保険会社が販売している実損型医療保険の新規契約や契約更新が減少する。これに対し韓国に進出しているアメリカの民間保険会社が、公的医療保険の拡大政策は間接収用にあたり、これにより不利益や損失を被ったとしてISDS訴訟を提起する可能性を否定できない。もしアメリカの民間保険会社が訴訟を提起して韓国政府が敗訴すると、韓国政府には賠償金支払い義務が発生する。韓国政府が公的医療保険の強化策をとった場合、アメリカの民間保険会社が不利益を被ったとしてISDS訴訟を提起するかどうかはわからない。しかし確実なことは米韓FTAが存続する限り、公的医療保険の保障の強化策を韓国国民の福祉向上のためにとる場合、韓国政府は間接収用の適用やアメリカの民間保険会社によるISDS訴訟提起の可能性を極力避けて行う必要がある。それは結果として、提訴をあらかじめ避けるような政策決定(馴至効果)を生じさせることになる。韓国政府は米韓FTAを全く無視して公的医療保険の強化を行えなくなるのである。」(適宜中略)」
このように、ISDSが国内政策を萎縮させ、その時に国民に必要な政策が打ち出せなくなる。
TPP11はアメリカが離脱した形での発効となったため、米国企業からの訴訟はないとされているが、バイデン氏が大統領になってから、米議会や産業界からはTPP復帰の声が上がっている。
経団連のホームページで確認できる工程表によると、2020年を目処にTPPとASEANプラス6(RCEP)の貿易圏を合わせたアジア太平洋(FTAAP)を実現させるべく、地域経済統合を強く要求する、とあり、アメリカがTPPに復帰するのは時間の問題であり、復帰後、何らかの有害事象が発覚しても、韓国のように、ISDSによって法律の制定が萎縮する恐れがある。また、イギリスもTPP加入を正式に申請した。アメリカがTPPに復帰し、イギリスが参加してしまうと、日本がいざ脱退を申請しようとした時にISDS訴訟を受ける恐れがある。だから早急に脱退しなければ手遅れになる。
また、中国輸出管理法という、中国国内の法律に域外適用規定という規定があり、これが他国への制裁に繋がる恐れがある。以下、「」内引用(CICTEC事務局より)
・再輸出規定について
『第四十五条 管理品目の国境通過、中継輸送、通し輸送、再輸出あるいは保税区、
輸出加工区等の海関(税関)特殊管理区域や輸出管理倉庫、保税物流センター等
の保税管理場所から国外への輸出は、本法の関連規定に基づいて実行する。』
↓
「中国で生産・加工し日本等に輸入したものを組み込んだ製品を、日本等から輸出
する場合に、中国政府の許可が必要ということになるが、それでは中国との貿易・
投資の前提が大きく崩れることになる。」
・みなし輸出規制の扱い
『第二条 (中略)本法に謂う輸出管理とは、国が中華人民共和国国内から国外に
管理品目を移動する、および中華人民共和国の公民、法人と非法人組織が外国の
組織と個人に管理品目を提供することに対して、禁止あるいは制限措置を採るこ
とを指す。』
↓
「みなし輸出規制についての論点は、中国の企業・組織内の(雇用されている)外
国人への技術情報の提供・共有も規制対象になるかどうかにある。この点も三極産
業界から明確化要請を繰り返し行ったが、明確にならないまま成立となった。
もし米国式にそれも含まれるとすれば、中国の現地拠点、工場、研究機関等に出
向あるいは現地採用される日本人その他の非中国人社員との日常的な技術情報のや
りとり、データベースアクセス等が許可対象ということになり、外資企業内の日常
的な企業活動が阻害されるおそれがある。」
・規制輸出先リストの扱い
『第十八条 国家輸出管制管理部門は、以下の情況が一つでもある輸入業者とエンド
ユーザーに対して、規制リストを作成する。
(一)エンドユーザーあるいは最終用途の管理の要求事項に違反したもの
(二)国家安全に危害を及ぼす恐れのあるもの
(三)管理品目をテロリズムの目的に用いたもの
規制リストに加えられた輸入業者とエンドユーザーに対して、国家輸出管制管
理部門は関連する管理品目の取引を禁止・制限する、関連する管理品目の輸出を
中止するよう命じる等の措置を採ることができる。
輸出者は規定に違反して規制リストに加えられた輸入業者、エンドユーザーと
取引を行ってはならない。』
↓
「問題は、中国では、「国家安全」の概念が、「統合国家安全観」に基づく、政治、
軍事、経済、資源、科学技術、情報、宗教等等、極めて広汎な概念であるという点
にある。通常の西側諸国の「安全保障」は軍事的なものを指すが、中国の場合に
は、中国の政治的立場や各種指導に従わなければ、「国家安全に危害を及ぼす」と
して、この輸出禁止先リストに掲載される可能性が否定できないのではないか、と
の懸念がある。」
「他方、同様のブラックリスト的な性格ものとして、去る 9 月 19 日に即日施行さ
れた「信頼できないエンティティ・リスト」制度がある。
これは、別途の貿易規制法である「対外貿易法」に基づくものであるが、次の趣
旨で対象が規定されている。「中国の安全に危害を及ぼす者」が含まれており、文
言上は同じである。
国際経済貿易及び関連活動において
① 「中国の主権、安全、利益に危害を及ぼす」者
② 「正常な市場取引原則に違反」し、中国企業等と「正常な取引を中断」、「差
別的措置」、「合法的な権益に深刻な損害」を与える者
同リスト掲載者については、貿易、投資、入国、ビザについて全面的禁止のほ
か、情状に応じて刑事罰を科すとされており、今回の中国輸出管理法上のブラック
リストがあくまで関連品目の輸出禁止先リストであることと比べると、より広汎で
厳しい内容の制裁の対象となっている。」
ここまででも中国の国内法であるにも関わらず、他国への恣意的な干渉が予想される内容となっているが、以下の新たに追加された条文が、どこまでの範囲に及ぶのかが不明確だが、外国企業の活動を萎縮させる内容となっている。
・外国組織、外国人に対する方の域外適用による責任追及規定
『第四十四条 中華人民共和国国外の組織と個人が、本法の関連輸出管制管理規定
に違反し、中華人民共和国の国家安全と利益に危害を及ぼし、拡散防止等の国際
義務の履行を妨害した場合は、法に基づいて処理し、且つその法的責任を追求す
る。』
・報復条項
『第四十八条 如何なる国或いは地域が輸出管理措置を濫用して、中華人民共和国の国
家安全と利益に危害を及ぼした場合は、中華人民共和国は、実際の状況に基づき、当
該国或いは地域に対し相応の措置を講じることができる。』
最後にこれらの規定から留意する点が述べられている。
「○これまで規制がなく自由に輸出ができていた多くの製品・技術(ワッセナー品目や
独自品目)が輸出許可対象となる点だけでも激変。
○これに、再輸出規制、みなし輸出規制が加われば、中国を製造加工拠点、研究拠点
とする貿易・投資の大前提が崩れる可能性。」
○米国の Entity List や制裁により取引停止した場合、新たに規定された報復条項や
輸出禁止先リスト掲載、「信頼できないエンティティ・リスト」掲載等によって、
制裁を受ける可能性。
○中国と日本、米国間で安全保障上の利害は必ずしも一致していないため、政治的、
軍事的摩擦、緊張が高まれば、日本向け輸出や最終需要者が問題とされる可能性
○輸出許可申請時に技術開示要求や、審査期間が見通せなくなる可能性
○外国企業が中国内で共同開発した技術が輸出できなくなる可能性」
RCEP発効後、中国国内に拠点を置いている製造加工業や、日本国内で中国と取引している企業が報復条項や輸出禁止リストに掲載されることで制裁が加えられる恐れがある。
日本の製造業に於いて危機的な状況になると危惧し、一刻も早くRCEP脱退を求める。
グローバル化によってユニクロ等の企業の生産拠点は海外に展開され、現地の人を低賃金で雇う人権侵害が横行している。途上国の発展や、グローバル化による日本国民の賃金抑制を考えても、グローバル化からは足を洗って、内需拡大に向かうべきである。
⑦
自由貿易協定には自然人の移動に関する項目が盛り込まれている。外務省は一時的な受け入れなので、移民には当たらないと説明するが、外国人材の更なる呼び込みに向けた主な政策が施行されている。経産省の資料によると、"ポイント計算により、70点以上のポイントで高度外国人材として認められた者について、永住許可申請に要する在留期間を現行の5年から3年に短縮します!高度外国人材の中でも、特に高度と認められた者は、永住許可申請に要する在留期間を大幅に短縮し、1年とします!"とある。家族も連れて来られるように、規制が緩和されている。また、国家戦略特区域内の外国人材誘致も相俟って、永住許可された移民は今後も増加するだろう。永住許可されるのだから、外国人材であって移民ではないという言い訳は最早通用しない。2018年時点のみずほ総合研究所のレポートによると、日本人の人口が37万人減少する中、約半分の17万人の、いわゆる就労制限のない外国人が増加した。日本は既に移民大国であり、安い労働力としての移民が流入すれば、日本人の賃金上昇に圧力がかかるのは必定である。

下、経産省『成長戦略における外国人材の活用について』から抜粋
下、みずほ総合研究所から抜粋
⑧
自由貿易によって雇用の流動化が求められ、雇用が不安定になり、非正規雇用が増大し、悪徳企業による低賃金長時間労働などが横行するようになった。自由貿易によって利益を得られるのは大企業であるため、大企業に利益が集中し、中小企業がその反動を食らったためでもある。一方では派遣労働の拡大によって、パソナのような派遣会社が利益を享受している。パソナの会長、竹中平蔵氏は有識者として与党に構造改革政策である法人税減税や国家戦略特区の設置、自由貿易協定の推進を促し、国家戦略特区域内での外国人材の派遣を推進した、自分の提言によって自分の会社に利益を流した人物だ。
こうした富が一部に流れ込む構造を背景に、低賃金競争が激化し、所得は目減りし、待遇は悪化したと推察する。
警察庁の自殺者の統計では、近年では、長年続いた自殺者年間3万人という数値を下回り、自殺者は減少傾向にあるが、公安委員会の資料によると、死体の取扱数は近年では約15万人程度のうち、変死体の数は平成18年から約1万2000人から平成27年は約2万人と年々増加していることが分かる。厚生労働省によると、警察が必要な捜査を行った結果、遺書がある場合において自殺に計上される。つまり遺書のない場合、自殺であっても変死と見なされる場合があるということだ。一概に、自殺者が減少したとは言えない。また、コロナ禍による失業や将来不安から、昨年の自殺者数は2000人を越え、特に女性の自殺が増加傾向にある。自由貿易による構造改革の促進が、非正規雇用、低賃金労働者を増やし、若年層の個人負担を高め、生活苦から精神的な疾患等の健康状態の悪化させ、それが自殺に結びついていると考えられる。
また、インドでは1994年以降の自由貿易による関税撤廃で産業の衰退と地域経済の疲弊という深刻な事態を招き、昨今では、借金を苦に自殺する農家も増加している。日本においても、自由貿易によって規制を取り壊され、国際競走にさらされた農家を自殺という深刻な事態に陥れる事は自明ではないだろうか。
『不況・失業と自殺の関係についての一考察』から抜粋
(澤田 康幸(東京大学准教授)
崔允禎(慶熙大學校国際大学副教授)
菅野 早紀(東京大学大学院・日本学術振興会特別研究員))


厚生労働省『自殺対策官民連携協働会議委員からのご発言を踏まえた各府省の対応(概要版)』によると、遺書のない遺体は現場警察の判断で自殺として計上されないという事だ。
下はインドの自殺者の推移 八戸学院大学紀要53 『インドにおける青年期の自殺死亡 : 国家犯罪統計局の警察統計を用いた分析 (瀧澤 透1辻 田那 月2)』から抜粋

⑨
経団連のホームページにある、FTAAPに関する記述を引用する。
2011年時点のの提言は、
「世界経済の牽引役を担っていくためには、ハード・ソフト両面でのインフラ整備等と併せて、アジア太平洋地域の経済連携をさらに推進し、人、モノ、サービスが自由に往来するシームレスなビジネス環境を構築する必要がある。」
アジア地域というのはRCEPの貿易圏、太平洋地域はTPPの貿易圏であるが、これを一つにしようと言うのである。
その後、2015年では、
「新ラウンド#1を経てWTOの下に各種協定を収斂し、2030年、新たな高水準の多角的自由貿易投資体制を構築することを謳っている。」
「WTOが再びグローバルで自由な貿易投資のインフラとして、健全なガバナンスの下、その真価を発揮できるよう、多角的自由貿易投資体制の再構築に向けたWTO改革の方向性を提言する。」と提言。
提言によると2020年を目処にTPPとRCEPを合わせたFTAAPの実現、2030年には各種協定を収斂し、WTO協定向けた改革を実行するとある。
このような大規模な協定に昇華し、市場原理に任せた政策が続けば、どれ程の企業、産業が衰退し、大企業に収斂されていくだろう。その実害はインドが既に示している。
また、FTAAP後は人の行き来もさらに拡大し、日本国内においてはグリーンカード制度のような外国人を定着させる政策、国家戦略特区域内の外国人滞在施設経営事業等の推進が行われている。
([]内改定後の加筆分)
[次のような弊害を強く懸念する。
「一方には、移民の流入により賃金の低下や失業を余儀なくされたり、移民の多い貧しい地域に居住せざるをえないために治安の悪化やアイデンティティーの危機にさらされたりする中低所得者層がいる。
他方には、移民という低賃金労働力の恩恵を享受しながら、自らは移民の少ない豊かで安全な地域に居住し、グローバルに活動する富裕者層や、多文化主義を理想とする知識人がいる。彼らエリート層は、移民国家化は避けられない時代の流れであると説き、それを受け入れられない人々を軽蔑する。そして、移民の受け入れに批判的な政治家や知識人に対しては、「極右」「人種差別主義者」「排外主義者」といった烙印を押して公の場から追放する。
その結果、政治や言論の場において、移民の受け入れによって苦しむ国民の声は一切代弁されず、中低所得者層の困窮は放置されたままとなる。
これは、単なる悲観的なディストピアの未来像ではない。マレーが詳細に報告するように、すでに欧州で実際に起きていることなのである。」(東洋経済オンライン2018年12/14より、英国ジャーナリスト、ダグラス・マレー著『欧州の自死 移民・アイデンティティ・イスラム』の邦訳を『日本の没落』等の著者、中野剛志氏の解説した記事から抜粋)]
コロンブスがアメリカ大陸を発見して以降、ネイティブ・アメリカンの虐殺と弾圧の歴史が始まった。キリスト教の信仰の下、異教徒であるネイティブ・アメリカンは動物のように駆り立てられ、虐殺され、奴隷として酷使された。近代的な武器や、ヨーロッパから持ち込まれたスペイン風邪によって次々とネイティブ・アメリカンは駆逐され、生き残りは奴隷として売買された。その後、イギリスとフランスの植民地争いに各部族が同盟を結び、互いに争ったフレンチ・インディアン戦争が起こる。19世紀に入り、ネイティブ・アメリカン居留地に押し込め、入り切らなかった者を虐殺する、インディアン絶滅政策が行われた。
その後も迫害の歴史は続き、ネイティブ・アメリカンは故郷を奪われ、異郷からやってきた白人に非人間的な扱いを受け続けることになる。
日本においては、少子化が進む中、毎年相当の人数が自殺する一方、移民の数は増え続けている。日本人をイエローモンキーと揶揄する白人や、反日教育を受けた中国人移民が増加する事で、日本人もネイティブ・アメリカンのような末路を辿るのではないかと危惧する。
自由貿易の投資に関する条文の、第十章、投資に関する条項の定義を見てみると、『(a)「対象投資財産」とは、締約国について、当該締約国の領域にある他の締約国の投資家の投資財産であって、この協定が効力を生ずる日に存在しているもの又はその後に設立され、取得され、若しくは拡張されるものをいい、適当な場合には、投資を受け入れる締約国の関係する法令及び政策に従って許可された(注1、注2)ものをいう。』
その投資財産の中に、『動産及び不動産並びに賃借権、抵当権、先取特権、質権その他の財産権(注)(vii)』とあるように、不動産も含まれている。
そして内国民待遇という項目には『1各締約国は、自国の領域における投資財産の設立、取得、拡張、経営、管理、運営及び売却その他の処分に関し、他の締約国の投資家及び対象投資財産に対し、同様の状況において自国の投資家及びその投資財産に与える待遇よりも不利でない待遇を与える。』とある。つまり日本人と同様に土地を買えるということになる。
冒頭で述べた、外国資本がコロナ禍で弱りきった中小企業の統廃合を促進する政策が進められる中、土地まで抑えられるようになれば、いずれ日本人は外国企業の下、かつてのネイティブ・アメリカンのように外国人の下で奴隷のように働く事になるのではないか。
在日米軍基地拡充に抗議した砂川事件の判例を見ると、地方裁判所の判決では、在日米軍の居留は憲法九条の戦力の不保持に違反するものであるとされ、最高裁に跳躍上告されたが、最高裁では、憲法九条は主権国国有の自衛権を認めており、日本が指揮・管理できる戦力を指すものだから、外国の戦力はこれに該当せず、また、日米安保条約のように、高度な政治性を持つ条約は、一見して極めて明白に違憲無効と認められない限り、違憲かどうかの判断はできない、として破棄された例を見ると、憲法は必ずしも国際条約よりも優位にあるとは言えず、自由貿易協定のような国際条約から日本国民の人権を保障できるとは限らない。

日本経済団体連合会 『多角的自由貿易投資体制の再構築を求める-TPPの先を見据えて-2015年5月19日一般社団法人 日本経済団体連合会』から抜粋
⑩ 憲法改正国民投票法
先の国会で成立した憲法改正国民投票法には以下の問題点がある。
・第二章、国民投票の期日、第二条には、『国会が憲法改正を発議した日(国会法(昭和二十二年法律第七十九号)第六十八条の五第一項の規定により国会が日本国憲法第九十六条第一項に定める日本国憲法の改正の発議をし、国民に提案したものとされる日をいう。第百条の二において同じ。)から起算して六十日以後百八十日以内において、国会の議決した期日に行う。』とある通り、投票期間が60日しかない。
・最低得票率の定めがなく、危険多数でも成立する恐れ
・第百六条、広告に関する条文には広告規制の定めが設けられておらず、資金力のある与党に有利な宣伝になる
『』内はE-GOVで検索し、抜粋した。
⑪ 自民党憲法改正草案
自民党憲法草案には以下の問題点がある。
最高法規である日本国憲法第十章、97条、基本的人権が削除されている。最高法規とは、最も効力を有する成文法である。そこから97条を削除するということは、先人達が努力の末に制定した最も尊重すべき人権を放棄することにほかならない。また、97条削除は憲法11条にも既に基本的人権の規約が設けられているが、両者を比較すると97条は『この憲法が日本国民に保障する基本的人権は』という文言なのに対し、自民党憲法改正草案11条は『国民は、全ての基本的人権を享受する。』に変わっており、『日本国民』以外にも保障されると解釈できる。昨年成立した『多文化共生社会基本法』は多文化化する社会に対応した法律とされているが、これでは日本が移民を受け入れることを前提の話である。外国人材は移民ではないといういつの間にかなくなっており、11条は、自民党が受け入れを進めてきた移民の権利を強める効力を持つのではないかと危惧する。
そして改憲草案12条は『自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。』とあり、現行憲法より強制力の強い文言となっている。改憲草案13条は、『全ての国民は人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。』とあり、現行憲法の『公共の福祉に反しない限り』から変えられている。公の秩序とは何を指すのかが不明確である。現行憲法の文言にある『公共の福祉』は、個々が互いの利益を損しないよう、バランスよく人権を保障するためのものだと解釈できるが、『公の秩序』に変わった理由は、自民党憲法草案Q&Aに『今回の改正では、このように意味が曖昧である「公共の福祉」という文言を「公益及び公の秩序」と改正することにより、その曖昧さの解消を図るとともに、憲法によって保障される基本的人権の制約は、人権相互の衝突の場合に限られるものではないことを明らかにしたものです。』(自民党憲法改正草案Q&Aより)と暴露されている。つまり、個人と他者との人権のバランスよりも、『公の秩序』が優先される可能性があるということであり、その中身が権利者の都合で決められ、それに反した場合、国民は人として尊重されないかもしれない。国政に対する抗議等の活動が封じられる事も考えられ、非常に戦前の『御国の為』といったニュアンスを含んだ改正である。
・新説された憲法第7章財政、八十三条、二項、『財政の健全化は、法律の定めるところにより、確保されなければならない』。政府の主張する財政健全化とは、財政健全化は、財政出動によって政府支出が増えると国の借金が増え、将来世代へ負債を押し付ける事になるので、プライマリー・バランスの黒字化目標を掲げ、政府支出を削減し税金を財源することで財政赤字を解消するというものだが、財務省によると独自通貨を持つ国では債務返済のために通貨発効額の制約はないので財政破綻の心配はない。財政健全化を加憲する事で緊縮財政、消費税増税等によって、国民経済を更に疲弊させ、ビルトインスタビライザーは機能しなくなる。不況脱却の為に、減税等の財政政策に転換をする事もできなくなる。
下は財務省から抜粋

・新説された98、99条『緊急事態条項』には以下の問題点がある。
(1) 大韓民国憲法の緊急事態条項は『大統領は国家の安危にかかわる重大な交戦状態においては、国家を保衛するために緊急措置が必要となり、かつ、国会の召集が不可能なときに限り、法律の効力を有する命令を発することができる』(緊急命令制度:第76条第 1 項、第 2 項)とあるように、国会承認が不可能なときに限られている。フランスの緊急事態条項では、『共和国の制度、国の独立、領土保全及び国際約束の実施に重大かつ急迫の危険が切迫し、憲法上の公権力機関の適正な運営が阻害されたときは、大統領は、首相、両議院の議長及び憲法院(49)に公式に諮問した後、緊急措置を講じることとされている(第 16 条第 1 項)。』と規定されており、国家の独立、領土等の適切な運営が阻害された時に限定されているのに対して、自民党憲法改正草案、新設された九章、第98条、99条、緊急事態条項は、災害、戦争、内乱、その他法律で定める緊急事態により、閣議にかけ、宣言を発することができ、国会は事後承認でも可能とされている。宣言の発動要件が不明確かつ、縛りが弱く、また、百日毎に国会承認を得られれば延長可能であり、恣意的な乱用の危険性がある条項である。
(2) 緊急事態の宣言後は、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができ、地方自治体に対しても必要な支持を出せる、とされており、地方の自治権を損ない、また、99条4項に、宣言の期間中は衆議院は解散しないと規定されている。宣言の発動要件が不明瞭であり、宣言の延長ができ、宣言の期間中は内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定でき、しかも衆議院は解散しないことから、内閣独裁の危険性が考えられる。
(3) 99条、3項の規定にある通り、宣言の期間中は、国民は政令に従わなければならない。99条4項において、基本的人権は最大限尊重されなければならないという規定があるが、前述の通り、『公の秩序』が優先され、人権が尊重されない可能性があり、国家権力が恣意的に乱用されても、その横暴にも逆らうことが出来なくなる。また、自民党憲法改正草案の憲法10章、最高法規、102条、憲法尊重用語義務は、現行憲法99条の、『天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ』から、『全ての国民は、この憲法を尊重しなければならない』に変更されており、憲法が国民を縛る規定にされている。自民党憲法改正草案に反した場合、必ずしも国民の人権、私権は保障されるわけではないと考えられる。
(4) 加藤勝信官房長官は、新説コロナウイルスの流行を踏まえ、『未曽有の事態を全国民が経験し、緊急事態の備えに関心が高まっている。議論を提起し、進めるには絶好の契機だ』(6月11日時事ドットコムの記事から)と発言した。憲法に手を加えずとも、現在、各知事間でロックダウン等の私権制限が議論されているように対応は可能である。憲法改正に拘っているのは、内閣独裁と私権制限が狙いではないかとの疑念がある。そして更に問題なのが、このような改憲を望んでいるのが、日本会議議員連盟、神道政治連盟、統一教会などのカルト宗教に名を連ねる閣僚達が占める内閣ということである。このような改憲を許すと言うことは、日本をオウム真理教に委ねるような事と同義ではないのか?

ハーバードビジネスオンライン『統一教会系閣僚9人。安倍政権と変わらぬ菅政権の「新宗教・スピリチュアル・偽科学」2020.11.09』から抜粋
下の画像は日本会議 岩手県支部のホームページから引用
既に多くの県議会から憲法改正の意見書が提出され、また、衆参国会議員の半数以上が憲法改正に賛同している。
(本稿移植時に挿入)

引用、出典
第13章『政府調達』-経済産業省
2021年5月19日 日本経済新聞
第204回国会 財務金融委員会 第13号(令和3年4月23日(金曜日))
2021年7月7日 日本経済新聞
国家戦略特区による東京大改革~大手町から兜町地区における国際金融都市の実現/虎ノ門地区における外国人を呼び込む「職住近接の空間」づくり~東京都知事 小池百合子-東京都
2019年4月19日 Sankei Biz
2021年4月17日 News Week
日米規制改革および競争政策イニシアチブに基づく日本政府への米国政府要望書2008年10月15日-アメリカ大使館
日米経済調和対話2011年2月-アメリカ大使館
主要政党の政党評価2017 2017年10月23日-一般社団法人 日本経済団体連合会
2019年5月19日 長州新聞
2016年4月16日 新聞『農民』
国際がん研究機関Q&A-食品安全委員会
令和元年度 通級による指導実施状況調査結果について-文部科学省
農薬を巡る情勢-農林水産省
世界の食料自給率-農林水産省
日EU・EPA及びTPP11による本県農林水産物への影響について-岩手県
日米貿易協定による本県農林水産物への影響について-岩手県
TPP協定による国の試算に基づく本県農林水産物への影響について-岩手県
2021年4月15日 農業協同組合新聞
近年における日本の対外直接投資の特徴~大型M&А・非製造業を中心に展開 増田耕太郎 (一財)国際貿易投資研究所 客員研究員
日本の対内直接投資の動向-財務省
主要国の対外純資産-財務省
黒字亡国 対米黒字が日本経済を殺す-三國陽夫
国家と投資家の間の紛争解決(ISDS)手続の概要平成29年-外務省
2012年1月30日 PRESIDENT online「米国企業に巨額賠償金を払ったカナダ政府」
2019年5月19日 中央日報日本語版
2018年3月26日 JETRO ビジネス短信「ISDSや原産地規則の改定めぐり意見対立が続く-ライトハイザーUSTR代表公聴会(2)-(米国、メキシコ、カナダ)」
「米韓FTAの本質と韓国の医療」(小笠原信実(京都大学経済学研究科ジュニアリサーチャー))
2016年12月30日(金) 日本共産党 しんぶん赤旗
中国輸出管理法の成立・施行について-2020年12月1日施行へ-2020年10月19日 CISTEC事務局
成長戦略における外国人材の活用について-経済産業省
外国人住民比率の急増、日本は既に移民国家・移民大国-専務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創
RCEP 第9章 自然人の移動-外務省
RCEP 第16章 政府調達-外務省
不況・失業と自殺の関係についての一考察-(澤田 康幸(東京大学准教授)崔允禎(慶熙大校国際大学副教授)菅野 早紀(東京大学大学院・日本学術振興会特別研究員)
(参考)死因別統計データ-国土交通省
平成27年中における死体取扱状況について-平成28年2月25日捜査第一課 公安委員会 説明資料No.4
自殺対策官民連携協働会議委員からのご発言を踏まえた各府省の対応(概要版)-厚生労働省
インドにおける青年期の自殺死亡:国家犯罪統計局の警察統計を用いた分析-滝沢 透 辻田 那月
アジア太平洋地域における経済統合の推進を求める~2020年のアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)実現に向けて-2011年12月13日(社)日本経済団体連合会
多角的自由貿易投資体制の再構築を求める-TPPの先を見据えて-2015年5月19日 一自民党憲法改正草案Q&A(増補版-)自民党 憲法改正推進本部
米国・フランス・ドイツ各国憲法の軍事関係規定及び緊急事態条項-2019年11月 国立国会図書館調査及び立法考査局
大韓民国憲法上の国家緊急権制度-方勝 柱
日本国憲法改正草案(現行憲法対照)-自由民主党 平成24年4月27日(決定)
終わりに
今回僕は、「請願書」として、紹介議員を介して提出に漕ぎ着けました。
紹介議員には、当然所属政党があり、党議拘束があります。ですので、等の方針にそぐわない内容で対立する事が多々ありましたが、せっかく取り付けた協力を拒否され、請願そのものをダメにしたくなかったので、本番では省かざるを得なかった内容もあり、今回の趣旨説明で、そういった不自由さを実感しました。
自治体によっては、紹介議員を介さずとも趣旨説明の場に立てる所もあるようです。
「陳情書」の方が比較的自由に発言出来るのかもしれません。
今後、個人や、自分以外の大勢の為、または国家の為の活動を考えている方達の参考になれば幸いです。
それでは。